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【短編版/外伝】コンサル系小学生女子、商店街のスタンプラリーを立て直す

作者: 中田翔子
掲載日:2026/05/19

 そのポスターを見た瞬間、私は「今年も赤字だな」と思った。


《わくわく商店街スタンプラリー開催! 参加者全員にすてきな景品!》


 うん。赤字だ。


「泉ちゃん、店の前でそんな顔しないでくれる?」


 後ろから声をかけてきたのは、駄菓子の箱を運んでいた楓さんだった。最近この人は、私がこういう顔をしているときには、大抵ろくでもないダメ出しが始まると学習している。


「ちなみに今、どういう顔してました?」


「“見つけてしまった……”って顔」


「だいたい合ってます」


「やめてよ。うち今まさにそのイベント準備してるんだから」


 私はもう一度ポスターを見上げた。


 大人の胸の高さにある。1メートル40センチくらいのところ。


 カラフルではある。子ども向けに頑張って作った感もある。でも、子どもはこれを見ない。


「楓さん。このポスター、誰に読ませたいんですか?」

「誰って、そりゃお客さんでしょ」

「あはは」

「あー、乾いた笑いがツラいなあ……」


 私はポスターの真下まで歩いていって、指で位置を示した。


「まず高いです。子どもの目線に入ってません」

「それは泉ちゃんが小さいから…」

「はい?」

「いえ、なんでも」

「子ども向けのイベントなのに、子どもの目線の高さに情報は何もない。これ、ほぼ存在してないのと同じですよ」


 楓さんが少しむっとする。でもこの人はちゃんと最後まで聴いてくれる。商店街でも人望が厚い理由がわかる。


 私はポスターの横に積まれていた台紙を一枚取った。


 うん、赤字だ。


 参加店舗一覧、スタンプ欄、注意事項。必要な情報はある。でも、それだけだ。しかも最初に目に飛び込んでくるのが注意書きだった。小さい字がびっしり並んで、面積の半分近くを占めている。


「注意書き、多すぎません?」

「しょうがないじゃない。最近あるでしょ、コンプライアンライスってのが」

「何そのライス。サフランライスの親戚ですか」

「え」

「コンプライアンスですよね」

「あー、……そうとも言うわね」


 私はため息をついた。


「必要なのはわかります。でも、子ども向けのイベントの台紙で、注意書きが面積の半分を占めてたら負けですよ」


 台紙を閉じて、私は訊いた。


「ちなみにこれ、誰が最初に“行きたい”って言う想定なんですか?」

「そりゃ子どもじゃない?」

「ですよね。でも、この台紙でテンション上がらなくないですか?」

「そんなにはっきり言う?」

「うん」

「そっかぁ……」


 でも本題はそこじゃない。子どもが喜ぶイベントをやって、付き添ってきた親にお金を落としてもらう。その発想自体は悪くない。悪いのは、入口の全部が大人目線なことだ。


「景品、何ですか?」

「商店街の商品券、1万円分を3名!すごいでしょ?」

「はあ」

「当たらなくても、参加賞で消しゴムがもらえるのよ」

「消しゴム」

「参加賞としては無難でしょ?」

「家にありますよ」

「消しゴムなんていくつあってもいいでしょうが」

「いや授業もタブレットなんで、あんまり減らないですよ」

「このデジタルネイティブめ……」

「ジュース一杯無料でもらえる方が嬉しいですよ」

「え、そっち?」

「すぐにもらえるご褒美の方が嬉しいですもん。やり方によっては安く済みますし」


 楓さんが本気で驚いた顔になった。


「あと、抽選もずれてます」

「え、そこも?」

「むしろそこです」


 私は台紙をひっくり返して裏面を見る。真っ白だ。


「子どもは景品が欲しいんじゃないです」

「じゃあ何?」

「ガラガラを回したいんです」


 楓さんが、ちゃんと黙った。図星を刺したときの沈黙だった。


「商品券は悪くないです。でも、食いつくのは金額じゃなくて、“何が出るかわからないものを自分で回せる”ことです」

「……ああ」

「だから抽選は二段階にします。最初は軽い抽選。学校の放課後に来た小学生が無料のジュースに釣られてくる想定。景品はお菓子ですね。最初のスタンプを押したら誰でも回せます」

