友達が来る
姉ちゃんは昼間、よくいなくなる。学校に行ってるんだって。でも、いる時は遊んでくれる。
パパさんはもっといない時が多い。でも、帰ってくると、おやつをくれたり撫でてくれたりする。ママさんも時々いなくなるけど、通りかかると話しかけてくれる。
エサを用意するのは大体ママさんだ。オレん家を掃除してくれるのはパパさんのことが多い。寝床はキレイな方がいいからな、さぼらないでくれると嬉しい。食べて寝て、時たま運動して、ここの生活はのんびりだけど、なぜかあまり退屈しない。
「ただいまあ!」
「おじゃましま~す。」
姉ちゃんが帰って来たみたいだけど、知らない声もする。足音がいくつもして、なんか賑やかだ。姉ちゃん、こっち来ておやつくれないかな。
しばらくしたら、バタバタと音がして、姉ちゃんとその他が入ってきた。
「うわあ、ウサギだ!」
入ってくるなりそう言って、まっすぐこっちにやって来る。
「えへへ、クロ太だよ。」
嬉しそうな姉ちゃんと、その他の顔がオレん家を覗き込む。
なんだ?
「触っていい?」
「いいよ。」
姉ちゃんが天井を開けて、手を伸ばしてきた。
おお!そこも開くのか!
びっくりしていると、姉ちゃんがオレをつまみ上げて、抱っこした。
・・・・・
なんかさ、落ち着かないんだけど。周りを囲むその他がわくわくした顔で、凝視するから。
「撫でていい?」
「いいよ。」
「うわあ、ふわふわ~。」
「やわらか~い。」
なんか、くすぐったいんだけど。
「かわい~。」
まあね。よく言われる。
「抱っこする?」
「する!」
う~ん、おやつくれたらな。
って姉ちゃん!わわわ!
「うわあ、あったかいね~。かわい~。」
う~ん、なんか、居心地悪いなあ。
「クロ太はね、こうやって頭を撫でられるのが好きなんだよ。」
そう言って、姉ちゃんはいつもみたいに、頭を撫でてくれた。
うん、そうそう。それ、落ち着くんだよね~。
「ほんとだ、気持ちよさそう。」
ふわ~、とろける~。
・・・あれ、今オレ何やってた?いつの間にか床に降ろされてるぞ。あれ?
「ほんとだ!我に返ったって感じ。」
「ね。」
え?え?なに?
「耳ピクピクさせてる。」
そりゃまあ、知らない声もするし。
「え?ウサギって後ろ肢で立つの?」
「時々やるよ。」
そりゃまあ、この方がよく見えるし。
「前肢重ねてる。」
「かわいい!」
そう?
「この部屋で放し飼い?」
「いつもはケージの中なんだけど、時々外に出すとすごい勢いで走るんだよ。」
「へえ、走らないかなあ。」
いや、オレにも気分てもんがさ。
のっそのっそ歩いている間も、姉ちゃんたちは何か喋ってる。
「涼ちゃんちは犬飼ってるんでしょ?」
「そうだよ。かわいいよ。でも散歩が嫌いでね。」
「え?犬が?」
「そうなんだよ。おやつばっかりねだるんだけど、散歩っていうと動こうとしなくなるの。太っちゃうから頑張って連れてこうとするんだけど、引きずったり抱えたりで、ちっとも運動にならないんだよ。」
「あ、わかるかも。いとこんちの猫も運動嫌いで、すごくおっきくなっちゃったんだって。」
「ウサギは散歩しないよね。」
「そういえばそうだね。家の中を走るだけでいいのかな。」
そんな話をしてた姉ちゃんたちだったけど、
「あ、ねえ、そろそろ。」
「あ、そうだね。」
なんて言って、
「クロ太、また後でね。」
って家に俺を戻すと、またバタバタと出て行った。お菓子持ってくね、なんて言いながら。
あの・・・オレのおやつは?