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聖パトリルクス修道院は今日も平和!  作者: 運果 尽ク乃
第十一話【春の夢】

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その02 焼き菓子作り

「その、カボチャは……どうですか? 茹でたカボチャと、大麦の粉を混ぜて……」


 朝ご飯の後にチオットに相談したら、こちらの想像を超える素晴らしい解答が帰ってきた。

 カボチャはお野菜の中でも甘みが強い。そのまま焼くのも美味しいが、パンに練り込んだりシチューにするのも人気がある。


「カボチャなら、こないだ貰ったのが残ってたね。運が良いかも」


 私は食料棚から半欠けのカボチャを下ろした。乾燥しているがまだまだ食べれる。

 わたと種はくり抜かれ、種はざるに入れて干していた。


「なにするのヨ?」

「ルシビルくんへのお土産にカボチャのクッキーを焼きます」


 下ろしたカボチャをまな板に乗せて、用意した鉈を振り下ろす。四分の一もあれば十分だろう。


「チオットちゃん。なにか注意点はある?」

「あ…………ええと、しっかり……火を、通さないと、だけど……煮ると、水っぽくなっちゃうから……」

「蒸しだね」


 私は鍋に水を入れ、蒸籠にカボチャを入れた。

 しばらく時間がかかるだろう、今の内に朝ご飯の片付けをする。


 興味津々で蒸籠を見るヌーヨドと、いつの間にか入って来たロドゥバ。


「それを使うと、一昨日の豆パンも作れますの?」

「ふわふわモチモチにするには、多分粉の配合とかが関わるかもね、どう思いますかチオット先生?」


「ええと……普段、使ってる……大麦粉や、ライ麦だと……難しい……かな?

 米粉か……お芋で……」


 ちなみに、午前中のお仕事は我らがヘアルトが一人でやってくれている。


「ロドゥバもお菓子に興味あるの?」

「出来ないよりも出来たほうが良いではございませんの」

「確かに……あ、気付いたんだけどさ」


 私は手を打ち、蒸籠に向って意識を向けた。

 だんだん身について来ている腹式呼吸、オヘソの下に意識を集中、呼気を循環、指先から魔力を放出。チリチリと指先が焦げるような痛み。


「『加熱』って、調理にも使えるかも。無水で焦がさず均一に温め出来るって結構凄いんじゃない?」

「体力が馬鹿にならないのではありませんこと?」

「まあねー」


 いつか極めたらって言っても、いつになるかも分からないんだけどね。

 今日は調子が良く、蒸籠の中のカボチャに熱が通るのを感じる。『加熱』を練習している内に、対象がいまどれくらいの温度なのか分かるようになって来ていた。


「そろそろ火が通ったかも」

「どれどれ……?」

「ちょっとロドゥバ、勝手に冷やさないでよ」

「見るだけですわよ」


 ロドゥバの『冷却』も、同様の効果がある様だ。


「芯まで『赤』いですわね」


 冷たいと黒とか青、熱いと緑黄色赤になっていく。生き物には『加熱』も『冷却』も使えないけれど、温度を見ることだけはできるのを確認している。

 暗闇の中で魔力を放出することで、生き物がいたら分かるのだ。便利……なのかな?


 私は蒸籠を開けて、もうもうと上がる蒸気の中のカボチャにフォークを突き立てた。

 肉料理にも使うこのフォークという二股の金棒は、熱いものを炙る時にとっても便

利。


 今回はカボチャをまな板まで移動するのに使う、ナイフで皮を削ぎ、その皮は刻んでおく。

 火の通ったカボチャを鍋に移し、山羊乳を少しかけて棒で執拗に潰す。


「いいニオイ、楽しそうだヨ」

「あ、ダメ!」

「あっつい!」


 熱々のカボチャを潰す鍋もまた熱々、指先を赤くして飛び上がるヌーヨド、ロドゥバが水を汲み、その指を浸してあげる。


「ロデュバ! つめたくして!」

「軽い火傷ですので、常温で十分ですわ」


 冬場の水は冷たいし、熱々といっても沸騰していた訳では無い。水ぶくれにもならずにすぐに落ち着くだろう。

 私はペーストになってきたカボチャに、取り置いていた卵を割り入れる。スプーンを使ってせっせと潰して、ある程度滑らかになった所で味見。


「優しい甘さ」「おいしいヨ!」「少し物足りませんわね」

「では……チーズでも、入れます、か?」


 食料棚から山羊のチーズを取り鉈で割る。塊部分は鉈の平で押し潰して、大きな塊をなくす。

 かぼちゃペーストに大麦粉を同量くらい入れて、スプーンで粗く混ぜる。粉がまだ混ざり切らないくらいでチーズも投入、ざっくり混ぜる。


「これを涼しい場所で少し寝かします。ロドゥバ」

「え? 嫌ですわよ」


 まあ、あんな熱いもの冷やしたら疲れ果てちゃうよね。


「カボチャの種を剥くから手伝って」

「まあ、それくらいなら……」

「おれも! おれもやる!」


 カボチャの種は白い部分と、内側に緑色の部分がある。

 白い部分も食べれるのだが、今日は乾燥が足りないし、なにより緑の部分だけの方がおいしい。


 私たち四人は最初は談笑しながら、次第に無口に種を剥いた。

 緑の部分は生でも食べれる。中身を取り出した白い部分は刻んで、カボチャの皮と一緒に平鍋でよく炒る。


 さっきのクッキーたねをひとすくいして、山羊乳で伸ばし、種と皮と混ぜ込み薄く伸ばす。

 そのまま平鍋で薄焼きにする。


 焼き立ての平焼きをナイフで四等分。


「おいしいヨ」「ボソボソとして舌に残りますわね」「…………」

「いいの、もったいない部分を集めて焼いただけだから」


 少し落ち着いたクッキーたねを、粉を振ったまな板に乗せて、濡らした拳で叩いて伸ばす。


「おれも! おれも!」

「ヌーヨドは体重が足りませんわね」

「その理屈だとロドゥバ向けかな?」

「わたくし、そういった腕力に物を言わせる仕事は向いておりませんの」


 なんとなく平らになったクッキーたねをナイフで裁断。

 その上にカボチャの種を乗せるのだ。


「あの……ヌーヨド、さん。これを……乗せて……」

「まかせてヨ!」


 多少不格好ながら山程できたクッキー。

 これを平鍋に置き、蓋をしてかまどの火にかければ完成だ。


 出来上がったら形がいいのから選り分けてお土産にして、残りは先生方に食べてもらおうっと。


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