第十一話 近衛連隊第一小隊
文字数多めです。こめんなさい。
軽やかな足取りで先を歩いていた薄青金の精霊は、階段上まで来るとぴたりとその歩を止めた。そうして、厳かに主人を迎える体で堂々座る。
すらりと背を立たせ、足を揃えて座る仕草はよく訓練された軍用犬のようで、先程までお腹を出して寝ていた存在と同じものとは思えない。
「呆れるな、あいつ」
武尊がぼやく言葉に頷きながら苦笑する。
階段の下は玄関ホールだ。玄関とは思えない程広い空間が広がり、食事会でもできそうな華やかな雰囲気があった。
この屋敷は玄関正面に両袖を持つエントランス階段がまっすぐに伸び、踊り場で左右に分かれる両階段で棟を分ける造りだ。
海夜が案内されたのは、その右の階段側の棟だった。
両階段の反対側も同じ作りの廊下が奥に続いていたから、皇妃達はそちらの棟を使用しているのだろう。
その人達を、これから紹介される。
緊張する、と考えながら歩いていくと、階段上にお行儀よく座った精霊がこちらを見上げてにんまりと笑った。
「?」
(なぁに? 何か企んでる??)
その顔を見返すと、エントランス階段の下から「敬礼!!」と鋭く通る声が響き、大勢が一斉に動いた音が響いた。
「!? ………え??」
揃った大きな音に肩がびっくりして竦む。
階段下に大勢の気配がある。静かな空気だが待ちわびるような期待と、好奇心と興奮を押し込めている沢山の気配。
調子を崩している心は、その気配に一瞬で竦んだ。本調子であったならちょっと緊張する、で済むものが、今は人の視線にとにかく敏感だ。
手袋をした手の平に緊張の嫌な汗が浮かぶのを感じて、その手を胸の前で握り込む。
尻込みしていると、武尊は一歩階段を降りながら言った。
「無理強いはしない。おまえがここに静養に来ているのだと通達はしてある。顔を見せられなくとも不思議には思われない」
でも、海夜の警護の為に集まってくれた人々だ。
「警護対象がどんな者でも、職務に忠実である者のみ集めてある。だが、おまえの性格からして、おまえの為に働く者を無視はできないだろうと思った」
心を読んだように、階下にちらりと視線をやって再びこちらを見る。
「おれが直接集めた精鋭部隊だ。無礼な者はいないだろう。それでも嫌なら、それを払うのがおれの役目だ」
武尊にしてみれば、海夜の為に働く部下達を労いたい意味もあるだろう。けれどそれでも、海夜に無理はさせないと心砕いてくれる。
この朴念仁にここまで気遣わせているのに、海夜が頑張らないわけにはいかない。
腹を決めて大きく息を吸う。ゆっくり吐いて、胸元に握りしめた手を解き顔を上げると、いつもの無表情がそこにあって安心する。
(大丈夫。
安心する人が傍にいるから)
パタパタと尻尾を振る精霊の頭を撫でると、するりと気持ちも落ち着く。
そうして浮かべた笑顔に、無表情の婚約者は頷いた。
「青いの。おまえも来い」
「デ、アロウナ。我ガイテ良カッタデアロ?」
「余計な口には口輪を着けるぞ」
「其方ノ憎マレ口ニモ慣レテキタゾヨ」
軽口を交わしながら階段を降りていく二人に苦笑した。
途中で振り向いた武尊が、海夜のガウンの裾丈を気にして手を差し伸べてくれる。
触れないとわかっているのに。
しかもやっぱり無表情。慣れない人なら不機嫌なのかと勘違いする、わかりにくい優しさ。
それでも、転ばないように気にかけてくれるその不器用な優しさが嬉しくて、そんな彼に少しでも触れたくて、そっと手を伸ばす。
彼の手の平に触れる瞬間、指先が震えた。
ぴり、と静電気にも似た空気が走ってすぐ様引っ込めようとしたその指を、しっかりと武尊の手が捕まえる方が早かった。
まるで当然だというように、武尊の大きな手が指先を包む。
目の前の出来事が信じられなくて、まじまじと重なる手を凝視した。
……触れた。
だめだと諦めかけたのに、武尊の方が諦めずにいてくれた。
(どうしてだろう。お互い手袋越しだから?)
