その02 焼き菓子作り
「その、カボチャは……どうですか? 茹でたカボチャと、大麦の粉を混ぜて……」
朝ご飯の後にチオットに相談したら、こちらの想像を超える素晴らしい解答が帰ってきた。
カボチャはお野菜の中でも甘みが強い。そのまま焼くのも美味しいが、パンに練り込んだりシチューにするのも人気がある。
「カボチャなら、こないだ貰ったのが残ってたね。運が良いかも」
私は食料棚から半欠けのカボチャを下ろした。乾燥しているがまだまだ食べれる。
わたと種はくり抜かれ、種はざるに入れて干していた。
「なにするのヨ?」
「ルシビルくんへのお土産にカボチャのクッキーを焼きます」
下ろしたカボチャをまな板に乗せて、用意した鉈を振り下ろす。四分の一もあれば十分だろう。
「チオットちゃん。なにか注意点はある?」
「あ…………ええと、しっかり……火を、通さないと、だけど……煮ると、水っぽくなっちゃうから……」
「蒸しだね」
私は鍋に水を入れ、蒸籠にカボチャを入れた。
しばらく時間がかかるだろう、今の内に朝ご飯の片付けをする。
興味津々で蒸籠を見るヌーヨドと、いつの間にか入って来たロドゥバ。
「それを使うと、一昨日の豆パンも作れますの?」
「ふわふわモチモチにするには、多分粉の配合とかが関わるかもね、どう思いますかチオット先生?」
「ええと……普段、使ってる……大麦粉や、ライ麦だと……難しい……かな?
米粉か……お芋で……」
ちなみに、午前中のお仕事は我らがヘアルトが一人でやってくれている。
「ロドゥバもお菓子に興味あるの?」
「出来ないよりも出来たほうが良いではございませんの」
「確かに……あ、気付いたんだけどさ」
私は手を打ち、蒸籠に向って意識を向けた。
だんだん身について来ている腹式呼吸、オヘソの下に意識を集中、呼気を循環、指先から魔力を放出。チリチリと指先が焦げるような痛み。
「『加熱』って、調理にも使えるかも。無水で焦がさず均一に温め出来るって結構凄いんじゃない?」
「体力が馬鹿にならないのではありませんこと?」
「まあねー」
いつか極めたらって言っても、いつになるかも分からないんだけどね。
今日は調子が良く、蒸籠の中のカボチャに熱が通るのを感じる。『加熱』を練習している内に、対象がいまどれくらいの温度なのか分かるようになって来ていた。
「そろそろ火が通ったかも」
「どれどれ……?」
「ちょっとロドゥバ、勝手に冷やさないでよ」
「見るだけですわよ」
ロドゥバの『冷却』も、同様の効果がある様だ。
「芯まで『赤』いですわね」
冷たいと黒とか青、熱いと緑黄色赤になっていく。生き物には『加熱』も『冷却』も使えないけれど、温度を見ることだけはできるのを確認している。
暗闇の中で魔力を放出することで、生き物がいたら分かるのだ。便利……なのかな?
私は蒸籠を開けて、もうもうと上がる蒸気の中のカボチャにフォークを突き立てた。
肉料理にも使うこのフォークという二股の金棒は、熱いものを炙る時にとっても便
利。
今回はカボチャをまな板まで移動するのに使う、ナイフで皮を削ぎ、その皮は刻んでおく。
火の通ったカボチャを鍋に移し、山羊乳を少しかけて棒で執拗に潰す。
「いいニオイ、楽しそうだヨ」
「あ、ダメ!」
「あっつい!」
熱々のカボチャを潰す鍋もまた熱々、指先を赤くして飛び上がるヌーヨド、ロドゥバが水を汲み、その指を浸してあげる。
「ロデュバ! つめたくして!」
「軽い火傷ですので、常温で十分ですわ」
冬場の水は冷たいし、熱々といっても沸騰していた訳では無い。水ぶくれにもならずにすぐに落ち着くだろう。
私はペーストになってきたカボチャに、取り置いていた卵を割り入れる。スプーンを使ってせっせと潰して、ある程度滑らかになった所で味見。
「優しい甘さ」「おいしいヨ!」「少し物足りませんわね」
「では……チーズでも、入れます、か?」
食料棚から山羊のチーズを取り鉈で割る。塊部分は鉈の平で押し潰して、大きな塊をなくす。
かぼちゃペーストに大麦粉を同量くらい入れて、スプーンで粗く混ぜる。粉がまだ混ざり切らないくらいでチーズも投入、ざっくり混ぜる。
「これを涼しい場所で少し寝かします。ロドゥバ」
「え? 嫌ですわよ」
まあ、あんな熱いもの冷やしたら疲れ果てちゃうよね。
「カボチャの種を剥くから手伝って」
「まあ、それくらいなら……」
「おれも! おれもやる!」
カボチャの種は白い部分と、内側に緑色の部分がある。
白い部分も食べれるのだが、今日は乾燥が足りないし、なにより緑の部分だけの方がおいしい。
私たち四人は最初は談笑しながら、次第に無口に種を剥いた。
緑の部分は生でも食べれる。中身を取り出した白い部分は刻んで、カボチャの皮と一緒に平鍋でよく炒る。
さっきのクッキーたねをひとすくいして、山羊乳で伸ばし、種と皮と混ぜ込み薄く伸ばす。
そのまま平鍋で薄焼きにする。
焼き立ての平焼きをナイフで四等分。
「おいしいヨ」「ボソボソとして舌に残りますわね」「…………」
「いいの、もったいない部分を集めて焼いただけだから」
少し落ち着いたクッキーたねを、粉を振ったまな板に乗せて、濡らした拳で叩いて伸ばす。
「おれも! おれも!」
「ヌーヨドは体重が足りませんわね」
「その理屈だとロドゥバ向けかな?」
「わたくし、そういった腕力に物を言わせる仕事は向いておりませんの」
なんとなく平らになったクッキーたねをナイフで裁断。
その上にカボチャの種を乗せるのだ。
「あの……ヌーヨド、さん。これを……乗せて……」
「まかせてヨ!」
多少不格好ながら山程できたクッキー。
これを平鍋に置き、蓋をしてかまどの火にかければ完成だ。
出来上がったら形がいいのから選り分けてお土産にして、残りは先生方に食べてもらおうっと。




