家の中で運動会
なんかさ、食べて寝て、だけだとムズムズしてくるんだよな。
思いっきり走りたいなあって。ちょっとでいいんだ。
でも、オレん家狭いからちょっとも走れないんだよな。オレん家が置いてあるこの部屋なら、走れるかな。
どうやって入り口を開けるかは知ってるぞ。姉ちゃんがエサをくれるときに開けてるからな。姉ちゃんは大きいから手しか入らないけど、俺ならこの穴を通れる。
こうやって、入り口を押し開けて。
・・・開かない。姉ちゃんの時はスーッと開いたんだけど。
あちこち嗅いで鼻を押し付けたりしたけど、入り口は開かない。
もう!なんだよ!
ガジガジ、と噛みついていたら、ちょっと動いた感じがした。
フン、と首を伸ばしてみると、上にスーッと動いた。
やった!開いたぜ!
・・・なんで閉まってんの?さっき開いたよ?おかしいな、もっかい。
スーッと動いて、ほら、開いた!
って、口離したらカチャンて落ちてきた!
おい!なんで勝手に閉まるんだよ!
もっかい。こいつが閉まるより先に出れば・・・。
やるな。次こそは。
「クロ太、何してるの?」
勝手に落ちる入り口と格闘していたら、姉ちゃんが来た。
姉ちゃん!こいつがオレの邪魔するんだよ!
オレは鳴けないから、伸び上がって全力で姉ちゃんを見つめながら訴えた。
「外出たいの?」
そうそう、そうなんだよ。
そうしたら、姉ちゃんは、オレが格闘してたとこの横の壁を開けた。
え?そこ開くの?しかも、勝手に閉まらない!
ちょっと感激しながらも戸惑って、ちょっとだけ臭いを嗅いでみたりした。
下を覗いてみると、少し段になってるけど、これくらいなら降りられる。
ていっと飛び降りて着地すると、俺の家と違って、一面が硬い感触だった。オレん家は、床が金網でスカスカなんだ。
ピョコンピョコンと跳んでみると、しっかり床を蹴ってる感じがする。ちょっとだけ足馴らしをしてから、ダダダッと走ってみた。
ひゃっほー!気持ちいーぞ!
爪が引っかかんないし、思いっきり走れるし、これ最高。
ドダダッ、ダダダッと走ってるのを、姉ちゃんは笑いながら見てる。
もちろん探検も忘れない。部屋の中はいつも見てるけど、歩き回ったのは初めてだ。上から布が下がってるとことか、何かの隙間とか。狭いとこに挟まるのって、なんか落ち着くよな。
お、なんだこれ。細長いヒモみたいなのがあるぞ。なんか邪魔だな。
そう思ってかじってみたら、程よい硬さだ。ときどき固いものかじっておかないと、歯が気持ち悪いんだよね。
「あ!クロ太!何やってるの!だめでしょ、電気コードかじっちゃ!」
え?なに???