海夜の繊細な白レースの手袋と、武尊の剣士用の、使い込まれて馴染んだ黒革の手袋。
お互いの温もりを感じるには遠くもどかしいそのフィルターが、今の海夜にはちょうどいいのかもしれない。
触れたという事実が嬉しすぎて自然に浮かんだ笑顔に、武尊が微かに笑い返してくれる。
きっと、武尊も内心で驚いたに違いない。
すると、階下から静かなどよめきが起こった。
(え、なに……?)
さざめく驚きの空気が、波紋のように階下の人々の間に広がっていくのが目に映る。
だって、玄関ホールの広間に整然と並んだ人々から、両階段を降りていた海夜達の姿は丸見えだったのだから。
「っっ!!!」
衝撃的過ぎて、肩どころか全身が竦んだ。
顔が熱い。同時に、あっという間に全身に火が駆け巡るような熱さが広がる。
逃げ場がない事に悲鳴が出そうになって、何とかこらえた。
一連の今の出来事を、階下に居た全員に見られた。
たぶん、海夜の目に武尊しか見えていなかったことも、海夜にとって世界は二人きりになって浸っていたことも、しっかりばっちり人々に伝わっている。
(……っぎゃあぁぁあっ!!! 何で、どうしてこう、わたしって締まらないのっっ!? バレた……、今の一瞬でわたしが武尊のこと大好きなだけのちっぽけ女子だって、護衛してくれる方々にバレた……っ!!)
皇女としての威厳だの何だのとごちゃごちゃ考えている暇もないぐらい、一瞬でメッキが剥がれた。
「オウオウ、恋スル乙女ハ大変ダノウ」
ふらふらする足取りで、武尊に導かれるままエントランス階段の下まで辿り着くと、受肉精霊が揶揄うように言う。
混乱して何も考えられないのに、この上更に羞恥を煽るのか。中々根性が悪くて困る。
「解け、礼」
整列した人々に向けて声が掛けられ、再び一斉に礼を解く音がして、気を引き締め直そうと思う。
……あんまりうまくいかないけれど。
だって、エスコートしてくれていた手を、武尊がまだ離してくれない。
これまでもエスコートで手を導かれることは多々あった。でも、こんな風に大勢の視線を集める中で行われたことではないから、気にせずにいられたのだ。今のこの不調状態だから強く感じるのもあるのか。
階段真下の左右に、薔珠と虎を見つけて少し落ち着いた。整列した人々と向かい合うように二人が立つのは、既に立場が明確だからだろうか。
虎は普段から私服だが、薔珠は紺色の護衛官の制服が基本だ。
だが今は見たことのない黄土色の制服に、同色の外套を身につけている。見ると、整列した人々も同じ制服だ。新しい編成だというから、その制服なのかもしれない。
「皆、ご苦労。貴官らに護衛を託す者を紹介しておく。既に認識している者も居るだろうが、黄花・サディル家の貴種に属する皇女だ。名は海夜という」
武尊が静かに紹介する声を聞いて、ハッと我に返る。
(いけない、しっかりしなきゃ)
竦みかける心と、緊張でうるさく鳴る心臓を意識しながら顔を上げる。
離れた位置に整列した一団は、男女問わず興味津々に海夜に注目していた。
皆、若い。後方の人々の顔はよく確認できないが、おそらく二十代から三十代辺りが中心の部隊だろう。
「おまえの近衛連隊の中でも、精鋭として編成してある。百名程の隊だが、連隊の要として常におまえの側に侍る者達だ。あちらに並ぶ者達は、この屋敷での身辺の世話をする」
整列した集団とは別に、白髪交じりの初老の男性を先頭に、年齢様々の女性達が一列に並んでいた。視線を遣ると女性達は慌てて頭を下げる。
それを見るともなしに見て、武尊の手に置いていた指先に力を込めた。
静かに視線を落としてくる武尊の、その手からそっと指先を離し息を整える。そうして目を上げ、一歩を踏み出して皆に向けてゆっくり頭を下げた。
