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【三章連載中!】花びら姫の恋  作者: 師走 瑠璃
【第二章】不機嫌皇子の溺愛
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第五話 傷の深度

相変わらず自分の小さな世界で右往左往している主人公と、あんまりその辺気にしてない皇子の噛み合わなさ。




 界渡りから三日目の、午後早い時間。

 海夜は私室の書斎の長椅子で、祖母の日記を読んでいた。

 が、ぼんやりと文字の羅列を追うだけで、頭に内容が定着しない。幾許もせずに、抗い難い睡魔がのしかかる。


 私室全体を改装したのだと侍女達から聞いたが、書斎は落ち着いて居心地が良すぎる程だった。

 明るい小花柄だった壁紙が無地の苔色に貼り替えられ、落ち着いて本を読める環境になっていた。

 天井まであった本棚は重厚な杢のままだが、手の届かない部分は削られ、替わりにスライド式の二重棚にリフォームされている。高い位置の本は読まなくなってしまうことも多いけれど、これなら蔵書量は変わらずに満遍なく好きな本を手に取れる。

 窓に向けて置かれた書斎机の真上には、花柄が可愛らしく焼きつけられた陶器のペンダントライトが下がっていた。灯りが灯って窓の外から見たら、一枚の絵のように見えるんじゃないだろうか。それぐらい計算された灯りの配置だ。

 身を埋めているこの長椅子も、模様替えされた物の一つだった。

 以前はゴブラン織のような織物が張られた、重厚なアンティーク家具だった。素敵だったがいかんせん、座面が硬いのが難点で長く座っていられず、インテリアと化していた物だ。

 それがリフォームされて座面はふかふかに座り心地良く調えられ、沢山の柔らかいクッションが置かれている。

 本の中で見る、外国の女の子の部屋のような可愛らしい雰囲気。なのに、落ち着いている。

 書斎にいる間は、薔珠も侍女二人も海夜をそっと一人にしてくれる。それは、平和な気遣いでもあった。


 うららかな春の午後。

 昼食を摂ったばかりの上に、少々寝不足気味。

 そうするともう、この抗い難く心地の良い眠気の波に逆らう理由もなくて、海夜は眠りの海に簡単に漕ぎ出していた。




 墨染めの闇しか見えない空間に、桜が舞う。

 以前はよく見ていた夢の光景に、居眠りしてしまったのだと自覚する。そして、闇の中に身を置く自分にため息を覚える。


 (ああ、いやだ。精神的に不安定になると、すぐこうなんだから)


 静かに降る雪のような花びらの中で、音が響いている。

 耳を塞ぎたくなる、こわい音。無意識下で、それが扉を無理矢理開けようとしている音なのだと理解している。攻撃的な激しい音を立てて、扉の把手が何度も上下する。

 華奢で優美だったレバー式の把手はその動きに耐えられず、すぐにばきりと嫌な音と共に折れた。

 その事実に立ち竦むしかなくて、海夜は胸が破れそうな程激しく打つ鼓動と、動くこともできない恐怖の中で震えていた。



 

 は、と自分の息を詰めた音に目を開ける。

 書斎の窓から見える景色に変化はない。春のやわらかな陽光と春霞の薄い青空、それに若い緑の木々が見える。

 浅い夢は碌な物を見せない。散々経験しているだけに、ため息をつきたくなる。

 けれど以前と違うのは、その夢の原因が何かをわかっている点だ。それは海夜自身が乗り越えなければならない問題でもあった。


 (だから、とにかく気にしない。

 前向きに。

 いいことを探すの)

 

