第16話 テスト勉強をしよう
およそ一年ぶりの更新。どうもお久しぶりです。
続きをお待ちの方、大変長らくお待たせしました!全てのプロットが消えるというやらかしをしてから、萎えて失踪しておりました。なのでプロットから全て書き直しました。今までの展開も少しずつ修正予定ですので、展開どんなだっけ?とお忘れの方はぜひもう一度読み直してみてください!修正案はコメントにて、投稿いたします。それと、今話から新章です!
では、本編をどうぞ!
「……あーっ、もう無理! マジでわかんない! あおちー、助けてーっ!」
放課後の教室。テスト期間によって部活動が休みになった私たちは、プチ勉強会を開いている。そして夕刻のオレンジ色の光が斜めに差し込む空間で、えりが盛大に机に突っ伏していた。シャープペンシルがコロンと転がり、ノートには殴り書きされた数式の死骸が並んでいる。
「もー、えりは本当に集中力ないなぁ。まだ始めてから三十分しか経ってないよ?」
私は苦笑しながら、自分の椅子をえりの席へと引き寄せた。
ふふん、これだよこれ! 勉強が苦手なえりを、優しくフォローする。これぞ、私が目指すオタクに優しいギャルに必要な包容力のトレーニング! 完璧なギャルムーブ過ぎて自分が怖いぜ…
前世でのオタク知識と、今世での血の滲むような自分磨き。すべてはこの理想のギャルになるために費やしてきた。まあ、なぜか周囲からは女神とか、お嬢様なんて勘違いをされている気がするけれど(気のせいだよね?)中身は至ってモチベの高いギャル(のつもり)である。
「うえー、もう頭爆発するよー。あおちーの顔見てる方がよっぽど癒やされる…って、えっ!?」
突っ伏していた顔を上げたえりが、至近距離にある私の顔を見て、ぴゃっと変な声をあげた。
机をくっつけて、椅子を限界まで寄せているのだから当然だ。私のサラリとした白髪が、えりの机にまでサラサラと零れ落ちている。
「ほら、どこがわからないの? 見せてごらん」
私はえりの背後に回り込むような形で、上から覗き込んだ。自然と私の胸元が、えりの背中や肩のあたりに軽く触れる。
制服のブラウス越しでもはっきりと分かる柔らかい感触が、えりの背中に押し付けられる形になった。まぁ、ちょっと狙ってるよ?
「っ!? あ、あおちー、おっぱいで潰れちゃうよー」
「ん? ああ、ごめんね、ちょっと見えづらくて」
私はあえてトーンを落とし、耳元で囁くように優しく声をかけた。ギャルたるもの、これくらいのスキンシップは日常茶飯事のはずだ。オタクを優しく包み込むための包容力の予行練習である。
だが、えりにとっては強烈すぎたらしい。耳まで一瞬で真っ赤に染まり、完全にフリーズしている。…えりってやっぱり耳弱いのかな。かすかに見えるえりのうなじには、薄い汗がにじんでいた。
「え、えっとね! ここ! この公式の意味がさっぱりピーマンで…!」
パニックになりながらノートを指差すえり。私はその震える手の上から、自分の手をそっと重ねた。
「これはね、こっちの数字を先に代入するんだよ。ほら、こうやって……」
手を取り、一緒にペンを動かす。私の指先が、えりの細い指に絡みつく。
えりは完全に限界を迎えたようで、カチカチに硬直しながら、小さな声で、んっ…と鳴いていた。上から覗き込むと、えりのブラウスの隙間から、上気した白い肌と、激しく上下する胸元が丸見えだ。その初々しい反応が、なんだか無性にエロ…可愛くて、私は少しサディスティックな悦びに浸ってしまう。ちょっといじめすぎたかな?
