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第2話 一度きりだからな

 小鳥遊さんから解放された後、おれの前に座って静かに飯を食っていたヒロが口を開いた。


「お、やっと終わったか~」

「やっと終わったか、じゃねえよ。静かに飯食ってないで助けてくれよ」


ちょっと不機嫌そうにそう言うと、


「わりぃわりぃ。でもおもしろくなってきたな」

「全然おもろしくねえよ。おれは平和に過ごしたいの!」


ヒロに揶揄われて、少し声を荒げてみたが、ヒロのにやけ面は変わらない。


「でもずっと平和でもつまんないだろ?」

「こういうおもしろさはいらないのよ...」

「まあほんとに面倒ごとに巻き込まれそうだったら助けてやるから、な?」

「おまえなぁ...」


ヒロを小突きたい衝動を抑えて、小鳥遊さんに絡まれて食えてなかった弁当の残りを食べきった。

午後の授業が終わり、おれは部活にも入っていないから帰宅の準備をして、さっさと教室を出ようとした。


「橘くんちょっと待ってー!」


教室前方から騒がしい声が聞こえ、一瞬待つか迷ったが、


「よしっ、帰るか」


気にせず教室を後にする。


「...えっ、ちょっと!」


後ろから焦った声と追いかけて来る足音が聞こえてきて、


「なんで置いてくのよ!」

「いやいや、一緒に帰る約束なんかしてないからね」

「私言ったじゃん!放課後先に帰らないでねって」


そういえばそんなことを言われていた気がするが、覚えていないので約束とは

言わないだろう。第一返事はしてないしな。


「そっちが一方的に話を終わらせたから、おれは返事もできなかったが?」

「うっ...それはそうだけどさ~」


ぐうの音も出ないような顔をする小鳥遊さんを放って、止めていた歩を進める。

少し意地悪が過ぎただろうか。

罪悪感はあまりないが、一応家に上げると言ってしまった手前、そっちの約束を破るのは不誠実と言えるだろう。

そんなイメージを持たれては、良からぬウワサが流れる可能性もある。


「ついて来たきゃ勝手について来い」

「やった!じゃあ早く行こ行こ!」

「おいおい!手を引っ張るな!」


まるで、欲しいものを買ってもらった子供のように無邪気な笑みを浮かべながら、

俺の手を引っ張っていく。

ほんとになんでこんなことになってしまったのか......




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