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【三章連載中!】花びら姫の恋  作者: 師走 瑠璃
【第二章】不機嫌皇子の溺愛
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第二十一話 貴種でも亜種でも

この物語に於ける悪役令嬢登場回。

薔珠との立場の違いを明確にしたかったので書いておきました。




 「––––––承知しました。本日この時をもって任務完了と致します。速やかに帰館し、お役目に戻ります」


 左耳に仕込んだ小型スピーカーからの声に、薔珠はインカムマイクを下げて答えると、すぐ傍に居た人物が豪奢なガウンの裾を上げてソファに座る足を組み直した。


 「あら、わたくしの疑いは晴れたのかしら。キアリズ殿下も大変ね。あの子が来る度に、護衛に苦心しなければならないなんて。ねえ? 薔珠そうじゅ

 「“あの子”ではなく、“皇女殿下”とお呼び下さい。あの方は既に正式な皇家の方です。わたし達臣下が馴々しくして良い方ではありません」


 振り向いて軽く睨むと、長姉の那珠なじゅはふわりと読めない笑顔を見せた。

 長姉の監視任務へ着けと、キアリズ皇子から指令が下ったのは今朝だった。

 複数の事件が同時進行している。疑わしき人物を監視しておきたいと、皇子が警戒した一人が自分の姉だ。受肉精霊が姫の護衛を引き受けている為、降りた任務だった。

 姫の今の心身の状態を思えば、人間である自分が傍にいるよりいいのかもしれないと、この任務を引き受けた。


 精霊に馴染み深い姫は、寝室まで受肉精霊が一緒にいても全く気にならないという。

 事実、湖の館に移ってからの姫は、目に見えて安定し回復して来ている。精霊が悪戯に触れても、指や髪にじゃれついても、楽しそうに笑うだけで好きにさせている様子に心底安堵した。

 逆に精霊を厭うのがこの長姉だ。

 人間側の空気も読まず干渉してくるのが鬱陶しいらしい。だから、精霊除けが施された場所以外にはあまり外出もしたがらない。

 その分人を使うことに長けているこの人は、自分の手を動かすことなく犯罪紛いの行為を行う。

 瀟洒なティーカップをしどけなく持ち上げ、姉は自分が強調した“正式な皇家の方”という言葉に柔らかく微笑んだ。 


 「海夜さまは、こちらに留まることをお決めになられたのね。喜ばしいこと」

 「大姉上の肚内はらうちがどうあれ、あの方のお立場は明確です。どうか、これ以上の皇家へのご干渉はお控え下さい」

 「まあ、何のこと? 海夜さまのお立場とわたくしの何が緩衝するの?」

 「………貴女が昨年秋に、姫君へなさったことは報告書にて確認致しました。明言は避けられていましたが被疑者女とは、……貴女のことでしょう?」


 姫が皇宮へ招致された翌日の晩餐会にて、毒物とも呼べる薬品を盛られたことは、ごく一部の者以外には秘せられた。

 姫自身にも何であったのか伏せられたというそれは、貴種には深酒の悪酔いを、亜種には死を招く毒物である。

 皮肉にも貴種である証明になったと、皇子が零した声も隻眼の瞳も、静かではあったが隠しきれない怒りと後悔が窺えた。

 貴種女性を巡る思惑は想像以上に複雑で、そして厳しい。皇子と姫の兄がどれだけ危惧し、二重三重に護衛の網を張っても、それでも尚くぐり抜けようとする輩は現れる。


 この姉のように。


 「貴女が今見逃されているのは、父と陛下のお陰です。貴女をこよなく愛され、可愛がられ、憐れまれているお二人のお心を、どうかお汲み下さい」

 「お父さまは、私の好きなように生きろと仰るの。陛下も同じよ? だから好きなように過ごしているだけ。咎められることをしたかしら?」

 「皇家へ弓引く者と、通じるのをおやめ頂きたい」

 