「––––––ご紹介を頂きました、海夜と申します。これから皆さまには並々ならぬお世話を頂戴する身ですが、よろしくお願い申し上げます」
顔を上げて挨拶するが、笑顔は多少引き攣ったと思う。心臓が痛い程鳴っていて、挨拶一つでこんなに緊張するなんて初めてだ。
人の視線がこわい。痛い。
胃のあたりで竦み上がっている緊張が、冷や汗をかかせる。呼吸が浅く速くなるのを感じて、これはまずいかもと思った時、武尊が皆の視線から隠すように前に出てくれた。
「もういい。無理はするな。薔珠大尉」
「はっ」
すぐに薔珠を呼んで袖へと下がらせてくれる。ホールに備えられた長椅子に座らされ、肩から力を抜くと手が震えていた。
屋敷の使用人だという女性が、白湯を持ってきてくれる。お礼を言って受け取り、口にすると温かさが体の内側に沁み渡った。
「姫、大丈夫カ」
受肉精霊が覗き込むように様子を伺う。
その被毛にすぐにもふりと抱きつくと、心底安堵が湧き起こった。
波立っていた気持ちがなだらかに鎮まる。早鐘を打っていた心臓も、通常の速さに戻った。
「……不思議。どうして精霊ってこんなに安心するの」
「其方ハ特殊ナノジャ。貴種ハ精霊ニ近イガ、ソノ中デモ其方ハヨリ近イ。良キカ悪シキカハ置イテオクガ、コウシテ弱ッタ時ニハ判リ易イ回復ノ目安トナロウナ」
「精霊と一緒にいた方が、わたしの場合は回復が早いということ?」
「我ガ朝晩、共ニ居テヤロウゾ」
その通りだと頷きながら、精霊は胸を張って請け負う。
でも、あなたは明日には解放されるでしょう、とは内心で突っ込んだセリフだ。今はとりあえず、ありがたくその被毛に顔を埋めておくが。
「姫君、先程は本当にご立派でした。ご無理をさせたと心底後悔いたしましたが、健気さに薔珠は胸打たれました」
長椅子の前に片膝をつきながら感極まったように言う薔珠に、そんな大袈裟なと苦笑してしまう。
「皆も同じように思っております。人前に出られる状態ではないと伝えてあったので、正直皆、ご尊顔を拝することができるとは、思っておりませんでしたから」
「……武尊も、無理はしなくていいって言ってくれたわ。でも、これからお世話になる方々に、そんなことできないもの。皇家の為に働いて下さる方々でしょう?」
精霊から身を離して改めて彼らの方へ目を遣れば、武尊を中心に虎と二人ほどの人物が話し込んでいるのが見える。
「この場の者はほぼ全て、殿下が直接他部隊から引き抜いた者達です。近衛連隊としての数はまだ揃いませんが、この第一小隊の編成だけは昨年の秋から始めておりました。突発的な事態に備えて。貴女に直接関わる者達ですので、殿下が厳しく選抜しております」
突発的な事態というのが今まさに起こっている現状を思うと、武尊の先見の明に頭が下がるが、そんな風に思わせる海夜に原因があるのだと反省もする。日本にいた時のように、いつまでも庶民感覚でいては周囲の人間も巻き込む。今回はそれをよく理解する事件となった。
ため息を飲み込むと薔珠は苦笑した。
「皇家の為、……というより、この隊の者達はキアリズ殿下の為に集った者が殆どでしょう。ですが、先程頂いたご挨拶で貴女の為の役職であると、意識が変わった者も多かった筈です。……殿下はそこまで考え、姫君をこちらへお連れになったかと」
「震えながらした挨拶で?」
声だって震えてた。胸を張って堂々と、なんてとても無理で、冷や汗だってかいていて、情けないことこの上なかったのに。
そんな風に、大勢の人の心まで読んで行動するだろうか。……するかも、武尊なら。
今までの彼の行動を考えると、それぐらいの計算は確かにしそうだ。
