春浅く飛び立つ鳥は
二章完結後の日本での話。
兄も少し出ます。
誘ってみた。
と明かしたら、幼馴染の無二の親友たちはひっくり返った。
一人は爆笑して。
一人はびっくり仰天して。
腹を抱えて爆笑する美鈴の笑い声を背景に、貴一が頭痛を抑えるように頭を抱えながら確認して来る。
「…………っ何で!?」
「え……、何でって………」
訊かれても困る。
あの時は色々必死だったし、考えが一つにまとまらないまま動いていた。
ただ確実なのは、ひとつだけ。
「………大好きだったから?」
ちゃんと考えて言ったつもりなのに、貴一は脱力するように肩を落とした。
替わりにまだ笑いを収めきれない美鈴が、目の端の涙を拭いながら身を起こす。
「…っ、っっ可笑しすぎる、アンタ……っ!! よくぞあのスカした男にそんな事やらかしたね……っ、どうだったの首尾は!?」
「……いや待て、海夜の事だから誘うって買い物とか、そういう類の事言ってる可能性もあるだろ」
貴一が慎重になるのを、ううん、と首を振って否定しておく。
「寝室すぐそこだったから」
「お前バカなの!? 知ってたけどバカなのか、やっぱ!?」
食い気味で怒られて、やっぱり美鈴にまた爆笑されてちょっとバツは悪い。
でも嘘は言っていない。本当の事。
貴一の嘆くような怒りの声に、肩を竦めて自室の床に正座する。
「そんなに怒らないで。武尊本人にも叱られたし、反省してるわ」
「え? アイツ誘いに乗らなかったの?」
笑いをピタリと収めて、美鈴は向き合うように目の前に座り込んだ。
疑うように訊いてくるけれど、若干目は笑い気味だ。
「………乗らなかったというか………」
どう考えるべきなのか、判然としない言葉が引っかかっている。
一瞬受け入れたのかと思ったのに、彼は海夜の手をゆるりと労った。……労った、のだと思う。
「……わたしがおかしな事を言っていると思ったみたい。あの時、わたしまだ人に触れなかったのに、……そうすべきだと思っちゃって」
「………やっぱ滝本殴るかな」
拳を固めた美鈴と貴一の様子に、余計な事を言ったと慌てる。
「滝本くんにはちゃんと謝って貰って済んだ話よ」
謝罪を受け入れたとはいえ、あの出来事自体はなるべく思い出したくない。
眉間に力を入れれば、二人とも顔を見合わせてため息をついた。
「アイツもう帰って来てんでしょ? マジで告訴しないの? 性犯罪って、被害者が周知嫌がるから表沙汰にならない事多いらしいけど、陰険で凶悪だよ?」
「本人が反省して謝罪してくれてるし、これ以上大ごとにする必要ないと思うの。今大変みたいだし」
行方不明になっていた数日間の騒ぎで、結局第一志望の大学の入学手続きに間に合わず、推薦で合格していた第二志望の大学への入学が決まったらしい。
その他に騒がせた関係各所への謝罪回りやらで、連絡を取る事も難しい状態だと聞くと、それだけでも申し訳なく思う。
「アンタが気ぃ遣う必要どこにあんの? あたしなら容赦なく社会的制裁喰らわすけど」
「……でもお兄ちゃんの話だと、この先社会的制裁どころじゃない目に遭いそうだし……」
武尊の従者なんて、一体どんな目に遭わされるのか。
武尊本人も虐めると公言して憚らないし。
「あぁ、武尊の奴隷だっけ?」
スマートフォンを見ながら軽く確認した貴一に、ちがう、と抗議の声を上げる。
流石に武尊でも奴隷扱いは……しないと思いたい。
「ちょっとの判断ミスで一生が決まるとか、詰めが甘い証拠だって。毒だか薬だか抑えて貰ってんだから、奴隷でも従うしかないじゃん」
「従者だってば。酷い事しないように、わたしからもお願いしてるけど」
「武尊がそれ聞き入れる? 滝本にナイフ突き立てようとしたって和兄から聞いたけど」
「え」
それは聞いてない。
何それ。
心の底から困惑して何度も瞬きを繰り返す。
