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19.サプライズ

術後の経過は順調で、夏休みが終わる頃に当初の予定通り退院となった。

そんなに長く家を空けていた訳ではなかったが、久しぶりの我が家はとても懐かしく感じた。


新学期が始まってすぐに登校する事も考えたが、先生と相談して数日ずらす事にしたので、もう少しだけゆっくりと過ごせるのがありがたい。

名誉の為に言っておくが、断じてズル休みではない。


いきなり僕が登校して説明するよりも、先生が事前に説明した方が周りの混乱も少ないだろうという配慮からだ。


母さん達とリビングで談笑しているとチャイムが鳴った。

すると妹が待っていたとばかりに、素早く腰を上げた。


「あ…私出るね。多分爽凪先輩だと思うから」


「鷺丘さん?ウチに何か用事でもあったの?」


鷺丘さんが来るという話は聞いていなかったので、少しばかり驚いたが、どうやらサプライズで退院祝いをしてくれるとの事らしい。


「私達が呼んだのよ。あれだけお世話になったんだからお礼しないとでしょ?鷺丘さんのご両親もお誘いしたけど、あなたが病み上がりなのに気疲れしたらいけないからって爽凪さんだけと仰られてね……」


「そうだったんだね。ごめん、色々迷惑かけたね……」


「何を言ってるのよ。あなたにそれを言われてしまったら、そんな病気を抱えて苦しませてしまった私の立場がないじゃない。ほ、本当にこうして無事に帰ってきてくれて良かった……」


病気になったのは母さんが悪い訳でないが、健康に産んであげられなくてごめんと謝られた。

その考えは間違っていると否定したけど、母さんは寂しそうに笑うだけだった。


「ほら、母さん。そんなしんみりした雰囲気だと、鷺丘さんも心配するからさ。せっかく来てくれてるんだから、楽しくやろう」


「そ、そうね。ごめんなさい。ご馳走とまでは言えないかもしれないけど、腕によりをかけて作ったから楽しみにしていてね」


鷺丘さんを引き合いに出すのはズルい気もしたけど、多少なりとも母さんの気持ちが上向きになった。


「ありがとう、何か手伝う事はある?」


「大丈夫よ、時哉は鷺丘さんとゆっくり話でもしてて」


母さんとの話が一区切りついたタイミングでリビングの扉が開いた。


「こんにちは!本日はお招きいただきありがとうございます。あ、あと……つまらないものですが……父と母から巡谷さんにお渡しする様にと……」


「あら、それはそれは。ご丁寧にありがとうございます」


他所行きな雰囲気の鷺丘さんとやたらと頭を下げる母さんを見てつい笑ってしまいそうになった。

雇用主の娘さんって事もあり、母さんも少し緊張しているのかもしれない。


結莉を連れて、母さんがキッチンに戻っていった。


「鷺丘さん、夏休みの課題は終わった?」


「うん、それはもちろん。そっちは免除だったっけ?」


「そうだよ、今回は特例って事になってる」


「まぁ、病気の事を考えるとそれが普通な気もするけどね。それで話は変わるんだけど……月夜野さんに連絡は?」


「一応、新学期が始まる前に話しておきたい事があるから会って欲しいってメッセージ送ってるよ」


「まだ返事は来てないの?」


「うん、既読にもなってないから忙しいのかもしれない」


「そっかそっか。きっと会ってくれるだろうから、ちゃんと気持ち伝えるんだよ?頑張ってね、応援してる」


「ありがとう」


あれだけお世話になった鷺丘さんに報いる為にも、頑張らなければいけない。

より一層気が引き締まった。


「仲違いしている友達の方はどうするの?」


「遥騎の事かな?連絡したんだけど、断られてしまって…話す事はないって返信がきたよ」


「そっか、事情を話せば分かってくれるとは思うけどね……。そっちは学校が始まってからの心変わりを期待するしかないか」


隣を見れば、結莉が話に入れずソワソワしていた。

それに気づいた鷺丘さんが、話題を変えたので僕もその流れに乗じた。


女三人寄れば姦しいとは言うが、二人でも十分賑やかだ。

その後料理を終えた母さんを交え、食事をしながら談笑した。


食後のデザートを食べ終わると、鷺丘さんは早々に席を立った。

どうやら結莉と一緒に買い物に出かけるらしい。

いつの間にそんなに仲良くなっていたのか知らないが、妹に友達が増えるのは兄としても嬉しかった。


「美味しい食事をありがとうございました」


「またいつでも遊びに来てちょうだいね、あとご両親にも宜しくお伝え下さい」


「ありがとうございます!!結莉ちゃんお借りしますね、それじゃ行こっか!!」


楽しそうに出かけていく二人を玄関で見送り、リビングへ戻るとスマホに目を向ける。

期待とは裏腹に、未だ着信はなかった……。

まずは、いつも読んで下さってありがとうございます。

そして、ブクマ・評価・感想・誤字脱字・ミスのご指摘ありがとうございます。


次回からは、夏休み明けと言っておきながら……明け明け詐欺で申し訳ございませんでした。


感想について、こちらからの返信は控えさせていただきますが、拝見して参考にさせていただいております。

様々なご意見・ご感想本当にありがとうございます!!


私も好きな作品の更新を心待ちにしている身なので、更新の遅さで皆様にご迷惑をおかけしてるのは重々理解しております。この点につきましては、本当に申し訳ございません。


ほとんど見ていただけない作品の方が、続きが書きやすいという……豆腐メンタルの我が身が憎らしいです。

こんな感じですが、これからもどうぞ宜しくお願い致します。

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