 昨年秋の謀反クーデター

 首謀者であったルース・平群へぐりは次姉、璃珠りじゅの縁談相手であったが、那珠の長年の恋人の一人でもあった。順当にいけば那珠の縁談となる筈なのに、手を挙げたのは璃珠で、両親が首を傾げたのは言うまでもない。

 兎も角、反目しあっていた平群と、ようやく和解が成立するかと期待された縁談でもあったのに、そこには深い怨恨の根が蔓延はびこり、取り返しのつかない程になっていた。捕縛されたのは璃珠一人であったが、裏に別の人物がいたのは明白で、なぜ璃珠一人が犠牲になるのかと、母と弟の真道まどうの嘆きは深い。

 そして、この姉は未だにその元恋人と手を切ってはいないようなのだ。


 「平群の痕跡はあちこちに残されています。姫君が界渡りした直後から、目まぐるしい程の変化が起こっている。平群の残党は貴女を慕うでしょう?」

 「……? 難しいお話はわからないわ。軍人になると、物事を小難しく考えてしまうのかしら? 私は幸せに暮らしたいだけよ?」

 「貴女の幸せは殿下の幸せに繋がりません」

 「何故そんな悲しいことを言うの? 私の幸せを、私が掴んではいけないの?」

 「––––––姉上、わたしはこれ以上、貴女に失望したくないのです」


 心に秘めようと思っていたことを、我慢ならずひと息に言い放つ。

 すると姉は、絶句するように甘やかな目元を何度も瞬かせ、肉厚で蠱惑的な赤い唇をぽかりと開けた。


 「………皆勝手ね。貴種の子だからと勝手な期待を寄せて、何もできない私に失望して去っていくの。人間扱いして下さったのは、キアリズ殿下だけよ」

 

 その話は何度もこの姉から聞かされた。

 皇子自身は、人間扱いとは何をもって言うのかと、不愉快そうにしていたが。


 「姉上。私は貴種ちちの子ですが、亜種ははの子としての自分に誇りを持っております」

 「……それは薔珠が薔珠だからよ。良かったわね? 貴種の娘でありながら、亜種に生まれて」


 痛烈な皮肉だ。

 歪んだ昏い笑みを見せた姉は、勝ち誇ったような目をしていた。

 

 “堂々としなさい”


 両親はそう諭してくれた、自分の性別。

 自分の外見の性別と、心の無性別は伴わない。

 思春期の始まりにはその矛盾と、貴種であったら必ず求められたであろう、女性としての役割を、亜種であるが故に咎められないその罪悪感に苦しめられた。今だって迷う。けれどそれでも、様々な立場の人々を知れば、自分の中の矛盾にも折り合いをつけていける。

 だからこそ、薔珠は自分の殻に閉じこもり、傷ついた少女のままで時を止めたこの長姉が気の毒でもあった。

 

 「姉上、貴女の罪悪感は周囲が生み出したものです。囚われることのなきよう」

 「私は私。周囲など関係なくてよ? 両親を愛しているわ。勿論、弟妹達も。皇家の方々も。海夜さまも。……キアリズ殿下も」


 最後に加えられた人物の名に、姉ははにかむように薔薇色に頬を染める。

 その顔は少女のように無垢で、聖女のように崇高で、侵すべからざる聖域の名を口にする巫女のようでもあった。

 ……知っている。

 姉が、あの従兄弟に本気で恋をしているのだと。


 “皇家に残るのが目的、皇妃として権力を掌握したがっている”


 貴族の中で囁かれる姉の目に余る行動。

 それが実は異性として惚れ抜いている男性への恋愛行動なのだと、知っているのは善道公爵家の家族と、その恋情を向けられている皇子本人のみだ。

 知った上で、皇子は全身全霊でこの姉を否定している。

 姉の恋は成就しない。

 それでも、次姉の璃珠は姉に同情し全力で守ろうとする。兄は呆れ返り、そんな姉達を見捨てた。

 自分も同様だ。兄を責めることはできない。

 与えられた任務の中での出逢いが、姉達との訣別を選択させた。

 皇家だの何だのと複雑に考えること自体が馬鹿らしいのだと、そんな風に思わせる存在が自分の前に現れるとは、これまでの人生では考えたこともない。

 彼女自身が何よりも、皇家そのものを思い起こさせる存在なのに。

 皇子曰くの“暢気な笑顔”を何の翳りもなく見られるのなら、その環境そのものを守ることが自分の役目だ。

 