「アンタ本人が済んだ事にしても、周りは納得してないって事。特に武尊は自分がいない所で起こった事件だから、余計に頭にきたんじゃないの?」
「えぇ……?」
美鈴の言葉に戸惑う。
だって一連の出来事を把握した後であっても武尊には特に変わった様子もなかったし、滝本を受け入れる姿勢はないけれど、でも来訪者として庇護するつもりのようだった。怒ってたなら、そんな親切をするようには見えないのに。
……でもそういえば、近づけさせる気はない的な事は言ってたかも……。
気持ち自体はちゃんと確認してあるから今は疑いもないけれど、過去を振り返れば確かに端々に、想われていたのだと発覚する言動は彼の中にあった。
例えば何を着ても美しいと言ってくれた事、願いは何でも叶えてやると言われた事。
……あと、自分の前で他の男性の話をするなとか言ってたような……。
「そこ。無言でデレてんな」
びしりと貴一に指摘されて、口元がニヤけていたと自覚する。
慌てて口角を引き締めてもう一度正座し直した。
「そんで、結局何であいつ誘いに乗らなかったの? 躊躇うような奴じゃないでしょ」
………一体この二人の中で海夜の婚約者はどんなイメージなのか。
恋愛初心者の海夜に比べて、この幼馴染たちは異性との交遊を積極的に深めていた。付き合いの長さからも一番信用している二人。
なのに、どことなく面白がっている感は拭えない。
「……体調の事もあったけど、…………一番は全く気乗りしてない事のような……」
「それ、その場の雰囲気の事言ってんの? それともアイツの信念的な事言ってんの?」
鋭い指摘に思わずうっと詰まる。
もじもじしていたのがバレていた。流石の付き合いの長さ。
「海夜が自分からこういう事相談するってよっぽどだしなあ。近場の人間に相談できないような事言われたんだろ? お前の周り、武尊の息のかかった人間ばっかりらしいじゃん」
「……皇宮って少し複雑な場所らしいから。でも別に相談できないわけじゃないの、……個人的過ぎて悩ましいだけ」
「あたしたちにしか相談できない事があるのが問題。何言われた?」
うう、自分から持ち出した事なのにやっぱり話しづらい。武尊と直接関わる事のない二人とはいえ、言ってはいけない秘密を暴露しているような後ろめたさもある。
でも二人が引っ越す日までもう時間もあまりない。三人で会える貴重な機会を無駄にできない。
「………………わたしに婚前交渉求めないって」
覚悟を決めて、でも躊躇いがちに一息に悩みを明かすと、二人から沈黙が返された。
言った直後に後悔して顔を覆ったのもあるけれど、二人のいつもの反応と違い答えがないのが気にかかる。
恐る恐る顔を上げると、二人とも微妙な表情で黙り込んでいた。
「………それホントに武尊が言ったの?」
「………わたしが武尊以外の誰とこんな会話するの……」
美鈴の心底疑うような声に焦りながら返すと、うーん、と唸りながら美鈴は首を捻った。
「婚約までしといて、……何なん?」
質問するのは貴一に向けてだった。
「オレに訊くなよ」
「男の考えは男にしかわかんないし」
「一括りは暴力だぞ」
「広義の男を指します。個々人の事情は差し引いて一般的に考えろって。こんな事言う思惑は?」
「本人に訊けよ、頼むから」
「勇気振り絞った幼馴染が拒否られたのに、アドバイスも出来ないんか」
逃げ腰の貴一を胸倉でも掴みそうな勢いで追い詰める美鈴に、待って待ってといつもの調子で嗜めようとすると、貴一はヤケクソのように叫んだ。
「婚前って言ってんだから、結婚後はその限りじゃねえって事だろっ! そこに意味考えんなよっ!!」
「それ消去法? 言い方の問題じゃん。本心か怪しいし、役にたたねぇな」
「アイツの本心なんかオレが知るかぁっ!」
……結婚後はその限りじゃない……?