「最初から回せるんだ」

「まず一回、“当たると楽しい”を覚えさせます」

「悪い顔してる……」


 私は台紙の裏面を指で叩いた。


「そのうえで、ここに上位抽選の景品ラインナップを載せます」

「上位抽選?」

「親と一緒に来て、1,000円以上の買い物をしたら回せる方です」

「1,000円以上」

「小学生のおこづかいではほぼ不可能だけど、親にとっては普段の買い物で届く金額、つまり大したことない額です」


 楓さんの顔が少しずつ本気になっていく。


「景品は商品券でもいいし、ボンボンドロップシールでもいい。流行りのトレーディングカードでもいい。親には商品券、子どもには流行りのレア物。刺さる場所が違うので、両方並べた方が強いです」

「うわ」

「台紙はただのイベントの記録じゃだめなんです。家に持って帰って、子どもが親を動かす営業資料にならないと」

「なんか怖くなってきたんだけど」

「最初に軽い抽選で楽しい思いをする。家に帰って裏を見る。“これ欲しい”“あと一個で回せる”“こっちの抽選もやりたい”って親に言う。そこで初めて家の中で営業が始まります」

「商店街のイベントの話を家庭の中で……」

「はい。だからスタンプも一日で終わる前提じゃ弱いんです。最初は子どもへの刷り込みだと思わないと」


 楓さんが額を押さえた。


「やばい。すごく嫌だけど、めちゃくちゃ筋が通ってる」

「ありがとうございます」

「かわいくないなぁ」


 私は台紙を閉じた。子ども向けイベントなのに、子どもに届いていない。子どもが欲しいものじゃなくて、大人が配りたいものを置いている。景品の価値は見ているのに、回す体験の価値は見ていない。要するに、全部惜しいのだ。


「去年、どれくらい来たんですか?」

「台紙100枚刷って、使われたの27枚」

「赤字ですね」

「赤字だねえ……」

「チラシは?」

「掲示板とか、町内会館とか、保護者向けの回覧とか」

「届けたい相手に一枚も届いてないじゃないですか」

「厳しいなあ!」


 でも事実だ。


 子ども向けイベントなのに、子どもの目に入る場所にも、子どもの会話に入る言葉にもなっていない。


「親は財布を持ってます。でも、何度も言いますけど、最初に“行きたい”って言うのは子どもなんですよ」


 ちょうどそのとき、通学路の方から「おかえりー」という声が聞こえた。見守りのおばちゃんが下校途中の子どもたちに手を振っている。子どもたちは立ち止まって何か喋っている。


 私はその光景を見て、少しだけ笑った。


「告知方法を刷新しましょう。そのうえで、来た子が最初の一歩を踏み出せる仕組みを作る」

「最初の一歩?」

「はい。どこから回ればいいかわからない。最初の店に入るのがちょっと恥ずかしい。子どもはそこで止まります」


 楓さんが通学路の方を見た。


「……まさか」

「はい。広告って、紙じゃなくてもいいんです。毎日『いってらっしゃい』って言ってくれる人の一言の方が、ポスター10枚より強いと思いませんか?」


 私は通学路と商店街の店先を交互に見た。

 見守りの人たち。子どもの目線の高さの告知。家に持ち帰る営業資料になる台紙。

 それから――、相談されるのがうまいあのおばちゃん。


 必要な駒は、もう揃っている。


「楓さん」

「なに」

「商店街、今日から占い始めましょう」


    ◇


「敏子さん、今日から占い師やってください」


 乾物屋に入るなりそう言うと、敏子さんは私を見て、それから楓さんを見て、また私に視線を戻した。


「……泉ちゃん」

「はい」

「煮干し要るかい?」

「いいえ、占いをやってほしいんです」

「あのねえ、あたしらは商売やってんだから。“売らない”なんて商売あがったりだよ」

「商いなんだから、お客さんが“飽きない”ように新しいことやりなよ。いっつもおんなじような煮干し売ってさ」

「かわいくないねぇ」

「どう見ても美少女じゃないですか」

「じゃあ余計タチが悪いや」


 敏子さんは、客の顔を見ればだいたい何に困っているかがわかる人だ。商店街では有名で、みんな何かしら相談していく。飾らない分、正直だからみんなから愛されていて、私もファンの一人だ。