 「姉上、私のお役目は承知でしょう? あの方に害なすならば、何者であれ容赦致しません。それがキアリズ殿下の御為おんためにもなるのだとご理解下さい」

 「私は殿下の為にはならないということ? けれど、我が家の後ろ盾はあの方に必要でしょう? 私がそれをお支えすると申し上げているの」

 「父上のお役目は、姫君お一人がおられれば、本来何よりも安泰なのです。それを何もおわかりでない。貴女も貴族も、国民も。今の生活が亜種だけで成り立つと、本気でお思いですか?」


 皇子に御大将の位を譲った後の父は、北に一大勢力を築く貴種の一団を統括している。マルチエネルギーとなる貴光石の管理を担う為だ。

 黄花・サディルの直系が、国を統治しなくなって久しいこの国は、エネルギー問題も臭い物に蓋をするように目を逸らし続けている。

 

 「やれば出来るのではなくて? 貴種の子は世界中にいるわ」

 「それが貴種でなければ何の意味もない。貴光石を守る精霊スプリガンは、貴種にのみ貴光石を明け渡すのですから」

 「……貴種、貴種、貴種。どこまでも、また貴種なのね」


 うんざりするように、姉は桃色の細い指先を唇に当て嘆息する。


 「あの方が貴種であることを必要とすべきは、本来国民です、この国です。私も殿下もあの方にそれを求めない。足枷でしかないのですから。亜種でも貴種でも関係ないと、殿下は仰られています」

 「やめて。耳障りな」


 貴種であるから存在価値があるのだと勘違いされては困る。

 はっきり言葉にすると、姉は不快そうに顔を顰めた。耳を塞ぎ、いやいやと首を振る様子に、ここまでかと諦めのため息が出る。


 「姉上。私はお役目に戻ります。どうぞ、私が申し上げたことを、よくお考え下さい」

 「………裏切るの、薔珠」

 「裏切ったのは貴女です。容疑は晴れておりませんよ?」

 「私は殿下の為に動いているのよ」

 「独断独善。殿下はそのようなことを望まれない」

 「貴女に何がわかるの」

 「何も。ですが、姫君への殿下の純粋な気持ちはわかります。それだけで十分」

 

 切り上げて踵を返した自分に、姉は不穏な目を向けた。

 

 「……殿下とあの子では、血が近すぎてよ? いずれ国民も気づくでしょう。五十三年前に起こった悲劇は、何が原因だったのか」

 「貴女とて、殿下とは従兄弟。姫君よりよほど近い」


 黄花・サディルに近親婚は禁忌。

 何百年も昔に定められたタブー。

 姫と皇子は母方に血縁を持つ、またいとこの間柄だ。普通ならば縁を結ぶのに何の障害にもならないその血縁は、知る者が知れば眉を顰めるのかもしれない。

 しかし、皇子に今更それを言った所で聞く耳などないだろう。


 「………私は、殿下が望みうる全てを持った、……亜種の、女なのよ」


 姉はこちらを見ずにポツリと言った。

 自分に言い聞かせるように、一縷に縋るように。


 「殿下が望まれるのは、姫君ただお一人です。亜種も貴種もない」


 判決を言い渡すように、事実のみを告げる。姉の目は、こちらを一切見なかった。

 返事を待たずに扉を閉めて嘆息した。背を預けた扉の内側は静かで、姉が何を思ったのか考えるのはやめようと思う。


 薔珠は皇子が貴種であれ亜種であれ、誰かを迎えることはないと知っていた。

 彼の中にあるのは、幼い頃から一人だけだ。

 それが現実に叶うとは、考えていなかった様子の彼が、何を吹き込まれても今更姫の手を離すとは思えない。唆す環境であるならば、皇子は国を捨てるだろう。

 それを把握している國皇が取った策は、姫を得た者に皇権を譲るというものだった。内心悪態をついただろう皇子は、姫を誰かに委ねることなどあり得ないと、大人しく国の贄となる道を選んだのだ。

