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11.私にできることは-鳳月有栖①-

「ただいま……」


誰も居ない部屋に私の声だけが虚しく響く。


ソファに鞄を放り投げ、スカートに皺が入る事も気にせず座り込む。


正直私は参っていた。突発的に起こした行動が原因と言ってしまえばそれまでだけど、この事態までは想定していなかった。



昨日の出来事を思い返す。



気分が優れない時、屋上に行く事がある。

屋上は私の気の安らげる数少ない場所だった。

気温が高くなり始めるとここに来る生徒はほとんど居ないので、一人で考え事をしたい時に最適なのだ。

給水タンクの所にちょうど良い日陰があったので、梯子を登り三角座りで景色を眺める。


「年下にあんな目を向けるなんて信じられない。もう嫌だ……消えたい……」


思い出すのは昨夜の会食での出来事。私には年の離れた婚約者が居る。親の仕事関係……俗に言う政略結婚目的というものだ。

この年で、恋愛すら自由に出来ない我が身を呪う。


あの人は今どうしているだろうか……。

もう会う事の出来ない最愛の人を想う。


物思いに耽っていると、屋上の扉が開いた。バレないように身を乗り出し下を覗くと、1組の男女が入ってきた。


女の子の方が呼び出したのだろう。

何かを切り出そうと先程から口をパクパクさせている様子を微笑ましく思った。


きっと告白だろう、盗み見するのは最低な行為だと頭の中では分かっていたが目が離せなかった。


「時哉、ずっとずっと好きでした。私と結婚を前提で付き合って下さい。時哉と出会う為に生まれてきたのだと、小さな頃からずっと思ってました。あなたの為ならこの命惜しくはありません、何だってします!!」


彼女の言葉から、2人が幼馴染である事が伺えた。

私の胸がチクリと痛む。

上手くいくといいな……そんな私の淡い期待はすぐに打ち砕かれる。


男の子の方にその気はなかった様だ。縋り付く女の子に対して更に言葉を浴びせる。


「執拗いな。ずっと前から鬱陶しいと思ってた。勘違いさせたのは申し訳ないけど、今後僕には近づかないでくれ。それじゃ用事があるから僕は行くから」


言葉だけを聞けば、最低な人だ。

でも、男の子が苦悶と悲しみが混ざりあった表情かおをしていた事に、私は気づいてしまった。


男の子が昔の自分と重なった。だから、きっと訳ありなんだと思った。


男の子が去り、その場に泣き崩れる女の子。

どれぐらい時間が経っただろうか?泣き続けていた彼女が急に立ち上がる。

ふらふらと……定まらない足取りで柵の方歩き始める。


これはマズいと思った私は、急いで止めようと梯子に手をかけた所で、入口の扉が開いた。


「乃空先輩っ!!」


どうやら彼女の知り合いが心配して駆けつけてくれた様だ。

私が出て行かずに済んで、ほっと胸を撫で下ろす。


しきりに『もう生きている意味がない』と呟く彼女を後輩が励ますがどうやら効果なさそうだ。


それだけ彼に対する愛が深かったのだろう……。

きっと他人が聞いたら『高校生の恋愛なんだから』と笑うかもしれない。

でも、だけは彼女を笑う事が出来ない。


それを知っているからこそ、何か行動をしなければいけないと思った。

私に出来ることは何があるだろうか?何をするのが最善だろうか?


考えが纏まったとは到底言えないけど、覚悟を決める。

私は静かに梯子を降り始めた……。



それから先の行動は自分でも正しかったかは不安だったが、今はハッキリと答えが出ている。

そう、私は間違ったのだと……。


彼女の自殺を何とかして止めたい。

出来る事なら、告白を断った真意を彼女に話して向き合って欲しい。


私の行動原理はそれだけだった。


ただ、私とあの人の様な悲しい結末にはなって欲しくないと強く願ったからそうしただけだ。



でも、そんな私の思いは誰かに打ち砕かれる。

脅しはしたものの、本気で周りに言いふらすつもりなんてなかった。

そんな私の気持ちとは裏腹に、登校すると彼に対する悪い噂が広まっていた。


もっと違った形で彼に接触する計画が全て台無しになり、焦った私はさも自分が広めたように彼に言ってしまった。


何かしらの理由があるのは理解していたので彼の真意を尋ねた。

教えてくれれば私は屋上での出来事む含め、全て彼に伝えていただろう。


だけど、彼は拒絶した……。


ならば、私が悪者・・になればいい。

後で何と言われようと構いはしない。

彼女の事だけを考えて行動した。



メッセージアプリの着信音が鳴る、今日はずっとこんな感じだ。

私を心配してくれている友人からだろう、内容もだいたい想像出来る。

学校の間に何件か返事をしたが、学校を出てからは放置していた。

頻繁に鳴っていたから、メッセージは凄い数になっているだろう。


落ち込んでいても仕方ない。せめて、今の私に出来る事をやろう。

彼に対して実害が少しでも及ばない様に……私は鞄からスマホを取り出した……。

まずは、いつも読んで下さってありがとうございます。

そして、ブクマ・評価・感想・誤字脱字・ミスのご指摘ありがとうございます。

一喜一憂しながら、励みにさせていただいております!!

↑定型文ですいません


【説明が伝わりにくく、何度か編集しております(完了済)】

私の中での勝負回です。感想でいただいたご要望と元々考えていた方向性とどちらにするか悩みました。


鳳月というキャラが嫌いな方が多い事は承知しております。

実は申しますと、ここまでヘイトが高まると思っていなくて、鳳月視点の話が敷居が高くなってしまいました。


この話は受け入れて貰えないかも……と読み返して不安になっておりますが、考えても仕方ないですね!!←軽い


結末はぼんやり考えてます。とりあえずそっちの方向に舵を取っていきたいと考えております。

引き続き宜しくお願い致します!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 暴走機関車の独白ですか。 自分でも分かってる様に、明らかにミスったんですが、その後も、彼の云々言いつつ全く改善もしてないんで、只の思い上がりと言われても仕方ないレベル。
[一言] 鳳月さんの説明回だけど、結果ひっかき回しただけで幼馴染みは何も救われてないし、むしろ下手に動いたせいで全方位にでダメージ与えてるし、背景も少し描かれたけど自己満足の域を出ないので共感が難しい…
[良い点] キャラの心情がわかりやすくて読みやすいです。次も楽しみにしてます。 [一言] ぶっちゃけ偽善者でも偽悪者でもない、ただ安易に考えて衝動のままに行動するバカですね(言い方悪いですが)。それで…
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