 クッションの山に埋まってしまっていた身を見ると、膝掛けが掛けられていた。

 薔珠か侍女達が掛けてくれたのか。

 気遣いが嬉しくて、このままもう少し寝ようかしら、とクッションの中で身じろぎすると、頭上から静かな声が降ってきた。


 「起きたか」


 突然過ぎて固まる。

 声のした方を見ると、珍しく眼帯を外して左右異色の両目を晒した婚約者が立っていた。手には開いた本があるので、海夜が起きるまで時間潰しをしていたらしい。

 三日ぶりに顔を見た。

 忙しい人だとわかっているけれど、もう少し顔を見たいなぁと我儘なことを考えていたからかなり嬉しい。


 (でも今回もその前も、人の寝ている所に入りこむのはどうなの。間抜けな寝顔を見られるこっちの立場にもなってほしいわ。

 寝起きって髪はボサボサだし、ぼんやりした顔をしているし)


 見られることが耐えられなくて、膝掛けを目の辺りまで持ち上げる。


 「……い、いつ来たの?」

 「三十分ほど前だ。時間が取れたので様子を見に来た。すぐに行かなければならない」


 手の中の本をぱたんと音をたてて閉じて、武尊ほたるは軽く言い放つ。(えぇ……)と、内心で残念な声をあげてしまう。


 「起こしてよ……」


 忙しい人の三十分がどれ程貴重か、わかっているからそれを無駄にしたことが悔しい。お気楽に眠っていた自分が恨めし過ぎる。

 起き上がると、埋もれていたクッションが一つ転がり落ちた。それを拾って、武尊は手の中のクッションを考えるように見つめる。


 「? どうかした?」


 物を意味ありげに見つめるなんて、この人らしくない。

 ちょっとひどいことを考えながら首を傾げると、彼はこちらに目を寄越した。


 「近づいて平気か」


 確認するように問いかけられて、納得する。海夜の今の状況を三影か薔珠から聞いたようだ。

 確かに、婚約までしている人に、この身の異変を黙っていることもできない。


 「平気よ。……あんまり近すぎなければ」


 そうして口の中で小さく「ごめんなさい」と謝れば、武尊は息をついた。


 「なぜ謝る。むしろおれに責任があると、三影からも言われた。悪かった」

 「………それはもういいの。わたしに隙があったからつけ入れられたって、凄く反省しているわ」


 慎重にゆっくりと近づいてくる彼の足取りが申し訳なくて、まともに顔を見られない。

 俯いて膝掛けを握り込むと、頭上にもふりと柔らかいクッションが乗せられた。


 「自覚が湧いたのは結構なことだが。まあ、その様子だと人を極端に寄せられない、というわけでもなさそうだ。一時的なものかもしれない。あまり思い悩むな」

 「……だといいけれど」


 乗せられたクッションを膝に置いて肩を落とす。

 昨日はっきりと自覚した身の異変は、心に関するものだけに厄介だと自分でも思った。

 何せコントロールが効かない。

 人がそこに居る、というだけでモゾモゾと落ち着かないし、急に近づかれると悲鳴が出そうになる。触られると思うと自制の効かない悪寒と鳥肌が全身を駆け抜け、なりふり構わず振り払ってしまう。

 あの出来事以来の異変だ。

 だから異性にのみ反応するのならわかるのに、性別問わずに拒絶反応が出てしまうのは本当に厄介だった。


 「美津里みつりの診察は受けたのか」


 顔を上げられず俯いていると、武尊は片膝ついて目線を合わせてくれた。

 微妙に優しい。どうしたんだろう。


 「ええ。……でも、心の問題だから時間をかけるしかないだろうって。……血液検査は、何とかできたの。触るよって、前もって断ってもらうと我慢できるみたい」


 美津里という女性は去年の秋、この黄國に落ちた海夜の怪我の治療や保護など、並々ならぬ世話を焼いてくれた恩人の医師だ。夫の天地と共に、皇宮医療室へ武尊に引き抜かれた優秀な医師だった。

 海夜の状態を勘案して天地は診察には来なかったが、左肩の脱臼と右耳の鼓膜の予後をひどく気にしていたと聞かされた。

 どちらも事件の時に負った怪我だが、貴種の身体頑強な体質の為に、特に後遺症もなくすっきりと完治している。

 

