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Long time no see  作者: azusa
第2章‐暗殺者ギルド
15/21

3話‐執務室にて

部屋に付いたプレートにはどうやら「執務室」という意味の文字が書かれていたらしい。

それを知ったのはその部屋に入ってからだったけども。




この建物――――バドルモア曰く「彼の」ギルドの本部。もちろん洋館。

洋画で見るようなこの建造物は2階建てで、予想通り横に広かった。

最初に拉致られていた牢屋はもちろん地下。

その後に向かった入浴室(と彼は言っていた)へ向かう廊下も入浴室自体も、外の様子を窺い知れるような窓は無かった。

だけど入浴室から執務室までの道程では打って変わり、いくつもの窓を見かけた。

窓のない建物なんてあるはずないよな、うん。

それとなしに外を見れば、まさに想像そのままの中世ヨーロッパ的な都市風景が広がっている。



「場違いすぎる…。」


「nutdwdnu?」


「あ、いえ、なんでもないです…。」



目の前に先導する、(多分)バドルモアの命令で案内をさせられている金髪の女性に、心配そうに声をかけられる。

いえ、場違い過ぎる自分を憂いてつい言葉が出ただけですから、はい。



どの方角へ、方向へ向かっているのかもわからないが、女性に先導されるままに向かう。

道なりで様々な人に出会うが、皆が皆、何らかの武器を携えた男か女達だ。

中には明らかに自分より年下の者もいた。

その中でも、小学生程度の男の子が槍を持っているのを見て、ひどく悲しい気持ちになった。

「少年兵」――――かつての世界では嘆かわしいその職業も、この世界ではどうなのだろうか。

もしも飢えずにいられる・食い扶ちがある、という希望に満ちた風潮だったら――――

別に僕は、それに対して嘆きはしないし批判するつもりもないが、ふと思ってしまう。

動物だって共同体のテリトリーを守るのは成獣なのに…、と。



執務室はこの洋館2階の奥にあった。右か左かで言えば、洋館中央の大階段を基点にして、右側。

女性がノックを3回。



「miws.」



中からは、バドルモアの声色で、こっちの世界の言葉での返答。

やっぱり僕と話すとき意外ではあのアクセサリーに用は無いらしい。

部屋に入るなり、第一声が「ようこそ、執務室へ」。アクセサリーいつ着けた?

着けたままでもこちらの言語が話せるのか?わからん。


促されるままに部屋に備え付けられたソファに座らされ、女性は慣れた手つきで僕に紅茶…らしきものを差し出す。

つまり、彼と僕との談話の始まりだ。女性は彼の傍らに立っているが、どうせあのピアスが無ければ僕の世界の言葉はわかりはしない。



……さて、僕から話し始めるのも釈然としないので、とりあえず嫌らしくないように目の前の男と部屋を確認する。



過度な調度品はなく、立派な木製の机と本棚、僕の座るソファ二脚とその間の小テーブルが全て。

部屋の奥には大きな窓があって、そこから都市が見渡せる。

風景の遠くに、連なる山脈…いや、小さいから峰か、がある。その峰に近付く太陽の尻尾。

この部屋は西向きか。つくづくこの男は、僕と会う時に逆光の中にいるな、嫌味か?


窓を背に、立派な木製の机に居を構えるバドルモア。

あれってマホガニー製の机なんじゃないか?この世界にマホガニーがあるのかは知らないけど。



「さっぱりしたようだね、セーヤ君。 ……ふむ。身なりが整えば、なかなかどうして結構美しい顔立ちじゃないか。」



まじまじと僕を見つめるバドルモア。

逆光だが、牢屋と違ってこの部屋は明るいから、その顔が良く見える。

年齢は――――わからない。20代後半にも、30代にも、40代にも見えるが、若々しいことだけは共通している。

茶髪緑眼。

鮮やかに輝くブラウンの長髪はオールバックにまとめられて、ともすればいかつく見えそうなものを、柔和な笑顔が見事に中和している。

つまり、イケメンだった。お前は僕に、嫌味しかないのか。


バドルモアの顔立ちは……誰だろう…トム・クルーズが近いか…?

唯一つ、トム・クルーズと違うところは、その長身頑強な体格。

着ている衣服はおそらく軍装だろう。上から下まで濃紺で、上は詰襟のような服。

顔立ちに反比例する軍人の空気を纏った彼は、話す時に大げさな身振り手振りで感情表現してきて、街頭演説をする政治家みたいな奴だ。

政治家は政治家でも、軍部に属している方の。

演説中の場所は、多分バルチック艦隊を目前にした自軍の戦艦上だろうな。



「そういえば、その服はどうだい? 丈は…合っていたようだね、よかったよ。」



入浴を終えた僕は脱衣所で用意された服を着ている。

黒一色のスラックス(に似たもの)、白のシャツ、そして革製の茶色いブーツ。

サイズが多少合っていなくてぶかぶかするけど、これはあれだ、人種の体格差のせいだな。


・・・・・・つまりは僕が小柄なだけ。


しかし、この世界にきてから初めてまともな服を着た。

服の材質なんかは全くわからないけど、この肌触りは思ったほど悪くない。

僕がどれだけ汚れても、川で洗濯し過ぎてくたびれてもあのスウェットを手放さなかったのは、この世界でまともな服を手に入れられそうになかったからだ。



「・・・服と、あと歯ブラシ、ありがとうございます。」


「ハブラシ・・・?ああ、歯木(シボク)のことか?それなら気にしないでくれ。何の説明もないまま君を拉致したようなものだからね。」



そう、これも助かった。実はこの世界にきてから歯をきちんと磨けたことがなかったのだ。

当たり前の話だけど、化学繊維のブラシと歯磨き粉なんかがこっちで手に入るはずもなく、川で生活していたときは水でゆすぐことしかできなかった。

ザルツ隊長達と一緒にいた時は、爪楊枝と瓜二つの鋭い木片で歯と歯の間を掃除したり、使い捨てらしい布切れで表面を拭くことができたが、21年間歯ブラシを使ってきた自分としては歯を磨いた気にならなかった。

ところが、ここには歯ブラシがあるではないか。とはいっても歯ブラシに似た「木のブラシ」だったが。歯木(シボク)?お釈迦様で有名なアレか?