 

 ずっと全身で否定し拒んでいた、皇太子の指名。

 それを受け入れてもいいと思う程の存在に、あの姉が敵うとは思えない。

 早く目を覚まし、これまでの悪行を懺悔して姉なりの幸せを見つけてほしい。

 そう願うことが、姉の恋に協力できなかった不出来な妹なりの孝行だとため息をついて、姫の元へ戻る足取りを急がせた。



 ※



 時は少し遡り、外はまだ午後遅い光を差す時間帯だった。

 不機嫌な空気を纏わり付かせた虎の主人が、執務机で書類に署名をしている。見た目はいつもの無表情だが、書類の精査に手を止める度に指が不機嫌に机を小突くのは、内心苛立っている証拠だった。


 一旦の中断があった会議は、重要な報告が数件上がり無事終わった。

 ……無事、と言っていいのか、参加した皆がそれぞれ普段以上に鋭い矢を刺され、持ち寄りの案件を突っ返された。

 原因はわかっていたが、口にすることを控えた大人の官達に感謝である。原因を作ってしまったと、肩を落としていた検非違使隊長は気の毒だったが。

 その後すぐに皇女が湖に落ちたと知らせが入り、様子を見に行った主人は、皇女に真っ青な顔色で「寄らないで」と言葉を投げつけられた上、ずぶ濡れのまま走って逃げられた。

 

 それからずっとこうである。


 皇女のあの態度は執務室で主人から受けた待遇が原因か。だったら謝罪を促すべきなのだろうが、アレに口を出すならば、馬に蹴られて死ぬ覚悟が必要だ。

 不機嫌な主人に慣れている虎でも、こういう場合主人になんと声を掛けるべきか適当な言葉が見当たらず、結果放置している図が出来上がった。

 その上、四道伯からの指摘もある。

 皇女の盛大な勘違いについてだ。

 「何であんな思い違いをなさってるんです? 大変由々しき事態かと思いますが」と首を捻りながらも若干面白がっている風の四道伯に、虎は何も返せなかった。

 おそらく主人の言葉足らずが原因だ。


 しかし皇女がとんでもなく明後日な思考の持ち主で、且つとんでもない鈍感で己に関して無知であることも関係しているだろう。いや、むしろそれが一番足を引っ張っているかもしれない。

 ……よくこの二人で話がまとまったな、といっそ感心したくなる程もどかしい現状に、虎は思わず、誰か助けて! と叫びたくなってしまうのだ。

 そんな(内心の)大きな訴えに応えるように、ペンが走る音しか響かない静かな執務室に突如それは訪れた。


 「“お兄ちゃん、あっち行って”って、言われるお兄ちゃんの心境考えたことあるか、お前。どんだけ心配したと思ってんの? 何やらかしてんの? お前が原因以外考えらんないんだけど、異論ある?」

 「異論だらけだが。先ずは扉から入れ」

 「妹のプライバシー考えて扉から入ろうとしたら門前払い食らったんだけど。誰のせいなんコレ?」


 主人の右肩に肘をのしりと乗せて、突如その場に光のように現れたのは、皇女の兄だった。

 気配に敏い主人は気づいていたのだろう。

 違和感なく彼を受け入れ、当然のように文句に答えているが、こちらはそうはいかない。

 突然現れた姿に驚きで声が上がりそうになり、何とか堪えた。だが動揺はのけ反った身体に表れて、皇女の兄は気づいたように謝罪する。


 「虎さん居たんだ。すんません、驚かせて」

 

