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玖拾陸 亜米利加県の分断①

ここは亜米利加あめりか加州かりふぉるにあ町の繁華街路地裏。けたたましい怒声が轟きわたる。

「オラァ!故郷くにに帰りやがれこン腐れ外道がァ!」

半グレ反社組織、MAGA聯合のチンピラが金属バットを振り回す。

金属バットが唸りを上げ、腹に重たい一撃が入る。

男は呻き声を上げ、胃の内容物と血を吐きながら地面をのたうち回る。


その様子を見て、MAGA聯合と抗争状態にある愚連隊、青驢馬會あおろばかいのチンピラが叫ぶ──

「ブチ殺すぞワレェ!こン差別主義者のバカタレがァ!」

そう叫ぶとその男は、その辺に落ちていたコンクリートブロックをMAGA聯合の男の頭に振り下ろす。

殴られた男は地面に崩れ落ち、脳天から血を流して痙攣している。

その男の被っていた赤い帽子が地面に落ちている。


店先で流血沙汰を繰り広げられたスナックやクラブはシャッターを降ろし、従業員や客は店内でガタガタ震えている。


「馬鹿共が、やめんかいオラァ!」

夜の街の秩序を守るのは、警察ではなく、極道だ。

亜米利加あめりか組の組員が前に出る。

「……ホゲェっ!」

しかし、ゴルフクラブの一撃で昏倒する。


「兄貴…もう駄目じゃ!こン馬鹿共、手に負えんですけェ!手ェ貸してつかぁさい!」

亜米利加組の組員が電話で兄弟筋に加勢を依頼する。

「ワリャ!極道舐めとんのかいボケぇ!シゴウしたるけぇ、覚悟せんかいバカタレっ!」

ほどなく、チャカを構えた兄弟筋の亜米利加組の組員が十数人駆け付ける。

MAGA聯合も、青驢馬會も等しく取り囲み、殴る蹴るの暴行を加えた後、乗ってきたワゴン車に放り込んでどこへともなく連れ去ってゆく。


──亜米利加組のシマ、亜米利加県で異変が起きている。

鳴門なると組長に心酔する半グレ反社組織のMAGA聯合と、それに反目し、民主組の説く正義を掲げる愚連隊、青驢馬會の構成員が、加州町を筆頭に各地で抗争を繰り広げているのだ。


亜米利加組の組長は、亜米利加組ニ次団体──鳴門なると組長の出身母体のの共和きょうわ組と、梅傳ばいでん前組長の出身母体の民主みんしゅ組──の組長のうち、民主主義神社の縁日、大統領選祭の勝者が務めるのが亜米利加組の任侠の掟だ。


共和組と民主組は、任侠道の方向性が根本から異なる。


共和組の任侠道は、一言で言えば『自由』だ。

カタギ衆のシノギのやり口には極力口を出さず、ミカジメなど最低限の義務を果たしていれば文句は言わない。

その代わり、他所の組がカタギ衆の自由に手を出そうものなら、即座にチャカを抜き放ち、力で黙らせる。

共和組の親分が亜米利加組をシメている間は、見回りも緩く、ミカジメも安く、カタギ衆は伸び伸びとシノギができる。

ただし、行き詰まっても「それはテメェのシノギの腕が悪いだけだ」と突き放され、救済は期待できない。


一方の民主組の任侠道は、『公平』を旨とする。

いつの世にも、シノギをうまく回せず沈む弱者はいる。

民主組は義理と人情を旗印にそこへ手を差し伸べ、組として支える。

対外抗争でも、共和組が即座にチャカを抜くのに対し、民主組はまず兄弟筋や周辺の組を頼り、ナシ付けと兄弟筋との連携で抗争の芽を潰そうとする。チャカはあくまで最後の手段だ。

ただし、組が弱者を食わせる理念を貫くには原資がいる。民主組の親分が亜米利加組をシメる期間はミカジメは高くなり、ゼニを持っている者ほど公平の名目で目をつけられるため、シノギはどうしても重くなる。


そしてそれぞれの義理先にも特徴があった。

共和組の義理先は、主に自分でシノギを回すゼニのある者、民主組の義理先は主にゼニのない、組織による救済を必要とする者が多かった。

これらの義理先同士は決して仲が良いわけではないが、昨今のように愚連隊を組織して抗争を繰り広げるようなことはなかった。


そう、今の亜米利加県では、この共和組・民主組の性質と、その義理先の性質が変質し、どうしようもない対立構造に組み変わってしまったのだ。


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