 「我慢して触られている必要はないぞ」

 「でも、診察だもの。今のは言い方がいけなかったわね。我慢じゃなくて……“大丈夫”、かしら」


 適当な言葉が見つからなくて首を傾げて笑うと、武尊は呆れて息を短くついた。

 

 「おまえが我慢強いのは知っている。だが、場合によるだろう。我慢し続けた結果、悪化することもある。見えない傷なら尚更」


 その言葉にびっくりして、目をぱちりと一つ瞬いた。

 どうやら心配してくれたらしい。いつも通りの無表情すぎて、いまいち伝わってこないけれど。


 (……わかりにくいなぁ、もう)


 呆れたような、嬉しいような気持ちで苦笑して、やっぱり自分は単純で暢気だと思う。

 人からの接触を拒絶してしまうなんて普通の状態じゃない。

 それでも大事な人が気にかけてくれただけで、沈んでいた気分が雲の上にいるように浮上してくる。

 暖かい空気とうららかな日差し。

 少しずつ綻ぶ花々のいい香りと。

 そんな和らかい季節は、つんつんした人の気持ちも溶かすのかもしれない。

 目の前のこの人が優しいだけなんて、あるわけないけれど、それでも嬉しい。


 「春って人を優しくするのね」

 「会話をしろ」


 うふふと笑うと、いつもの言葉が返される。

 まったく、と言わんばかりの仏頂面で呆れられて、変わらない態度に安心した。

 仏頂面に安心するなんて、恋する乙女として終わっている。どうしてこんな表情が無の人に安心するのだろう。

 ……でもしょうがない。

 海夜の恋した人は、こういう人だ。


 (恋って、諦めるのとは違うけれど、ちょっと似てる。……悟るというか)


 嫌な所は嫌だと思うし、直せるものなら直して欲しい所もある。お互い様だってわかってるけれど。

 でも、それも全部含めて肯定できる程好きが溢れてしまう瞬間があって、そういう時、海夜は恋しているのだと悟る。

 恋は盲目、痘痕あばたえくぼ

 最近そんな風に思う。先人は偉大だ。それがまさに今だったりするから始末に悪い。こんな不機嫌な表情を見せられているのに。

 そう思いながら、仏頂面にふわりと笑顔を向ける。


 「武尊が変わっていなくて、すごく嬉しい」

 

 海夜には全てを自分の中に封じ込めて忘れてしまっていた、二年半ものブランクがある。

 早くその空白を埋めたい。

 二年半の間に、武尊は本心を簡単には見せてくれない、大人の男性になってしまったから。

 だから、会えなかったこの数ヶ月の間に、また武尊が遠い所に行ってしまったらどうしようと、焦る気持ちもあった。でもこうして直接会えた彼は、去年の秋に婚約した時と何も変わらない。

 それだけで安心して、笑顔でいられる理由になる。


 海夜の言葉に、武尊は本気で毒気を抜かれた微妙な顔をした。

 何か言いたげに口を開いて、けれど諦めたのか、肩から大きく息をついて項垂れる。

 疲れた仕草は珍しい。また働きすぎているんじゃないだろうか。

 そんな風に武尊の身を心配していると、彼はぽつりと呟いた。


 「………相変わらずすぎて、力が抜ける」


 気を取り直すように顔を上げた彼は、海夜の言動をいちいち気にするのはやめたらしい。


 「––––––おまえの不調の元となった来訪者に、会いたがっていると薔珠から報告を受けた」

 「……それはだめって止められたから、諦めたわ」

 「それも聞いた。一度の説得で聞き入れたと」


 意外な所から意外なことを突っ込まれて、驚いて目を瞬く。

 言葉を切った武尊の左右異色の瞳は、探るような疑問の色で海夜の瞳の奥を覗こうとする。……これは疑われているだろうか、もしかして。

 あの時、素直に説得を受け入れた海夜に、三影は安堵してくれた。けれど、後ろで聞いていた薔珠は何の反応も返さなかった。

 今考えればそれは、海夜の態度に疑問を持っていたのだろう。


 (武尊と薔珠って、よく似てるんだったわ。考え方とか行動とか。わたしの薄っぺらい企みなんて、一瞬で見抜かれちゃったのかも……)