なんだか今日は気分がいいから、ついえりにちょっかいを出したくなってしまうのだ。
「…あー! もうダメ! 集中力切れた! バスケがやーりーたーい!」
限界を迎えたえりが、勢いよく立ち上がった。
「テスト勉強疲れたし、気分転換しないと! 体動かそう! ね?」
「ふふっ、まぁここまで頑張ったし、一区切りにする? じゃあ、ちょっと体動かしにいこっか」
「やったー!あおちーまじLOVE」
⭐︎
学校の近くにある、少し寂れた公園のバスケットコート。夕日が空を真っ赤に染め上げる中、私とえりは二人きりでボールを追いかけていた。
「ほらほら、えり! 隙だらけだよ?」
「あおちー、運動神経良すぎだってば! 待って、いかせない!」
タプン、タプンと小気味いい音を立ててドリブルする私。
制服のブラウスの第一ボタンを外し、スカートのままだが、前世のスポーツ知識と、この完璧な肉体にかかれば、えりを翻弄することなど造作もない。
私が右へフェイントを入れると、えりは必死に身体を寄せてきた。
「捕まえたっ!」
えりが後ろから抱きつくような形で、私の身体をホールドする。
ディフェンスとしては完全にファウルなのだが、そんなことはどうでもよくなるほどの密着感だった。
「わわっ、えり、それ反則だし! 距離近くない!?」
「えへへー、今はルールないしー?遊びだかんね!あとあおちーが柔らかいのが悪いんだもん」
えりの細い腕が私の細腰に回り、背中にえりの胸がふにゅんと押し付けられる。そう、ふにゃんだ。走って火照ったお互いの体温が、服越しにダイレクトに伝わってきて、ドクドクと速い鼓動が重なる。
えりの甘い汗の香りが鼻腔をくすぐり、私の身体も自然と熱を帯びていく。
「もー、しょうがないなぁ…じゃあ、これはどう?」
私は身体を滑らせるようにしてえりのホールドをすり抜け、くるりと反転した。至近距離で目が合う。えりの瞳が、夕暮れの光の中で潤んで見えた。
その一瞬の隙を突き、私は綺麗に跳躍する。しなやかにしなる身体。制服のスカートがふわリと舞い上がり、黒い見せパンに包まれた太ももが露わになる。
綺麗な放物線を描いたボールは、パサリと乾いた音を立ててネットを揺らした。
「すご……綺麗……」
着地し、乱れた白髪をふっとかき上げる私を見て、えりはボールも追わずにうっとりと見惚れていた。その表情が、たまらなく可愛い。ヤバいな、キュートアグレッションみたいなの起こしてるわ。
「ふぅ、いい汗かいたね。はいえり、お茶」
ベンチに移動し、自販機で買った冷たいお茶を渡す。
「もう、あおちー上手すぎだよー。バスケ部今からでも遅くないよ?」
「私はいいよ、えりのバスケしてる所みてるだけで楽しいから。それにえりもここ1ヶ月でかなり上手になったね」
えりはベンチに腰掛け、ハァハァと小さく息を荒げながらお茶を受け取った。首筋を伝う汗が、夕日にきらめいて見えた。
「ありがとっ、わたしも全力でバスケやってるからね!」
「うん、その調子。ほら、汗いっぱいかいてるよ?」
私はなんの気なしに、自分のミニタオルでえりの首筋の汗をぽんぽんと拭ってあげた。
「もう、あおちーったらママみたいだよー」
えりが嬉しそうに言う。私は首を傾げながら、えりの乱れた髪を優しく耳にかけてあげた。髪の毛サラサラだなぁ。
おまけに、汗を拭くために私が少し前かがみになったせいで、制服のブラウス越しに、私のハイスペックな胸元の膨らみがえりの目と鼻の先に迫っている。走った後だから、お互いに少し息が荒くて、胸元が大きく上下していた。
「あ、あおちー…ちょっと、近くない…?」
えりは完全に目のやり場に困り、視線をキョロキョロと彷徨わせている。
ブラウスの襟元から覗くえりの鎖骨や、上気した白い肌が夕日に照らされて、なんだかすごく艶っぽい。なんか今日私ヤバいな。えりから影響されてるのかな?