 いえいえ、と答えはするが、驚いたのは事実だ。


 「お久しぶりです。お変わりなさそうで何より」

 「うん。コイツには何度か会ってるけど、虎さんは久しぶりっすね、そういえば」


 そう言って、青混じりの琥珀の瞳を嫌そうに、書類に目を落としたままの主人に向ける。

 昨年秋以来、皇女の兄は何度か主人に会いに来ている。それも皇女には黙ったままで。彼女の為の何か、を二人で相談しているらしいが、虎にはまだ内容は明かされていない。


 「オレは精霊の解放と海夜のお迎えと、もう一つ仕事しに来ただけなんだ。さっさと謝って、あの岩戸を開けさせろ」

 

 (いわと?

 何ですか、それは)


 疑問に思うこちらには構わず、主人は書類から目を上げて漸く兄を見た。


 「仕事。天降あもりの代理か」

 「巻き込んだ二人、どっちか連れて帰っていんだとさ。元々海夜の界渡りに巻き込んでんだから、そうするしかないんだと。予定調和ってやつ。いずれまた必ず渡るのに、意味わかんね」

 「……………」


 言葉の意味を計るように目を眇める主人に、皇女の兄は重ねた。


 「どうせなら二人とも連れ帰らせろっつったら、それはダメだと。親父巻き込んであっちと喧嘩してて遅くなった。絶対存在者とかいう奴らは言葉通じないから」

 「……審神者サニワであってもか」

 「親父は伝令。審神者はオレらかもな」


 窓の外を仰ぐように睨んで空笑からわらいする皇女の兄の横で、執務椅子から立ち上がり、主人も皮肉げに口端だけで笑った。

 

 「で、その二人は? どこに居んの?」


 机上の小モニターを操作する主人を見遣り、皇女の兄は当然の疑問を口にする。


 「一人はここに呼ぶ。もう一人は行方不明だ」

 「オレの努力って、ムダになるように世界回ってるよな?」


 行方不明という話に呆れながら、皇女の兄は大袈裟にため息をついた。


 「居所の目星はついている。裏が取れ次第、検非違使隊が踏み込む予定だったが、和夜がいるなら丁度いい。使い勝手いいな、おまえ」

 「おいコラ、聞き捨てならない言葉があったぞ今」

 「虎、翻訳機の現時点の座標を和夜にやれ。空間移動しているということは、海夜に黄を投げつけられたんだろう? 現状、役立たずだからな、あの鈴」

 「お前らが日本とこっちと連絡取りすぎなんだろ。酷使すりゃ、疲労困憊で寝落ちもするわ」

 

 自分のパンツのポケットを外側から叩きながら、そこに仕舞われただろう皇家の鈴を庇うように兄は呆れている。

 指示通り、座標の情報をメモ書きして渡しながら、虎は首を傾げた。


 「兄君さまに捕物をさせなさるおつもりですか?」

 「いや、無理っしょ。オレ何の権限もないよ?」

 「権限がないからいいんだ。見つけて通報しろ。付近に検非違使隊を待機させておく。来訪者はここへ連れて来い。生き証人だからな」

 「……悪いことはお天道さまが見てるぜ?」

 「おれの悪事じゃない」


 無表情に言い捨て、主人は小モニターから顔を上げ、こちらに指示を出す。


 「近衛隊に検非違使から引き抜いた者がいるだろう。その者を呼べ。内通者の素性を知りたい」

 

 検非違使隊の中に、今回の来訪者の拉致に関わった者がいるという報告は、検非違使隊長から受けたばかりだった。


 「相変わらず、どろっどろの陰謀渦巻いてんな、ここは」


 “内通者”という言葉に呆れながら、行方不明の人物と事の詳細を把握した皇女の兄は微妙な反応を返す。

 仕方がなさそうに嘆息して、主人の指示通りに「連れてくるけど、海夜には言うな」と釘を差して消えた。



お読みいただきありがとうございます♪


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