 だからこそ、武尊は薔珠を海夜の側仕えとしたのだろう。

 一度決めたことには猪突猛進しがちな海夜の思考パターンを、二人とも去年の逆プロポーズ騒ぎで学んだらしい。武尊と似た視点でものを考える薔珠は、突っ走る前の海夜の、ストッパーの役割も与えられているようだ。


 「ほ、武尊が心配することなんて何もないわ。安心して」


 ここは誤魔化すしかない。

 だって実はもう、詩織を通じて来訪者の二人には手紙を渡して貰った。

 今夜、来訪者の教室で会えないかと打診する手紙を。


 詩織には、海夜が生まれの背景で日本と行き来できてしまうと告白したら、それはもう驚かれた。

 ずるい、となじられるかと思ったのに、彼女はけろりとして全く気にしなかった。むしろ日本の今の流行りを気にし、読んでいた小説の続きや好きだったお菓子を、今度お土産に持ってきて下さい! と目をキラキラさせてお願いされたぐらいで、自分の家族の話には一切触れなかった。

 それがおそらく、もう帰れないと割り切った詩織なりの覚悟なのだろう。


 そんな詩織から知らせて貰った二人の来訪者の様子は、現実を受け入れきれずにすさみつつあるという。早い所どうにかしなければ、滝本に至っては大学入学の手続きも迫る。

 海夜の方が焦って、今夜の約束を一方的に取り付けた節はある。海夜がここにいることを、二人がどう思っているのか確認できていないし、来てくれるかどうかもわからない。でも、何もせずにはいられない。

 海夜の内心の焦りを透かすように見ながら、武尊は立ち上がった。


 「……一人で暴走するな。何の為の侍衛官だ。おれの役目も、忘れた訳ではないだろう」


 上から圧迫するような空気を感じて、困って閉口する。

 武尊の役目はちゃんと覚えている。

 皇家を守護する“守護者”。

 本来は皇家伝来の鈴と鏡に宿る精霊二者の役割だが、五十三年前の事件により、二者は日本と黄國とに分たれて役目を果たせていなかった。

 その為、皇族として生を享けながら、様々な事情で武尊がその役目を負うことになったらしい。そして海夜は、黄花・サディルの貴種女性としてその庇護下にいなければならない。

 わかっている。


 (……わかってるけど)


 「理解した上で動くなら、愚の骨頂だぞ」

 「……言い過ぎ……」


 言い訳しようと口を開きかけた所を、武尊は腕を組みながら先制した。

 バレている。一人で何とかしようと、こそこそもがいていることが。


 「薔珠が気を揉んでいる。おまえが自ら危険に飛び込むんじゃないかと。止めるように言われたが、止まらないなら同行する」

 「えぇ……」

 「嫌なら今すぐ馬鹿な考えを捨てろ」


 迷惑そうに顔をしかめたら、意地悪な笑みが返された。

 こうなったらおうにお願いして、前宮まで連れて行って貰うしかないかと考えた時、それすら読んだように武尊は威圧してきた。


 「黄を使っても、すぐにおれにはれるぞ。きょうが手元にあるのだからな」


 ぐうの音も出ずにやり込められて、珍しくため息も出てしまって、埋もれていたクッションの中にもう一度身を沈めた。


 「……だって、わたしの責任なのよ……。一人は確実に、わたしの界渡りに巻き込んだの。ここに縁があるとしても、まだ来るべき時じゃないなら、本来の界渡りの時まで日本の家族の元にいた方がいいでしょう?」

