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伍拾 沖縄島の火種①

ここは中共ちゅうきょう組のシマにある演習場。

砂煙舞う広場に、高砂たかさご組の組事務所を模した建物が建てられている。

それを取り囲むように、エアガンと模擬刀を手にした若い衆が並ぶ。


「コラぁ!テメェ、この糞ボケがぁっ!ブチ殺すぞオラァアっ!」

攻撃役の中共組の若衆が気勢を上げる。

模擬戦とはいえ、不甲斐ない負け方をすれば兄貴分にヤキを入れられる。

組員の声には殺気がみなぎっている。


向かいには守備側の高砂組役が陣取り、竹垣の裏でエアガンを構える。

「返り討ちにしてやらァ!かかってこいやオラァ!」

上着を脱ぎ、各々が勇ましいモンモンを威嚇するように見せつけながら負けじと怒声を返す。

守備役も手を抜けない。

攻撃役への忖度抜きの、殺気立った声を上げる。


──台湾島攻略を想定した模擬抗争。

攻撃側は中共組役、守備側は高砂組役。

毎度のことながら、抗争は中共組の若い衆が突撃して始まる。


「オラァ!突っ込めやコラぁ!高砂のシマぁ、まとめて灰にせぇやコラぁ!」

模擬刀が振り下ろされ、エアガンからBB弾が発射される。

被弾し、戦死判定を受けた組員達が続々と退場していく。


模擬戦は、攻撃役優位で進んでいる。

守備役も奮戦して持ちこたえてはいるが、緒戦で虎の子の模擬重火器を破壊されたのが痛い。


しかし──

「ホゲェッ!……何しやがるてめぇコラッ!」


突如、演習場の脇から高級車に箱乗りになった亜米利加あめりか組役がエアガンを構えて乱入。

「オラァアっ!これでも喰らいやがれこの三下がぁっ!」

奇襲を受け、たちまち攻撃役10人ほどが死亡判定を受ける。

その後も続く亜米利加組役の組員の撃つ・殴る・蹴るの暴行に、攻撃役はあっという間に腰砕けになる。


「てめぇコラァ!男同士のケジメの場に、ノコノコ顔突っ込んでくんじゃねぇぞコラぁ!」

攻撃役の闘志に火が付く。亜米利加組役の猛攻になんとか踏みとどまり、模擬ロケットランチャーを放つ。

模擬弾頭がボコンと音を立てて亜米利加組役の乗っている高級車のボンネットに凹みをつくる。

阿礼あれい丸』という札の貼られた高級車は、撃破判定を受けてすごすごと戦場を後にする。


撃破に沸き立つ中共組ではあったが、その背後に忍び寄る人影があった。

突如現れた旭日きょくじつ組役が、木刀で中共組の若衆をタコ殴りに叩き伏せる。

「死にさらせコラぁ!目ェつぶって歯ァ食いしばれやボケぇ!ケツぶっ叩いてやらァ!」

鬼気迫る旭日組役の全力の殴打に、残っていた攻撃役は尻を押さえて倒れ込む。

攻撃役は壊滅、地面には悶絶して痙攣している中共組の組員達が転がっている。


この亜米利加組役や旭日組役が飛び出してきた辺りには、『沖縄島』と書かれた看板が立っている。


──演習はまたしても失敗。中共組の若衆は地面に転がり、息を切らす。

「チクショウが……あと一歩だったんだよコラァ。沖縄島さえなけりゃよォ……。」


演習場の隅で、中共組の幹部が煙草をくわえながら呟く。

「毎回あそこから亜米利加組と旭日組が出て来っからよォ、ウチの若い衆がシマに辿り着けねェんだよ……。」

忌々しそうに『沖縄島』の看板を見る。


──沖縄島。

そこは亜米利加組の銃眼、旭日組の石垣でもある。

中共組にとっては、台湾島に手を伸ばすたびに横から殴られる障害物であり、そして大洋への行く手を阻む、東シナ海に覆いかぶさる蓋である。

……目の上のたん瘤以外の何物でもない。


演習場では模擬抗争が続く。

少し作戦を変えてみるがしかし、何度やっても結果は同じ。

沖縄島から出てくる亜米利加組と旭日組に叩き潰される。

練習を重ね、向こうにも壊滅的な痛打を与えられるようにはなってきたが、こちらも攻撃を続けられない程の打撃を受ける。

結局、高砂組を台湾島から叩き出すには至らない。


「あそこがウチのシマなら言うことはねぇんだが、贅沢は言わねぇ。

……せめて亜米利加組の外道が大人しくしてくれればなァ…。」

幹部の吐いた煙が、空に溶けていった。


その煙の向こう、遥か彼方に、沖縄島は今日も静かに構えている。

──中共組の行く先を、黙って遮るように。


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