「そう? ほら、襟足の方も汗ついてるよ。冷えちゃうからね」
私は、さらに一歩距離を詰めて、えりのうなじへとタオルを滑らせる。
えりったら可愛いんだから。あとやっぱりスポーツの後はこういうケアが大事だよね。なんか面倒見のいいギャルっぽくね?いいな…
自分のギャルムーブに一人で満足してタオルを引こうとした、その時。
えりが私のブラウスの袖口を、まるで行かないでと縋るように、きゅっと小さな手で掴んできた。
そのまま、私の肩にコテン、と自分の頭を乗せてくる。
「…もうちょっと、一緒にいたいなー」
上目遣いで、少し潤んだ瞳。
これには私も心の中で、可愛いいいいいい……と心臓を撃ち抜かれそうになった。いや、撃ち抜かれた。
「うん、私もまだえりといたいな。じゃあ、近くのカフェ行こっか!」
私の言葉に、えりは嬉しそうに、でもまだ赤みが引かない顔でうんっ!と頷いたのだった。
「じゃあ、近くのオシャレなカフェ行こっか」
「本当!? やったぁ!」
えりは弾けたような笑顔になり、私の腕に嬉しそうに抱きついてきた。二つの柔らかい膨らみが、私の腕を挟み込むように圧迫する。ふむ、最高です。
夕暮れの公園で、私たちは互いの体温を感じながら、カフェへと歩き出した。
⭐︎
公園を出た私とえりは、駅裏の路地にある隠れ家風のカフェに足を運んでいた。
そこは、SNSでも賞味期限一時間の絶品しぼりたてモンブランが食べられる、と大人気のお店。店内に入ると、焼きビターな栗の香りと、バターの甘い匂いが優しく鼻腔をくすぐる。私って本当に甘いもの好きになったなー。
「すごい、本当に目の前でマロンクリームを絞ってくれるんだね、あおちー!」
「うん、本当に素敵だよね。秋の味覚って感じで、上がるよね。こういう季節限定の映えスイーツは絶対に外せないからね」
ふふん、これだよこれ! チルいカフェで放課後を満喫する女子高生ギャルの王道ムーブ! 勉強と運動の後は、これくらいのご褒美がないとね!
席について早々、私たちは目当ての限定モンブランとドリンクを注文した。
運ばれてきたのは、細さ一ミリほどの繊細なマロンクリームが、うず高く、美しくドレスのように重ねられた芸術的なモンブラン。フォークを入れるのがもったいないくらいだ。
「ほらえり。まずは一口食べてみなよ。あーん」
私は、フォークで栗のクリームと中の生クリームをすくい取り、えりの口元へと差し出した。
私たちにとってはいつもの光景。だかあまりにも慣れてしまっている。周りから見れば熟年夫婦である。
「あーん」
パクッとフォークをくわえる。生クリームが、えりのぷるんとしたピンク色の唇の端に、ほんの少しだけ白くついてしまった。
「あ、ついてるよ。動いちゃダメだからね」
私は自分の親指の腹を使って、その口元のクリームを優しく拭ってあげた。
新しいティッシュを取るのも面倒だったので、なんとなくそのまま自分の口元へ運び、親指についたクリームをペロリと舐めとった。
「ん、すっごく濃厚で美味しい!」
「~~~~~~っっっ!!!???」
えりは言葉にならない悲鳴を喉の奥で鳴らし、両手で顔を覆ってそのまま机に突っ伏してしまった。耳の裏まで完全に茹でダコ状態だ。
あ、やべっ、ちょっとキモかったかも。無意識で食べちゃった。
「……おい。また公共の面前でイチャついてんだよ、お前ら」
その時、すぐ隣のボックス席から、聞き覚えのある声が響いた。仕切りの向こうからぬっと顔を出したのは、少し着崩した私服姿の玲さんだった。
「あ、玲さん奇遇だね、どうしてここに?」
「ねこちゃん!? なんでここにいんの、せっかくあおちーとのデートなのに…!」
えりが机から顔を上げて、涙目でブーブーと不満の声をあげる。
玲さんは別にデートの邪魔しねーよ、と眉を寄せながら、いつもの鋭い三白眼で私たちを睨みつけていた――が、その手元を見て、私は思わず目を見張った。
玲さんの前には、私たちが頼んだのと同じ限定モンブラン。しかも、すでに半分以上が綺麗に平らげられている。
口元には、さっきのえりと同じように、マロンクリームがちょこんとついていた。