婚前だから……?
「……わたしに覚悟があっても、そういう問題じゃないって事?」
口論を続けている二人をよそに呟くと、ピタリと静まり揃ってこちらを見る。
そうして貴一は再び考える素振りで口を開いた。
「覚悟される方が困るって事もあんじゃね?」
「何それどういう意味?」
貴一の答えに美鈴が鋭く反応するが、海夜も全く同じ事を思ったので思わず鋭く貴一に視線を送る。
「だって結婚まで何もしないって決めてんのに、誘われるとか拷問かと」
「それ決めてる理由もわかんないのに、同情できない。チキンじゃん、普通に考えて」
「お前、口悪すぎ。海夜が大事にされてんだから喜べよ」
「はぁ?」
間抜けな声を上げた美鈴と海夜は、顔を見合わせて首を傾げた。
「婚前交渉求めない、けど大事? 何なの、その心は?」
胡座をかいている貴一は、どことなく座り心地悪そうにしながらため息をついた。
「……大事だから手が出せない、じゃねえの」
すげぇ恥ずかしい、少女マンガか、と呟きながら頭を掻いている。
聞かされたこちらは唖然とするしかない。美鈴もポカンと目を丸くしている。
結婚も決まっているのに、そんな事あるのだろうか。
だって、以前はそんな素振りもなく不埒な行為があった気がする。
海夜に知識が無さすぎて無駄に詰ってしまったけれど、結婚の為にちゃんと知識も身につけた。常識としての性の知識とは別に、今は何がどう起こるのかも(何となく)把握している。
「出せない? 出さないじゃなくて?」
「おんなじだろ」
「どこがだよ。一文字違いで大違いだわ」
「本人に訊けよ、オレだって知らねぇって」
「推測した本人に訊いてる」
「オレもうやだ……」
疲れたように脱力する貴一の胸倉を揺すりながら、美鈴は尚も質問を重ねている。
けれど海夜は貴一の言葉に混乱するような納得するような、おかしな気持ちになった。
武尊は触れなくても困らないと言っていた。それは逆をいえば、触れたら困るという事なのか。
その理由が貴一の言う通りなら、日本に帰るまでのあの穏やかな時間にも納得がいく。
海夜が不安を感じない程度に距離を取りながらも、きちんと気持ちを示してくれていた。
彼なりの配慮だとしたらかなり気を遣われているし、とんでもなく甘やかされているとも思う。
「アイツなりにめっちゃ戸惑ってんだと思うぞ、オレは」
「何に戸惑うんだよ。こんな気立てのいい嫁貰っといて躊躇うとか、謝れ」
「お前ホントさぁ……」
「戸惑うって、どうしてだと思うの、きいちゃん」
据わった目で毒づく美鈴の口の悪さに呆れ、貴一が更に脱力するのがわかって海夜は慌てて続きを促した。
「だってさ、何度も諦めた子、改めて嫁にできるとか奇跡じゃん。しかも結構絶望的な状況からの今ココって。まだ実感湧かないのかもな。可哀想な奴」
実感が湧かない? 現実感がないという事だろうか。
「幻みたいなモンだと感じてんなら、触るのも戸惑ってんじゃね、と思っただけ」
「……………そう、なの?」
「知らね。推測。本人に訊け」
貴一の言葉に、海夜は素直に感嘆した。
武尊のあの“触れなくても困らない”には、そんな意味もあったのかもしれない。
「ありがとう、きいちゃん。悪い方向に考える事は無くなりそう」
「そっか。自分が悪いとか考えそうだしな、お前。大抵そういうのって誤解が多いし、ちゃんと話し合えよ?」
「うん。もし武尊がまだ実感湧かないなら、ちゃんと生きてるのよってわかって貰う為に抱きついてみるわ」
「やめてやれよ」
気の毒そうにから笑う横で、美鈴はまだ少し不満そうに眉間に皺を寄せている。
納得がいっていないのか、ぷーいと顎を逸らせて「……海夜を嫁にやるってだけでムカつくのに」と親のような事を口走る。