「黄花・サディル家の貴種皇女というだけで、十分皆の興味を引きます。貴種女性がどれ程貴重か、皆知っていますから。その方が護衛対象として象徴的に現れれば、実力主義で殿下に心酔している者の気持ちも傾くと、殿下はよくご存知です。我が国は本来、女皇を戴く貴種皇家の国ですから」
何度も聞かされる、貴種というものの希少性。
海夜はそれを意識したことなくこの歳まで生きてきたが、武尊は生まれた時からずっとそれを意識した生き方をして来た。
しかも、黄花・サディル家には直系男子は必要ないと罵られながら、それでも貴種が貴重であるから生かしておくのだと、真逆のことを言われながら。
「武尊があんな性格なのも頷けるわ」
「は?」
自分の考えに浸って頷くと、薔珠に首を傾げられる。
いけない、また人を置いてけぼりにしてしまった。
何でもないと首を振ると、後ろに控えていた、白湯を持ってきてくれた使用人の女性が小さく吹き出すように笑った。
え? と疑問に感じ振り向こうとした時、武尊と虎がこちらへ合流して、女性の含み笑いの意味を訊くことはできなかった。
「落ち着いたか」
確認するように問われて頷き、寛ぐように伏せた受肉精霊の頭を撫でて笑う。
「この子のおかげですぐに楽になったわ。ありがとう、下がらせてくれて」
「姫君、ご無理をさせたのは皇子ですので、怒っていいのですよ」
申し訳なさそうに、武尊の後ろから声を上げたのは虎だった。
その通りだと一緒に頷く薔珠を見遣って、武尊も息をつく。
「無理をさせた。それは悪かった。だが他人の気持ちに敏感で、自分に鈍感なのは感心しない」
「? 鈍感?」
「出来ることと出来ないことの線引きを明確にした方がいい。おまえの我慢強さが鈍感に拍車をかけているのなら、ここでは全て忘れて、ただ休め」
呆れた風に腕を組みながら言われて首を傾げる。
鈍感かもしれないけれど、我慢強いとは思わない。だって我慢強い人間は、フラれたぐらいで全てを忘れたいと現実逃避などしない筈だ。海夜の場合、貴種という特殊な生まれのせいで、本当に記憶を封じて逃避してしまったけれど。
よくわかっていない様子の海夜に、これ以上何を言っても無駄だと思ったのか、武尊はスルリと目を逸らした。
そのまま視線を当てるのは背後の人物だ。
「––––––それで、貴女はそこで何をされているのです」
冷え冷えと温度低くかけられた声に、後ろに控えていた使用人の女性が、ひゃ、と息を詰めたのが耳に届く。
武尊の口調が改まったことにも驚いたが、何よりその温感のなさにびっくりする。
「本日夕刻には皇城に戻ると聞いておりますが、その指示も出さずに使用人ごっこですか。––––––皇妃」
武尊の威力あるひと言に、あんぐりと口を開けて後ろを振り返る。
可愛らしい赤基調のチェックのワンピースに、白いふわふわとしたエプロン。この屋敷で働く女性達のお仕着せだと思っていたそれを、何の違和感もなく着こなしていた黒髪と口元の小さなほくろが色っぽい女性が、肩を竦めてうふふと笑った。
その仕草の可愛らしさに、さらに口を開けて見上げる。
『あかん、簡単にバレてもうた。かぁいらしいお嫁さん、も少し盗み見してたかったのに。キアリズさん、気ぃ利かせてや』
外見から二十代にしか見えない日本美人が、武尊の生みの母その人であることにも驚くのに、その口から飛び出た日本語が色々な意味で予想外過ぎて、海夜は一瞬思考を手放しかけたのだった。
※
「つまんないんですけど」
座らされている椅子でシーソーをしながら、珊瑚は文句を遠慮なくもらした。
監督官、とかいう肩書きの人物はジロリと横目で睨んでくる。
「私いつまでここにいるんですかね? 滝本先輩は? 平尾先輩は? あと、あの超絶美形の人達。ねえ? 聞こえてます?」
『申し訳ないが、君の言葉は私には分からない。私の言葉は君には分かるんだろうが』