「玲さん…もしかして、一人でモンブランを食べにきたの?」
「季節限定につられてな…」
玲さんは相変わらず甘党のようだ。
「ぷっ…あはは! ねこちゃん、口の横にクリームついてるよ! ヤンキーのくせに可愛いお店で口にモンブラン付けてるとか、ギャップ萌え狙いすぎでしょ!」
「るっせぇえええ! 黙れ英理! ぶちのめすぞ!」
玲さんは顔を真っ赤にして怒鳴りつつも、そそくさと私たちのテーブルの空いている席にドカッと腰掛けた。照れ隠しの突撃合流だ。
「ったく、葵も葵だ。英理を無自覚にタラしすぎなんだよ。こいつが爆発して死んだらどうすんだ」
「えっ? 私は普通にクリームを拭いただけだよ?」
「それがタラしだって言ってんだよ! …はあ、これだから無自覚は…」
玲さんはフイッとそっぽを向きながら、すこし不機嫌になった。でも私たちに会えて少し嬉しそうにしているのも、うかがえた。可愛いかよ。
「えっとごめん。一口あげるから許して?」
「…そういうとこだぞ?…まぁ、貰うが」
ヤンキー気質な彼女も、こういう女の子同士の甘い距離感には意外とウブで、本気で照れているのが一目でわかる。
「あー! ねこちゃん、どさくさに紛れてあおちーに甘えないでよ!」
「うるさいな!」
二人がキャーキャーと騒ぐ様子を微笑ましく眺めながら、私は注文していた紅茶を一口すすった。
賑やかで楽しい空間。ふと、玲さんが思い出したように話を振ってきた。
「そういや、もうすぐ体育祭だろ。お前ら、種目何にすんだよ。アタシはダルいから、適当な競技でサボるつもりだけど」
「私はねー、あおちーと一緒ならなんでもいいかなー。あ、でも競技なら、二人三脚とかかな?」
えりがまた妄想を膨らせて目を輝かせる。
だが、私はここで、紅茶のカップを置いて真剣な表情になった。
「私は、茜とリレーに出る約束だから。それだけは絶対に出るよ」
「あーそういえば言ってたね」
えりがどこか寂しそうに視線を落とすと、玲さんがコーヒーカップを弄びながら、私に視線を向けた。
「葵は運動神経もいいだろ?引っ張りだこじゃないのか?」
「私も出れるのはなるべく出たいと思ってるよ。今度、先生から学級委員の集まりで、体育祭について説明があるから、そこでどこまで出ていいのか聞いてみるつもりなんだ」
せっかくの体育祭だし、他にもいろんな種目に出て「みんな、お疲れ様ー!私たち最強ー!」って感じで冷たいお水とかを配りまくりたいもんね。これぞ完璧な仲間想いの優しいギャルデッキの全乗せってね。
脳内で完璧な体育祭計画を立てて、私はフフンと誇らしげに胸を張った。
そんな私を見て、玲さんはやれやれと肩をすくめ、小さくため息をつく。
「ま、その前にテストを片付けなきゃな。葵は余裕だろうが、英理はなぁ…」
「なに、ねこちゃん? わたしが赤点取るとでも?」
えりが頬をぷくーっと膨らませて、玲さんを睨みつける。玲さんはそんなえりの視線を意に介さず、フッと鼻で笑った。
「バカだからなぁ……」
「あ、今バカって言った! ひどい!」
図星を突かれたえりは、涙目でガタッと椅子を鳴らして立ち上がると、そのまま私の腕に抱きついてきて、胸元に顔をすり寄せた。
「うえーんあおちー、バカって言われたよー!」
「はいはい、えりは頑張って勉強しようね?」
私の腕に押し付けられるえりの柔らかい感触を楽しみつつ、その頭をぽんぽんと優しく撫でまわす。
すると、えりは抱きついたままピキッと固まり、玲さんが呆れたような顔で突っ込んできた。
「葵、それは慰めになってないぞ」
お読みいただきありがとうございます!
久しぶりの更新ですので、私の執筆に違和感を感じた方もいらっしゃるかと思いますが、異世界もの書いてる影響なのであまり気にしないでください。そうそう、異世界ものも書いてるので、気になったら読んでみてください!異世界を営業スマイル一つで、無双する話です。カクヨムに投稿しています。
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