「お前それ和兄とか和海さんの心境な。そろそろやめろよ」
「美鈴、わたしには向こうの方が合うって言ってたのに」
「海夜が生き易い場所が一番だって思っただけだよ」
そうして顎を逸らせたまま立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。
「……ご機嫌ななめ?」
「拗ねてんだろ、放っとけ。まだお前の保護者気取りだからな、あいつ」
「わたしが頼りないから……」
個人的な悩み一つ自分で答えも出せず、呆れられるのは当然だ。美鈴は上に姉がいる末っ子なのに、常に海夜の姉のように頼れる存在だった。
美鈴が消えた自室のドアを気遣わしげに見つめると、貴一はちょっと顎を掻きながら同じようにドアを眺めた。
「……まあ、長い付き合いだからフォローしとくと、去年の秋にお前がいなくなってもう戻らないって聞いて、一番泣いたのアイツだから」
え、と驚いて貴一を見返すと、彼は仕方なさそうに苦笑している。
「お前ん家の事情知ってるし、覚悟しててもいきなり消えればそれなりにショックも受けるんだよな。美鈴はああいう性格だから、オレら以外あんま仲いい奴もいないし、家族がいなくなったみたいに毎日泣いてたよ」
……初耳だった。
兄も両親も、そんな事は一言も言っていなかった。
海夜が不安と混乱に陥らないように、注意深く見守ってくれているのは感じていたけれど、周囲の人々が海夜がいなくなった事に関してどう感じていたかまで気づけなかった。
「オレらもうすぐバラバラじゃん? らしくもなく感傷的なのかもな、美鈴も」
その言葉にハッとなり立ち上がる。
そうだ。
ずっと一緒に過ごしてきた三人は、この春にそれぞれ過ごす場所へと向かう。
温かで安全だった場所を後にして。
それが巣立ちというものだから。
でも改めてそれを確認する必要はないくらい、美鈴は今寂しいと感じているのかもしれない。
「……美鈴!」
ドアを開けてそっと廊下を覗くと、突き当たりの大きな窓の前に立って美鈴は外を眺めていた。
ちらっとこちらを振り返り、また元のように窓の外を眺める美鈴の背中に勢いよく抱きつく。
「美鈴、ごめんね。わたしいつも自分の事ばかりで」
「あたしだって自分の事が最優先だよ」
答えた美鈴の声はちょっと涙の気配のある鼻声だった。
「嘘ばっかり。美鈴はいつもわたしやきいちゃんに、どうしたいか聞いてくれたじゃない」
「それはあんたたちがそうだったから。ホントのあたしなんて、エゴの塊だよ。小っちゃい頃からの恋実らせたあんたを、心から祝福してやれない。とうとうあっちに行っちゃうんだって、残念で寂しいなんてさ、あんたの親友として情けない」
完全に涙声になった美鈴の肩越しに透明な雫が落ちるのが見えて、海夜の涙腺も簡単に決壊した。
人に弱味を見せる事を嫌う美鈴が、本音を語って泣くなんて小さな子供の時以来だ。
「ずっと行きっぱなしじゃないわ、お母さんと約束してるからちゃんと里帰りもする」
「でもあたし達みたいに長期休暇毎に帰るわけじゃないでしょ。あんたの事だから、あっちに飛ばされて帰れない人達と同じように過ごすんでしょ。そんで数年に一回とか、下手したら十年経っても帰らないとかそんな事になるんでしょ」
喚くように泣きながら捲し立てる美鈴に、同じように泣きながら正面に回り込んで抱きつき直す。
「そんなに薄情なつもりないわ。帰れる時はちゃんと帰る」
「でも武尊が引き止めたら帰らないんでしょ。ほんとムカつく。アイツ何様」
「そうね、武尊が全部悪いんだわ」
二人してわんわん泣きながら、段々訳がわからなくなって来た。
「……うわ、何だこの惨状。見なかった事にしていい?」
そこに水を差すように割り込んだのは兄の声だ。スマートフォンを覗きながら階段を上ってきた所で、ここに出くわしたらしい。
