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【三章連載中!】花びら姫の恋  作者: 師走 瑠璃
【三章】何者でもない私の悪役日記
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第一話 序 たとえば人生やり直せるなら

第三章スタートです!

楽しんでいただけると幸いです。






 子供の頃の夢は魔法使いのプリンセス。


 綺麗なドレスに豪華な宝石のアクセサリー。キラキラ綺麗な魔法のステッキで、悪いやつらをやっつける。

 少し大きくなってからはそこに素敵な王子様との恋愛も加わった。

 全ての願いが叶う、楽園を描いた夢想世界。

 でもそんなのありっこないって悟るから、皆んな早々に現実社会に馴れていく。早く大人になりなよと、同じような夢を見ていた友人達もいつの間にか楽園から消えていた。

 でも諦めの悪いあたしは現実に直面しても受け入れられなくて、いつまでも夢見がちな世界でのらりくらりと生きてきた。

 

 結果。



 「招宴とやら、お前も行け」


 久々の家族揃っての夕食の席。

 上座に座った“父親”が末席に座る自分に向かって冷淡に言い放った。

 家族全員の視線が一斉に自分に集まる。


 「役立たずのお前にもう一度機会をやろうと言っているのだ。その目はなんだ」


 その目?

 どんな目だった?

 内心では空惚けて顔を伏せる。


 「いえ、申し訳ありません……。ですが、その招宴にはご招待を受けていないのでは? 出席自体が難しいのではないでしょうか?」

 「お前が口を挟むことではない。いつからそのように偉そうな口を叩けるようになった」

 

 “父親”の高慢な圧に、自分の内側がぎゅっと縮こまるのを感じてもう一度顔を伏せる。

 “あたし”なら流せる言葉も、この身体の“子”は些細な言葉にも敏感に反応して縮み上がっているから、この身体の持ち主を尊重してあまり言い返さないようにしている。

 すごく頭にくるけど! 


 「父上、そのように頭ごなしに叱るものではありませんよ。この子だってない頭で精一杯考えているのですから。ご心配なさらず。今回は僕も付き添いで参りますので」


 “父親”の斜め右に座った若い男がワイングラスを傾けながら愉しそうに目を細める。

 その言葉にうげぇ、と内心で辟易する。

 何しに来んの、この格好つけ男。

 外見ばっかり飾ってて中身が伴わない、一番苦手なタイプのコイツが“兄”だっていうのも残念なのに。


 「えぇー、兄様ずるいな。あそこの皇家は美形揃いだっていうじゃないか。特に國皇の姪は有名だ。ひと目見ようと男が列を成すって噂だぜ? 俺も行きたいよ」

 「今回は目的が違うからね。お前は留守番だ。目的が達成できればいつでもかの国には行けるじゃないか。それまで我慢おし」

 

 目的。

 目的が達成できると信じて疑わないその自信がキモいんだけど、気づいてないんだろうなこの人達。


 「まあ國皇の姪っていったって、亜種だって話だしな。どんなに美人でも亜種じゃ妻にはできないし、せいぜい妾か」


 キモいキモいキモいんですけどっ。

 この“兄その二”も相当だ。ホントにおかしな人って根拠のない自信があって、ある意味尊敬する。

 兄弟揃ってこちらを見ながら嫌味たらしく含み笑う様に、“あたし”は拳を握りしめるけど中の“子”は更に俯いてしまう。


 「亜種は役立たずなのに貴種に愛でられたがる。顔が良ければまだいいが、それも陰気だと目も当てられないよな」


 キ、モ、い。


 この“子”は陰気じゃないの、控え目なのよ。

 こんな暴力的な自意識を振りかざす家族の中で、よくぞと思うほど人に気も遣える。掃き溜めに鶴とはこのこと。


 「お前が直接出向く必要があるか? 嫁に貰ってやると言っているのに、あちらは無視のし通しだ。無礼にも程がある」

 「父上、あちらは女系国家。男の怖さを知らないのですよ。ですから、求婚者ぼくが直接出向いて分からせてやらねば。家庭の主導権は最初が肝心ですから」


 ……どこを突っ込めばいいやら。これを芝居でもなく地でやってるんだからホント呆れる。どうすればこんな頭おかしい家族が出来上がるのか。


 「とにかくすぐに出発するから、さっさと準備を進めるんだ。今回こそは失敗するなよ?」

 「…………はい、大兄様おおにいさま


 とりあえずしおらしく頷いておく。

 “あたし”は言いなりになりたくなくても、“この子”の立場があるから。




 “憑依”なんて小説やマンガの中の世界だけだと思っていた。実際自分の身に起こってみると身体の主導権もあるけど、元の持ち主の記憶も共有している。

 創作フィクションでは元の持ち主はどこに行ったのか存在すら跡形もなく忘れ去られてるっていうのに、“あたし”はどうやら元の持ち主と同じ身体に共存しているらしい。そりゃそうか、“憑依”だもんね。

 コンプレックスの元が近くにいれば、持ち主の意識に反応して体が勝手に萎縮する。記憶があるから言葉も通じるし、本人に成りすますのは難しくないけど本能の反応は隠せない。


 でも憑依人格の“あたし”が受け入れ難いことは当然ある。

 それがこの家族。

 根拠のない自信に満ち溢れたこの家族の中で、この小さくか弱い存在の“この子”がいかに恐怖し萎縮して生きてきたか。その原因がこの家族なら“あたし”が何かの役に立てる。

 そう考えてこの境遇を受け入れているけれど。

 中身が妹じゃない正体不明の誰かだとバレたら、何されるかわかったものじゃないから“あたし”はとりあえず黙って“この子”のフリをしている。

 “この子”の立ち位置が少しでも良くなるように。突然自分の体に入り込んだ他人を、拒否することなく受け入れた優しい“この子”の為にも。



 そうして“あたし”は考えもしなかった陰謀渦巻く世界に飛び込んでしまったのだ。





本日もう一話更新しています。

よろしければ続きもどうぞ。

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