「これ。今年もスタンプラリー厳しいですよね」

「まあねえ」

「子どもが来ても、最初の一歩で止まります。だから“まずここへ行ってごらん”って背中を押してあげる人が必要なんです」

「それが占い師?」

「はい」

「なんで私?」

「話しかけやすいからです」

「へえ」

「あと、顔を見たらその人が何に困っているか、わかるでしょう」


 敏子さんは少し目を細めた。


「買いかぶりだねえ」

「買いかぶってません。実績を見てます」

「実績」

「さっき算数のテストの点数が悪くて落ち込んでた子に、ミカン渡してたじゃないですか」

「……ストーカー?」

「敏腕スカウトです」


 敏子さんは肩をすくめた。


「まあ、あれは占いじゃないよ。ただ、なんとなくわかるだけ」

「それで十分です」


 私は即答した。


「未来を言い当てなくていいんです。今の悩みに、次の行動を渡せれば十分です」


 敏子さんは少し黙った。


「それ、占いっていうかねえ」

「“生活相談会”って書いたら子ども寄ってこないので」


 楓さんが吹き出す。


「正直だねえ」

「敏子さんには負けますよ」


 私はメモ帳を一枚破ってレジ台に置いた。


《いま、ちょっとこまってること、おしえて》


「願い事じゃなくて、“おなやみカード”です。書けなくても口で言えばいい。敏子さんは少し話を聞いて、“あのお店に行ってごらん”って返すだけでいいですから」

 

私は簡単な流れを書き出した。

 一、おなやみカードをもらう。

 二、少しだけ話を聞く。

 三、最初に行く場所をひとつ伝える。

 四、“いってらっしゃい”で送り出す。


「これだけです」


 敏子さんは紙を見た。


「ずるいねえ」

「何がですか」

「占いって言いながら、やることは今とほとんど変わらないじゃないか」

「そうです」


 敏子さんは少し考えてから言った。


「……あんたの言うとおりに行く店を伝えればいいんだね」

「はい」

「そうしたらどうなるんだい?」

「私が裏で当たるように走ります」

「そりゃまた」

「今回は勝算があるので」

「あんた、死ぬわよ」

「占い師らしくなってきたじゃないですか」


    ◇


 商店街の真ん中に、折りたたみ机がひとつ置かれた。上には深い青の布。前には手書きで《うらない》の看板。机の上には“おなやみカード”と鉛筆が置いてある。


小学生が悩みそうなこと、商店街の店をまわって全部朝のうちに仕込んだ。あとは最初の流れだけだ。


 見守りのおじちゃんが通りの向こうから手を振った。


「さっき学校帰りの子らに言っといたぞ。“乾物屋の敏ちゃんの占いがよう当たるらしい”って」

「ありがとうございます」

「3人くらい、“え、なにそれ”って」

「十分です」


 30分もしないうちに、最初の子どもたちが看板の前で足を止めた。

 

   ◇


 一人目は同じクラスの男の子だった。


「……次の漢字テスト、90点以上取れないとおこづかい無しって言われて」


 敏子さんはすぐに“大丈夫”とは言わなかった。


「それはやだねえ」


 まずは相手の気持ちに共感し、少しずつ心の距離を埋めていく、さすがの手腕だ。年季が違う。男の子が少し落ち着いてきたので、私は敏子さんに「桂田文具」と耳打ちして、走った。