口元を引き攣らせて引き返そうとする兄に、美鈴はヤケっぱちのように叫んだ。
「和兄がしっかりしてれば海夜だってちゃんと帰ってくるのにっ!! 無理矢理でも連れ帰ってこいよ!!」
「突然何言ってんだ」
理不尽な言いがかりに顔を顰めながらも、兄は部屋から顔を出して様子を窺っている貴一を見た。大泣きしている幼馴染二人に若干引き気味で、貴一はここに至るまでの経緯を話しているが、ぐすぐすと泣きじゃくっている耳にはよく聞こえてこない。
「あー、なるほど。引っ越しブルーってやつか。美鈴も人間だったんだな」
「正真正銘違う人類がおかしな事言うな」
抱き合ったまま座り込んで鼻を啜る自分たちのそばにしゃがみ、兄は可笑しそうに笑った。
「あんま心配すんな。母さんとの約束破らせんなって言ってあるから、ちゃんと帰らせんだろ。アイツうちの母親に弱いからな」
それは確かにそうだ。
同じ黄花・サディルの貴種であり、年上女性で母方の従姉妹でもある海夜たちの母、和海には武尊は常に敬意と親しみを持って接していた。
呼び捨てではなく敬称をつけて呼んでいるのも、考えてみれば海夜たちの母にだけだ。
母の名前を出してあるなら、そこは心配要らないだろう。後は海夜の心がけ次第で……。
そう思って目の端に残った涙を指先で払った時だった。
兄の口から信じられない言葉が飛び出したのだ。
「だから絶対妊娠させんなって釘差してあるし、一年一回は里帰りさせるって」
「………………………は?」
あまりの荒唐無稽さに理解が追いつかず、間が空いてしまった。
けれど理解した途端一気に色々な疑問が解消され、同時にすんっと冷静さが頭上に降りた。
貴一と美鈴も瞬時に悟り、ゆっくり立ち上がった海夜から距離を取るようにそそくさと壁際へ逃げる。
「………何の話」
真顔で確認するように呟くと、はっと失言に気づいたらしい兄はちょっと肩を引きながら「怒る前に聞け」と説得を試みようとしてくる。
「怒ってない」
「怒ってないなら受肉させんな? 誰が解くと思ってんの? あと真顔怖え」
「お兄ちゃん抓ってくれる子呼んだら来たんだもの」
「怒ってんじゃねえか」
自身にわらわらと集り出す単衣の着物姿の小人たちを、指で弾いて解放しながら兄は抗議の声を上げる。
“婚前交渉は求めない”
意味がわからない、と正直思った武尊の言葉には、推測しなくても揺るがない理由があったのだ。
それがここにいる、でっかい出歯亀だった。
「うちの母親も武尊の母親も十代で子持ちだぞっ? お前にそれやらせんなってアイツに忠告できんの、オレしかいないだろうがっ」
「大きなお世話っ!」
確かに兄は長い間海夜の保護者だった。それは感謝している。
けれど妹の婚約者相手に、そんなお節介以外何者でもない事をやらかしていたとは思わないじゃないか。
「海夜が本気で怒るの久々見た。ここんちの特殊な兄妹喧嘩も暫く見られないなー」
「てか、デリカシーないと顔良くても引くわ」
抓ってやろうと使命感に燃える小人たちをマシンガンのように繰り出す海夜と、おらあぁっと叫びながらひとつひとつ弾いて開放していく兄を眺めながら、幼馴染たちが暢気にぼやいている。
さっきまであんなに泣きじゃくっていた美鈴の涙もすっかり引っ込んだのを見て、兄に感謝の気持ちも湧いたけれど、今は怒りの方が大きくてそれを伝える機会はずっとずっと後になりそうだ。
受肉、解放をこれでもかと繰り広げた兄妹二人が、その日母の和海からたっぷりしっかりにこやかに、底冷えする笑顔で説教されたのは言うまでもなかった。
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