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Long time no see  作者: azusa
プロローグ
1/21

異世界召喚?

吹き抜けるそよ風に、濃密な土の匂いと植物の青臭さが溶け込んでいる。

天高くからは、21年の生涯で聞いたことのない鳥の鳴き声。

そして、極め付けに、屋久島の縄文杉の如き巨木が、視界一杯に飛び込んでくる。



この森には、おそらく樹齢千年以下の木は存在しないのだろう。



つまり、それほど古い森の中に、『僕』はいる。



「……マジ、勘弁…。」



山に囲まれた田舎で生まれ育ち、都会の大学に出てきた自分だが、昨今の日本に本当の意味で『田舎』はほとんど無いはずだ。

電気が通り、上下水道が走り、自家用車を持ち、家電無き生活など考えられない。

都会だろうが田舎だろうが、日本ではさしたる意味を持たなくなっている。



……つまり、何が言いたいのかと言われれば、いくら僕が田舎生まれの田舎育ちだろうが、大自然の中で生きていけるほど文明離れしていない、ということで。



ここは一体どこなのだろう。

いやその前に、何故僕はここにいるのだろうか。

夢……ならどれだけ救われることか。

少なくとも、この身体を突き抜ける絶望感は二度と味わいたくない。

絶対死ぬ。

絶対、野たれ死ぬ。

周りの環境が言っているのだ。


『お前なんかじゃ、ここで生き残れないよ』


……落ち着け。

サバイバル系の娯楽作品にあるように、冷静になれ。

ならないと、死ぬ。

まず近くの巨木に背中を預け、目の届く範囲を確認。

動物の気配は、無い……と思いたい。

文明に浸かり切った人間が、野生の権化を感じ取れるわけないが、そんなことは言っても思ってても仕方ないのだ。


さて、落ち着け。

冷静に、一つ一つ確認する。

まず、『ここ』に来るまでを思い出す。


覚えている限り、自分が『ここ以前』にいたのは、日付で20xx年8月18日。

大学3回生の夏休み。下宿のアパート。

バイトと集中夏期講習の合間休みだったので、朝から寝ていたはず。

17日の夜23時くらいに寝て、翌18日の6時くらいに一度目覚めてトイレに行き、何故か歯を磨いて顔を洗って、渇いた喉をお茶で潤し、またベッドにダイブした。

その二度寝前に、ベッド脇のデジタル時計で日付と時間を確認したのだから、間違いないはず。

で、その二度寝している間に何かしらあって、ここにいるのだろう。

信じれるか、二度寝の夢であって欲しい。


次に、自分の服装。

寝巻の黒スウェット。

足→裸足。


「うわっ!」


だからさっきから痛かったのか。

と、いうか、この大自然の中で裸足は危ない。

田舎育ちだからわかる。

虫、蛇、植物、土に石、動物と、何が原因で足に傷を負って命を脅かすかわからない。

早急にどうにかせねばならない。


持ち物はどうか。

ポケット確認、私有物無し。

涙が出るね、本当に着の身着のままだ。

自分の死ぬ予想がさらに右肩上がりになった。


環境を再確認。

この目の前に広がる大自然は、本当に地球上に存在するのか?

ここまで『人の手が入り込んでいない森』は、世界中に存在している気がしない。

白神山地だって、ここまでの巨木群はないんじゃないか?

というか、ここは日本なのか?



…。

……。

冷静に、冷静になれ。

本当に怖い。

気持ち悪い、怖い。



空を見れば、覆い尽くすように栄える木々の枝。

地面と、その枝の葉、幹の様子から、おそらくこの木々は落葉樹の類。

実家の裏山に生えていたやつに似ている。

ブナ?とかコナラ?とかかな。わからん。


気温はそこまで暑くない。

というより、少し肌寒い。

当り前か。

こういう木々は、熱帯亜熱帯に生える類じゃない。

温帯とか冷帯とかだったように思う。地理は、正直苦手科目だったが。


多分、この森、もといこの環境、『四季』がある。

僕がここに来る前から、意識が覚醒するまでに、ラグがそこまで開いていなかったと仮定するなら。

まだ夏だろう。肌寒いのは、森の中だから。

直射日光がほぼないから、地表面が温まりにくいだけだ。


少しだけ安心した。

予想があっていれば、冬まではまだ期間がある。

ここが日本、日本付近の国々であれば、約3カ月。

ロシアよりなら約2カ月くらいは、時間がある。

冬の寒さの中の遭難は、マジ勘弁。


時刻を鑑みるに、昼から夕の間か?


身体に、電撃が走る。


「火と、寝る場所がいる…。」


今日を生き抜かないと、明日を迎えられない。

命を繋ぎとめる作業を開始する必要があった。

拙くてすみません。

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