8.彼女の事情-鷺丘 爽凪①-
話の流れは変わりませんが、文章を一部変更させていただきました。既に読んでくださった皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
「何とでも言ってくれ」
吐き捨てられた言葉とは裏腹に穏やかな笑みを浮かべる彼。
この顔を引き出す為に、私が失った物は大きい……。
こんな面倒事を頼んできた両親の顔を思い浮かべる。
あの両親の事だ、私が苦労しているなんて考えてないだろうな……。
ダメだ今は余計な事は考えずに目の前の彼に集中しないといけないのに、先日の事が脳裏を掠める。
巡谷君と幼馴染の月夜野さんの事は、以前から知っていた。
とは言っても私とは接点もなかったので、せいぜい知っている事と言えば、顔と名前といつも二人で一緒にいる事ぐらいだった。
知り合いとも呼べない間柄……私と彼の関係はその程度のものだった。
ある日、いつもの様に夕食を食べていた時、食後に大事な話があるとパパに言われた。
聞けば、巡谷君のお母さんと数年前から一緒に仕事をしている事、数年前に経営が傾きそうな時期があった事を聞かされた。
そんな話は聞いた事がなかったので心底驚いたが、何故そんな話をいきなりするのか理解出来ずにいた。
その話を聞いて疑問に思った事がある。
何故今まで巡谷君が同級生である事を教えなかったのだろうか?
単刀直入にその理由を聞くと、パパが彼のお母さんに持ちかけたという事だった。
親の立場が子供にまで及ばない様にという配慮との事らしい。
でもそれって……私が巡谷君に親の立場を利用してマウント取ると思っているとも言い換えられる気がした。
その話を聞いてちょっと複雑な気持ちになったのは仕方ない事だろう。
突然こんな話を聞かされた私は、咄嗟に巡谷君を男女のアレ的な意味で私に紹介したいのだろうかと勘繰った。
今思えば我ながら自意識過剰だったと思う。
パパが話した内容は、衝撃的なものだった。
巡谷君のお母さんが、会社を暫くの間だけでも早上がりさせて欲しいと相談してきた事、そしてその理由を聞かされたのだ。
最初は半信半疑だった。
それこそ、その日に彼がいつもの様に月夜野さんと仲睦まじく話しているのを見たからだ。
自分に死期が迫っているかもしれないと思う人があんな穏やかな顔で微笑みかける訳がない。
でも、パパは『嘘ではない』と私のそんな考えを即座に否定した。
困っている時はお互い様だと思ったパパは、彼のお母さんに会社を暫く休む様に伝えたらしい。
その間は、有給扱いにするから事態が落ち着くまで気にせず傍に居てあげる様にと……。
でもその申し出は断られてしまったとの事だった。
理由は、息子が心配するといけないのでなるべくいつも通りに過ごしたいと。
私にはその考えは理解出来なかった。もし私が彼の立場なら、親に出来るだけ側に居て欲しいと願うだろう。
そもそもの疑問だが、この話は私が聞いて良かったのだろうか?
そんな疑問が頭を過ぎったがそれは杞憂に終わる。
パパとしては自分が力になれない分、私に助けを求めようと思い、成り行きを話すと決心したとの事だった。
パパからのお願いは、積極的に交流を持とうとしなくていいから、もし何か困っていそうな事があれば、出来る範囲で助けてあげて欲しいというものだった。
会社の社員の子供の事とは言え、どうしてそこまで肩入れするのか疑問に思った私はその事を尋ねた。
パパの話では、経営が傾きそうな頃に給料が数ヶ月もしくはそのまま払われる事なく会社が潰れるかもしれないと聞き多くの人達が退職を決意した。
その中で残ってくれた人達のおかげで今がある事、そしてその中の一人が入社して間もなかった巡谷君のお母さんだった事を聞かされた。
私が今の生活を送れているのは、その時一緒に頑張ってくれた人のおかげだとうれしそうに話すパパを見て、私には関係ないと言える雰囲気ではなかった。
積極的に関わらなくていいという言葉と、彼の側にいつもいるという幼馴染の少女の存在を思い出し、深く考えずに了承した。
その事実を知った日から、2、3日彼を観察したが普段と何も変わらない様に思えた。
まぁ、普段を知っているのかと聞かれれば知らないのだけど……。
飽きっぽい私は、これで一応の義理は果たしたとばかりに元の生活へと戻って行った。
この判断が間違いであったと気がついたのは、彼に対する噂が広まった後だった。
噂を聞いた瞬間、彼が幼馴染からの告白を受け入れなかったのは、病気が原因だと直ぐに理解した。
ただ、腑に落ちなかったのは彼が別の女の子と付き合っているというもう一つの噂だった。
あれだけ学校で噂になる程、仲睦まじい様子だったのに彼が別の人と付き合っているという噂がたつこと自体がおかしい。
これは何か裏があるのかもしれないと思い、彼に接触を取る事に決めた。
ただその頃の彼は、病気と噂のせいで痛々しいぐらいに疲弊していた。
最初のコンタクトの時は緊張のあまり、つい本音が出てしまい慌てて誤魔化した。
今思えば文字で書いてる訳はないのだから、私の言った『いたいた』にどんな意味が込められていたかを彼が理解出来るはずがない。
そんな事にも気づかなかった私は、人として大事な何かを失った。
その代償は大きく……彼とのやり取りで困った事があれば、自らそれをネタにする癖が早くも身につき始めている。
今日のパンツは何だっただろう……。
昨日の夜の事を思い返してみる。思い至った私は、血の気が引いていくのが分かったり
今日は勝負下着『・・・・』だ。
不敵な笑みを浮かべる熊が後ろにプリントされた私のお気に入り……これは流石に人に見せて良いものではない。
約束を反故にするのは、私の流儀に反するけど背に腹はかえられない。
それに今からするのは真面目な話だ。
彼の性格を考慮すれば心配しなくてもそんな雰囲気にはならないだろう。
意識を彼に向ければ考えが纏まったのか、今まさに喋り始めようとしている。
気持ちを切り替えよう。私は余計な考えを頭から追い出し、彼の言葉を静かに待つのであった。
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