軍服のような物々しい、かっちりした服装の若い男の人はため息混じりに言う。
確かに言葉は分かる。でも、こちらの言葉は全く通じない。コミュニケーションなんて取れていないも同然だ。意味がない。
昨夕のことだ。
あの大騒ぎの後、人が集まる前にあの超絶美形の男の人は、珊瑚と滝本に太い指輪型の機械を渡してきた。
珊瑚の親指に嵌めて、何とか留めておける大きさ。滝本は中指に嵌めていたけれど、何だか収まりが悪そうで不恰好だった。
“試作機だが、翻訳機もどきだ。試して報告書を提出しろ”
あの眼帯の超絶美形に押し付けるように渡されたそれは飴色の石が付いた輪っかで、機械じみた螺子や継ぎはぎがなければ、男の人に初めて貰った指輪だと浮かれてもいられた。
でも、それを嵌めたら途端に周囲の人々の言葉が理解できるようになり、機械から音声で翻訳されるわけではなく、自分の耳で聞き取れる不思議な現象に当初は気持ちが悪かった。
今は助かると考えも変わってきてはいるけれど、相手が日本語を解さなければまるで意味がない。一方通行すぎる。
(この点は強調してレポートを書かせて貰わなきゃ)
そう思ってペンを握るけれど、手元を覗き込んでくる視線が気になる。
あの騒ぎで元々の宿舎のような部屋には戻れなくなって、この監視付きの部屋に軟禁のような状態が続いていた。一応、自由に過ごしていいとは言われたけれど、常に見られていて何が自由だろう。
滝本も平尾もあの時から別々にされて、わからない状況が更にわからなくなった。
もう本当に困る。
「あー、ほんと。何でこんな状況っ? 私が監視される意味、ほんっとわかんない!」
本日何度目かの大きなため息と文句が出て、またしても監督官とかいう男性軍人に顔を顰められる。
『君達の身の安全の為だと、何度説明しても無駄か。来訪者の国は治安がいいと聞くからなぁ。そんな若い身空で異世界なんぞに来て、政治のゴタゴタに巻き込まれるのは気の毒だとは思うけど、とりあえず、殿下方の足を引っ張るのはやめてくれ』
「はー? 何ですかー? 政治? ゴタゴタ? い、ら、い、ら、す、る、わぁ! 言葉が通じないって、こんな頭に来ること!? 外行かせてよ! 運動したいの!!」
生まれ変われるいい機会だと、異世界に来れたのは心底感謝しているのに、言葉一つ自由にならない。
もう、こんなの嫌だ!
相手が大人で良かったのか、こちらの苛立ちに触れても流してくれてはいるが、いい加減辟易しているのもわかる。
肩を怒らせて猫のように威嚇していると、部屋の扉が軽くノックされた。
『はい。何か』
軍人男性が応じて扉を開くと、そこに立っていたのは同じ制服を着た、少し年上のおじさん軍人だった。
『こちらは無事か。まずいことになった。監視対象が行方不明だ。外の空気を吸いたいと言って、撒かれた』
え、それってもしかして滝本先輩? それとも平尾先輩?
小耳に聞こえる情報にちょっと焦る。
『殿下に報告はしたが、周辺を捜索してもみつからない。手引きした者がいるのかもしれない。こちらは引き続き監視を続けろ。警戒を怠るな』
『は。状況はお知らせください』
『当然だ。追って指示する。目を離すな』
(えええー、ちょっと待ってよ!! 誰かいなくなったってことでしょ??
ホントに誰か、今私が置かれてる状況説明できる人連れてきてよ!!)
扉口での会話を終わらせてさっさと去ってしまうおじさん軍人に、心の中で叫びを上げる。
妙なことに巻き込まれすぎなんじゃないかと、自分の今の状況を恨めしく思うしかできないことが、とにかく珊瑚には悔しかった。
お読みいただきありがとうございます♪
ブックマーク等大変嬉しいです。
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