第1話 小鳥遊さんは家に上がりたい
おれ、橘優貴は高校3年間を目立たず平和に過ごすことを
目標に学校生活を送っていた......
はずなのだが、今、クラスの人気者である小鳥遊日和に絡まれている。
なぜこんなことになったかって?
昼休みに親友である佐々木宏と話している時に、
うっかり一人暮らしの話題を話してしまい、
それを偶然横を通った小鳥遊さんに聞かれてしまったからだ。
平和に過ごす上で一番関わりたくない人に絡まれてしまってかなり最悪だ。
「橘くん一人暮らしなんだ!」
驚いたような声でそんなことを言うものだから、
若干注目を浴びてしまっているではないか。
「ちょっと小鳥遊さん声がでかい!」
「え、なんで?別に隠すことでもなくない?」
不思議そうな顔をしながらも声の大きさは変わらない。
「おれは目立ちたくないの」
「ふ~ん?」
変な人と言わんばかりの顔をしかめていた。
「あっ!そうだ!」
突然さっきよりも少し大きな声で何かを思いついたようだ。
正直嫌な予感しかしない...
「今日の放課後、橘くんの家に行ってもいい?」
どうやら予感は的中してしまったらしい。
一番最悪な答えが返ってきてしまった...
「やだ、ぜったいにやだ」
かなり拒絶したつもりなのだが、彼女は折れてくれない。
「えーいいじゃん、それともなに?見られたくないものでも置いてあるのかな?」
ニヤニヤしながら言ってくる彼女のメンタルは鋼鉄かなにかなのか?
しかし、そんなことを言われてもダメなものはダメだ。
彼女を家に上げれば、たちまちウワサが広がり俺の平和な学校生活が奪われてしまう恐れがある。
「ダメだ、変なウワサとか立ったらどうするんだ」
「え?別に家に上げるだけだから変なウワサも何もなくない?」
「うっ、それは...」
「もしかして橘くんの家でいやらしいことでもすると思ってる?」
ほんとにこいつは...
おれの話を全っ然理解してくれない。
「とにかくおれの家には来させん」
「何もしないならいいじゃん!一回だけで良いから!」
「やだよ」
「そこをなんとか!」
こんなやり取りをしていると、だんだん教室が騒がしくなってきた。
「はぁ...ほんとに今日だけだぞ?」
「やったぁ!じゃあ放課後先に帰らないでよ?」
結局、他のクラスメイトからの視線に耐えられず根負けしてしまった......