 「もう来ているものを本来も何もない。日本へ帰っても、いつまた界渡りするかわからない現実に、怯えながら過ごすのか? それは残酷とは違うのか」

 「……意地悪……」


 言い返せない正論に、クッションに突っ伏して耐えるしかない。

 武尊の正論は容赦がない。正しい事実で人を追い詰める。しかもそれを、わかってやっているのだから根性が悪い。

 正論を越えたその向こうは、おそらく彼の中にちゃんとある。優しい人だもの。でも、余程でなければそれをくれることはない。そこが根性が悪いと思う。

 海夜だって理解はしている。でも割り切れないこともあるから、こうして踠いているのに。

 海夜の様子に呆れた体で、武尊は腕組みを解き軽く息をついた。


 「来訪者に関してなら、試したいことがある。試作機が出来上がってきているから、その実験台という口実でなら会ってもいい」

 「えっ、ホント!?」

 「ただし、おれと薔珠の立ち会いの元でだ」


 実験台なんて、穏やかじゃない。

 でも、誰にも迷惑かけずに二人に会えるならどんな口実でもいい。

 武尊の提案に一も二もなく頷くが、そういえば約束は今夜だったと気まずくなる。


 「なんだ」

 「えぇと、実は……」


 海夜の態度に訝しげに首を傾げた武尊は、告げられた内容に呆れたようだ。大きくため息をついている。


 「……知っていたが。おまえの暴走は、周囲を見なさすぎじゃないか?」

 「……すみませんでした……」


 とりあえず大人しく謝っておく。

 二人と約束した時間を明かすと、彼は眉間に皺を寄せながら、時間を作るから一人では行くなと釘を刺した。

 そうして、腕に括り付けている小型タブレットに目を落とし「時間切れだ」と呟く。

 呼び出しが入っているのだろう。

 見送りに立ち上がりかけた目の前に手を差し出され、肌が粟立つ。硬い海夜の顔色に気づいて、武尊は手を引っ込めた。

 その行動に複雑な心境になる。悲しいのか申し訳ないのか、ごちゃごちゃだ。


 「……困らせて、ごめんなさい」


 謝るのは、立場上のこともあるからだ。

 第一皇子の婚約者。皇太子おうたいしの将来の結婚相手。

 そんな立場の人間なのに、結婚相手からの接触も拒絶してしまう。

 一時的なのか、まだまだ続く症状なのか。わからないままでは、この先に支障が出るのは色々疎くてもわかる。

 これでも“きさいがね”として、婚約が決まった後に頑張って勉強してきた。次代の問題が絡むのは、妃なら当然だ。

 だから、謝ったのに。


 「別に。何も困らない」


 返った答えは軽かった。

 本当にそう思っているように、気負いのないあっさりとした、裏などない答え。

 耳を疑う体で、彼を凝視してしまう。


 「……………困らない?」

 「まったく」


 (ええええぇぇぇ??)


 再び返る、水が顔をつ勢いの答えに内心大声で困惑する。


 (…………そうなんだ………)


 困惑して焦る気持ちの裏側では、冷静に納得している自分もいる。

 それはそうかも、と。

 だって海夜は、ゴリ押しで婚約者の立場に収まった、謂わば押しかけ女房だ。こちらの気持ちを押しつけて、武尊の気持ちがどうあるのか実はきちんと確認していない。

 ただ、本当に嫌であれば、容赦なく切り捨てる人が渋々でも受け入れてくれたから、心底から嫌われているわけではない。

 そんな風に都合よく解釈して、この立場にいる。

 だから、気持ちの伴っていない彼にしてみたら、触れないということに特段感想もないのかもしれない。


 (………うん、そっか)


 何に納得したのかいまいち自分でもわからなかったが、今は気持ちが疲れていて深く考えることはしたくなかった。

 そうして自分の中の小さな棘と疑問に、無意識に目隠しした。




 それが傷の深度を掘り下げてしまうとは、考えもせずに。



お読みいただきありがとうございます♪


ブックマーク等大変嬉しいです。

ありがとうございます。

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