枝の先端が細かく裁断されていて、歯ブラシを木で作ってみたと言わんばかりのものだった。



歯木(シボク)は結構な贅沢品だからね。この都市のように、独自に歯木栽培をしている場所なら豊富に使用できるだろうけど。君の言っていたハブラシとやらは、君の世界で歯木の代わりに使うものなのかな?」



――――少し、わかったことがある。

僕の元いた世界の名前の類は、いくら彼がピアス型の言語翻訳機を使っていても通じないらしい。

言葉そのものに、名前の響きとしてしか意味がないからだろう。

だから僕の名前も「晴哉」ではなく「セーヤ」。

「歯ブラシ」が「ハブラシ」とアクセントのおかしい発音になっているのは、まだ「歯ブラシ」がこの世界に無い言葉の類だからか?

あのピアスは意志疎通を円滑にするだけで、完璧に訳しているわけではなさそうだ。

これは僕の予想だけど、彼の言っていた「ギルド」だって、本当はこちらでは違う呼び名なのかもしれない。

彼自身も「ギルド」と言ったつもりでなく、こちらの固有名詞で「ギルドと同義」の単語を発したのではないか。

それを、あの喉のネックレスが理解しやすいように「変換」しているだけで。

お互い話が通じているようで、完璧には通じていない。そんな感じがする。



「そうですが…。今はそれより、聞かせてください。僕を拾った時の状況を。」



何故僕を拾ったのか。これが大前提。

銀髪の女は死んだのか、そして彼は女と関係あるのか。多分、彼は女を知っているだろう。

その想像だけで、口から漏れそうになる「(バク)」の一文字を飲み込んだ。


早合点は駄目だ。真相は、全てを知ってから。


ザルツ隊長達はどうなったのか、あの惨状を無視して僕を拾ったのか。

ただ、色々ありすぎてまとまらない。



「では、君も少し混乱しているようだし、私の話から。」



だからだろう、イニシアチブは相手に渡る。



「初めに断言しよう、君を攫おうとした女の名前はブランデ。西領――――ああ、つまりはこの世界のことだよ? では、広く名の知れた暗殺者だ。」



ぎり…

拳が、軋む。



「そして、聡い君なら薄々勘付いていたんじゃないかな? あの女を君の元へ差し向けたのは、この私だ。」



その一言が、僕の沸点を一瞬で超えさせた。




――――が。




「…!……!!」




耐えろ。耐えろ。耐えろ。



噛み締めた唇から、血が出たのがわかる。

それを見て。



「――――ふむ。」



満足そうに笑って、彼は言葉を続けた。



「ブランデはもう死んだよ。よっぽど激しい交戦だったみたいだね。君を守る者がいたのかな? 最初に言っただろう?「異界人」と。君は、つまりは私が望んだからこの世界に連れてこられた存在だ。召喚魔術と呼ばれる方法でね。だから、突然この世界へ召喚された君を守る者など想定外だった。それで彼女一人を行かせたんだが……。まあいい。そうそう、召喚されたのが何故君かと問われても、私には答えられないな。正直な話、さしたる意味はない。ただ選ばれただけだ。無作為に。偶然に。故に、君はこの世界――――西領へと召還された。」



僕の頭には、彼が言わんとしている何割が入っているだろうか。


……ああ、もどかしい。

仇の片割れが、ここにいる。



「もう一つ想定外だったのは、君がラフェルドナス――――覚えがあるだろう? 森だよ、大森林地帯だ。そこで、ある男と出会えなかったことだ。紅い髪の男と出会わなかったかい? 会っていたら、そもそもブランデを差し向けなどしなかったんだよ。件の紅髪の男は目下、行方不明中なんだ。全くどこへ行ったやら…。死んでいる…はずはないんだけど。」



そう言って、彼はもう一度僕を見る。


怒りを堪える僕に、何を感じたやら――――



「…やっぱり、衝撃がきつすぎたかな。これじゃあ駄目だ。――――アーニャ。」


「giutszg。」



彼の傍らに控えていた金髪の女の姿が消失する。


馬鹿な!



「mkpiyxe。」



そして背後から聞こえてくる、女の声。

首に感じる鈍い衝撃。


――――くそったれ。

弱いなぁ、自分。


憎い仇を前にして、僕は意識を失った。

ただ、意識を失う直前に聞いた、彼の一言だけは覚えている。



「大人しく聞いてくれてありがとう。」



ふざけるな。


お前は絶対、殺してやる。


ストーリーが破綻しているような、そんな文章になってしまいました。

なるべく超展開にならないよう努力します。


晴哉がひどく喧嘩っ早いですが、それは「異世界」に順応し始めた為です。

あと、自分に何かしらの”力”があると知ったためでもあります。

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