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聖パトリルクス修道院は今日も平和!  作者: 運果 尽ク乃
第四話【11人いる?】

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その05 11人

 さて。せっかくなので聖パトリルクス修道院の十一人をおさらいしよう。


 まずは院長先生。

 背が高くて鷲鼻、魔女みたいな顔と笑い方、性格も魔女みたいなおばあちゃん。


 お酒も好きだが甘いものも好き。でもはちみつを独り占めにするような性格ではない。

 みんなのことを一番に考えてくれる性格だ。


 次におばあちゃん先生。

 背が低くてぽっちゃりぎみ、いつも眠そうでにこにこしてる、とっても優しい先生だ。

 ちょっぴり足が悪いし、いつも動きがゆっくりで、厨房にいるのを見たことがない。


 そして司書先生。

 栗色の髪と瞳の本の虫、宵っびきだから夜中にウロウロしていることもある。というか、一人で夜間の見回りをしているらしい。

 厨房に出入りしていてもおかしくはないけど、はちみつは手が汚れるし本も汚れるから嫌がりそうかな。


 以上が先生、続いてお姉さま方。


 青い目でいつも朗らか、お茶目なニカトールお姉さま。時々何考えているのかわからないけれど、まあ多分、考えがあってのことなのだろう。

 最有力容疑者。


 身体が大きくてベールで顔を隠したボゥお姉さま。

 喋れないし自己主張も少ないけど、甘いものが好きなのは確実。だからって勝手にはちみつを持っていくとは思えない。


 最後に見習い。


 ちなみに先生とお姉さまと見習いは、教育関係の立場の違い。

 ものを教える立場が先生で、教わる立場が見習い。


 お姉さま方は基本的な学習は済んでいるので教わらない立場。

 ボゥお姉さまは喋れないからどうしようもないけれど、ニカお姉さまは先生側に回ることも考えて勉強してるらしい。


 では気を取り直して、見習い六人に戻ろう。

 まずは私の、イウノ。


 わざわざ説明する必要もあるまい。私だ。そばかす面に寸胴体型の地味な小娘である。はちみつは盗んでいない。


 次にチオット。ピンクの髪に赤い瞳のとっても可愛い私の同僚。

 本人の話によると『タピルス』という種族らしい。


 本で調べたら、『(タピルス)』は六色の世界龍の一頭『記憶の大渦 メモルプリカ』の大天使『帳の乙女 リムエロ』の眷属で、夢とか夜に関係する種族が自分等を呼ぶ時の呼称だった。

 その本には種族名は『夢歩き(ナイトウォーカー)』とあった。人間には『夢魔(ナイトメア)』とか『淫魔(サキュバス)』と呼ばれる事もあるらしい。そっちは『吸血鬼(ヴァンパイア)』みたいなもので、あまり友好的な呼び方じゃないので、少なくとも私は使わないことに決めた。


 で、チオットがはちみつを隠すようなことだが……あり得る。

 チオットはおやつを作ることが多い。早めに確保しておいただけかもしれない。


 続くトチェド、『貴族様』だけど控えめで、偉ぶらない子。

 彼女に関してもあり得ないだろう。何しろはちみつ自体、トチェドの家が寄付金と一緒に送ってきた嗜好品だ。欲しければそちらに頼むだろうし、そもそもトチェドが食べ物に執着しているのを見たことがない。


 さて、残るはロドゥバとヘアルト。ダブル問題児である。しかし、あの二人に限ってはちみつ泥棒はないだろう。

 今まで話題にするタイミングがなかったが、ロドゥバは食事にうるさい。

 いつもうるさいけど食事時はことさらうるさい。


「こんな固いパンは食べたことがありませんわ。食感も香りもよくありませんけれど何を使ってますの? え? 大麦? 麦に種類がございましたの?」

「なんですのこのお肉、吐き気がするほど獣臭い上に噛み切れないような固さ、信じられませんわ」

「山羊の乳はどうしてこんなにも臭味が強いのですの? 人の食べるものとは思えませんわ」


 毎食毎食飽きずにそんな調子なので閉口しているのだが、それでも他に食べるものがない以上、ロドゥバも文句タラタラで食べている。

 そのロドゥバが盗み食いをするとは……待てよ。甘いお菓子には文句を言っているのを見たことがないな。


 でもやっぱり、あのプライドが服を着ているようなロドゥバだ。ないない。


 ヘアルト、ハシバミ色の髪と瞳の元メイド。ちょっと性格に難があって……いや、すごく難がある。

 男の子が好きで仕方がないらしい。フケツ。


 彼女の食べ物の趣味は正直分からない。ロドゥバの文句に嫌味を言うのが趣味みたいなものなので、好き嫌いを言い出すタイミングが無いだけかもしれない。


 最後にエーコちゃん。銀色の髪に緑の瞳の大人びた少女。

 彼女に関しては。未知数だ。聖パトリルクス修道院に至るまで、どんな苦難に合ってきたのか想像に難い。


 私が金貨に誘惑されたように、彼女がはちみつという甘い誘惑に負けたとしても、誰が責められようか。


 さて、そんなこんなで要約すると以下の三点になる。


 一つ目。

 やっぱり怪しいのはニカお姉さま。


 二つ目。

 チオットと院長先生に確認を取るべき。


 三つ目。

 エーコちゃんにそれとなく探りをいれる。


 午前中に片が付けばいいんだけれど。


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