 しばらくして、男の子が台紙を持って桂田文具にやってきた。


「来ます。漢字テスト」

「了解」


 文具屋の店主は、私が最近の授業と宿題から出題傾向を予測し、出そうな熟語を10個に絞ったものを記したメモを男の子に渡した。

「全部やれとは言わんから、ここだけ見とけ」

「なんで?」

「勘」


 店主が言い切る。素晴らしい。余計な説明がない。

何の説明もなかったのがよかったのだろう。男の子は占いのとおりになったと思い、顔つきを変えた。


    ◇


 二人目は女の子だった。カードに小さな字で書く。


《ヤマト君にチョコを渡したい》


「それは困ったねえ。うちには塩昆布しかない」


 敏子さんがそう言うと、女の子の肩が少し下がった。笑われなかっただけで、少し楽になる。


「でも今月は“恋愛運”があるように見えるよ。騙されたと思ってケーキ屋の『菓子宮カシミヤ』さんに行ってごらん。いいアドバイスがもらえるかもしれない」


 女の子が訪れた菓子宮には、すでに小さくて重くない包みが並べてある。


「これくらいなら渡しやすいよ。もし渡せなくても、自分で食べられるし」


 店のおばさんがそう言うと、女の子は吹き出した。


「じゃあ、これにします」


 ランドセルに、小さな包みがひとつ入る。たったそれだけで、帰るときの足取りが少し変わる。


    ◇


 三組目は、見ない顔の子だった。今人気のピカモンカードを両手で握ったまま俯いている彼は、占いの前でじっと立ち尽くす。


しばらくして「ともだち……」と言いかけたが、尻すぼみに言葉は消えた。が、きっとこの子が転校生であろうことは、なんとなく想像がついた。


「大丈夫、とは言わないよ」


 敏子さんがそう言った。打ち合わせにない返しだった。


「でも、同じものが好きな子って案外すぐ見つかるかもしれない。まずは駄菓子屋『スプーン』へ行ってごらん」


 私は駄菓子屋へ走った。ピカモンカード付きのお菓子棚の前に、ちょうど同じ学年くらいの子が二人いる。サッと横を通り、棚の前のスペースを作る。これが精いっぱい。


 数秒後、その子が来て、立ち止まる。店に入るのを躊躇っている様子だ。すると後ろから、ちょうど楓さんが店に帰ってきた。


「あ、それ昨日出たばっかりのパックのレアカードじゃん」


ナイスタイミング。楓さんの声掛けで菓子棚の前に居た二人が振り返る。


「え、うそ、見せて」

「すげえ」


 二人の会話が先に走る。転校生の子が、棚の端のカードを見て少し前に出た。


「これ……強いの?」


 その一言で、十分だった。振り向いた男の子たちは、すぐに専門家みたいな顔になった。


「かなり強いよ。このパックで当たるあれと組み合わせたらコンボがすごくて」

「でもこっちのパックの方が強いカード多いんだよなあ」

「でも金ねえよなあ」

「スタンプラリーで当てようぜ」


 転校生の子も笑っている。三人目、成立。


    ◇


 そこからは早かった。

「え、ほんとに当たるの?」

「さっき文具屋でなんかもらってた」

「チョコ選んでもらってる子いた」


 話が話を呼ぶ。子どもは大人より噂が速い。机の前には、途切れない程度の列ができた。敏子さんもノリノリである。


「明日の50メートル走、やなんだよね」

「それはやだねえ。今日は“足が軽くなるコツ”に出会えるかもしれないよ。まずは靴屋さんに行ってごらん」


 元陸上部の靴屋のおじさんが、靴ひもの結び方とスタートのコツを30秒で教える。


「図工で変なの作っちゃって、先生に見せたくない」

「じゃあ八百屋さん行っといで。昔もっとひどい作品つくった奴がいるよ」


「給食のピーマン、どうしてもやだ」

「それは占いじゃなくてもやだねえ」


 周りの子がどっと笑う。笑いが起きると、また次が話しやすくなる。


 親たちの数も目に見えて増えてきた。子どもたちの家での営業の成果だろう。子どもに付き添って入った店で、そのまま商品棚を見る。菓子屋で買い置き用の菓子を覗き、文具屋で新しい手帳を手に取る。


