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【三章連載中!】花びら姫の恋  作者: 師走 瑠璃
【第二章】不機嫌皇子の溺愛
46/91

第一話 序 たとえばそれが誤解であっても(表紙挿絵あり)

新章スタートです。

初めましての方も、続き読みに来たよの方も、よろしくお願い致します!


タイトル詐欺にならないように、頑張ります!

      

     

   挿絵(By みてみん)

 




  がりがりがり、と引っ掻き音が耳に届く。

 暗闇の中、小さな四角い画面が青白く光っている。そこから聞こえてくる楽しげな音に唇を噛みそうになる。


 (どうしてうまく出来ないの? どうして)


 そう思えば思う程、引っ掻き音がひどくなる。

 一際力のこもった音が暗闇に響いた時、きれいに剥がされた瘡蓋かさぶたが手のひらの上に転がった。


 (大きな瘡蓋。

 もっともっと大きく。

 もっときれいに剥がれるように、大きくしなきゃ)


 いつの間にか青白い画面のことなんて頭から消えて、どうしたら瘡蓋が大きくなるのか、そんなことに集中し始めていた。


 (きれいに。きれいに。

 きれいに、みんなにバレないような、大きな瘡蓋を作らなくちゃ。

 もっと力を込めればいい? もっと爪が長い方がいいのかな? でもそうすると、部活で不利だ。

 刃物? でも切り傷だと瘡蓋きれいに出来ない。やっぱり、引っ掻き傷じゃなきゃ)


 ぐるぐる、堂々巡りの思考の中で足の膝ひとつじゃ限界なんだと気づく。


 (そっかぁ……、じゃあ、傷増やそうかな)


 そう軽く考えて、反対の足の膝に血まみれの指を掛けた。



 ※※※



 前髪を優しく撫でられた気がして、閉じていた目に力が入る。

 目を覚ましたいのに、開けられない。

 まだ眠い。


 (というか、今は朝? 夜?

 眠った記憶がないのだけど、いつベッドに入ったかしら?

 ……あれ、こういうの覚えがある)


 数ヶ月前の秋に同じような経験をした。あの時は見知らぬ場所で目が覚めて、混乱したっけ。

 指で何度も輪郭をたどるように頬を撫でられて、さすがにくすぐったくて避けるように身じろぎする。笑い声が洩らした時、すぐ耳元で声がしたことに驚いた。


 「そろそろ起きないと、鼻を摘むぞ」


 (………は???)


 聞きたかった声という願望りそうと、ひどい言葉ばかり投げられるという現実が混ざった声が聞こえて、バチっと音が立つ勢いで目を開ける。

 目の前に、朝日を浴びた秀麗な顔があった。

 右眼の眼帯は相変わらずだが、以前のようなよそよそしさがその瞳の中にはない。黒曜石のように真っ黒い虹彩の中に、神秘的な深い緑が揺らめき、艶めく黒髪は春の柔らかな陽の光を弾く。


 何もかも、記憶の中の通り。


 無表情なのに不機嫌だと分かるこの人は、海夜みやの住んでいる日本からは異世界と呼ばれる所にある、黄國という国の第一皇子。

 そして、去年の秋に押して押して押しまくった結果、口説き落とされてくれた自分の婚約者だ。

 その婚約者が目の前にいる。寝台に寝かされていた自分の目の前に。


 (……アレ? えぇと……? たしかまだ、界渡りする日ではなかった筈だけれど……、夢?)


 まだぼんやりしていると、婚約者の青年は言った。


 「おはよう。––––––それで? この首のところの痕は、一体なにごとだ?」


 確かめるように海夜の首筋に指を這わせた婚約者、武尊ほたる・キアリズ・黄花こうか・サディルは開口一番そんな風に言った。


 それはそれは美しいかんばせで、口の端を意地悪に上げて。




お読みいただきありがとうございます♪


ブックマーク等大変嬉しいです。

ありがとうございます。

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