これでいい。親を直接狙わなくても、子どもが行きたがる場所に売り上げはついてくる。


    ◇


「おい! 台紙もうないぞ!」


 会長の叫び声が商店街に響いた。楓さんが紙束を抱えて走ってくる。


「追加、今コピーしてる! 会長が『こんな減ると思わなかった!』って半泣きだよ」

「想定が甘いですね」

「今それ言う!?」

「言います」


 その頃には、最初は半信半疑だった店主たちも勝手に工夫を始めていた。

 魚屋は子ども向けにイラスト付きの値札を出し、八百屋は当たりのミニトマトにシールを貼り、文具屋は算数版の見直しメモまで作り始めている。


 いい。

 イベントは、現場の人間が「自分も一枚噛もう」と思い始めた瞬間に強くなる。頭の固いことで有名な眼鏡屋の店主が私の横に立った。


「……おい」

「はい」

「これ、たまたまじゃないのか」

「ここまで来ると、もうたまたまじゃないかもしれませんね」


 店主はしばらく商店街の奥を見ていた。


「結局、あのおばちゃんがすごいんじゃないのか」

「そうですけど?」

「お前じゃなくて?」

「私が前に立っても、こんなふうには広がりません」

「じゃあお前は何したんだ」

「敏子さんが座る場所を作って、子どもたちが来る理由を整えて、あとはお店に流しただけです」

「それを“だけ”で言うな」



    ◇


 夕方が近づくころには、台紙は最初の想定を大きく超えて捌けていた。店主たちは疲れていたけれど、去年のような諦めた顔はしていない。最後の親子連れがスタンプを押して去っていき、ようやく少し静かな時間が戻る。


「……疲れた」


 敏子さんが椅子の背にもたれて長く息を吐いた。


「おつかれさまでした」

「泉ちゃん」

「はい」

「これ、楽しいわねえ」


 私は思わず顔を上げた。


「本当ですか」

「毎日は嫌だよ」

「ですよね」

「でも、たまにならいいかもしれない」


 敏子さんは机の上に残った“おなやみカード”を一枚つまんだ。書き損じたのか、途中までしか文字がない。


『す――』


 “すうがく”か、“すきな子”か、あるいは全然違う何かかもしれない。書ききれなかった悩み。言いそびれた不安。でも、そういうものごと、この机の前には少し置いていける。


「結局、生活相談会になっちゃいましたね」


 私がそう言うと、敏子さんは笑った。


「最初にあんたが言ったじゃないか。それで十分だって」


 私は机の上のカードを揃えながら、商店街を見渡した。


 魚屋の前では、片付けをしながら店主がまだ何か喋っている。駄菓子屋では、楓さんが仕入れた菓子の箱を抱えている。文具屋の店主は、自分で作った算数メモをなぜか一枚持ち帰ろうとしている。頭の固かった眼鏡屋の店主は店先で腕を組みながらも、口元が少しだけ緩んでいた。


 売上は、たぶん悪くない。少なくとも赤字ではなくなっただろう。

 でもいちばん大きかったのは、そこじゃない。商店街が、今だけは、子どもの悩みに返事をする場所になったこと。そしてそれが、ちゃんと人を呼んだこと。


「泉ちゃん」


 敏子さんがまだ少し残っていた列の先を見て言った。


「はい」

「終わったのに、まだ来るわねえ」


 小さな女の子が一人、机の前でそわそわしていた。スタンプラリーの台紙は持っていない。ただ、寄るべきか帰るべきか迷っている顔をしている。


 私は笑った。


「ほら。残りますよって言った通りでしょう」

「そうだねえ」


 敏子さんは椅子に座り直し、女の子に向かって手を振った。


「どうしたの。ちょっと困ってること、ある?」


 私はその光景を見ながら、静かに息をついた。

 その日から商店街には、なぜかよく当たると噂の占いが残った。





お読みいただきありがとうございました。

今作は『【完結済み】社畜にもなれなかった俺が、JSに転生して経営の才能が開花した件 〜駄菓子屋からはじめて100億円企業を創るまで〜』の外伝です。

もし楽しんでいただけましたら、上記作品も併せてお楽しみいただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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