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ボク、天音雪の夢は思い出の地?

みんながCDを買った帰りに、カフェに寄ることになった。そのお店おすすめの紅茶を飲みながら、CDのジャケットについて感想を述べていたのだが。


「う~ん! やっぱり最高だよ! このジャケット!・・・・超、エロい!」

「え」

「ええ、最高に・・・エロいわね・・・・・・っ」

「え」

「そうだね~、過去一で・・・エロいね!」

「・・・」

「・・・?そうか?まあ色気は出てる気がするが、まだ普通じゃね?」

「・・・」


なんだか変な方向に話が傾いていた。そんなにエロいだろうか。確かに衣装を肩の部分を少しずらしていて、肩甲骨あたりが見えるように撮影されているが。


「いや、エロいね!見てよ、怜奈なんか鼻血出してるし!」

「んんっ・・・ごめんなさい、はしたないところを見せてしまったわね」

「というか元々普段の姫様に色気があるからね。こう、超有名人ならではの?」

「わかる!雪ってばちょっとしたしぐさとかがもう最高に可愛いし!あとさあとさ!」


飛鳥、怜奈、美乃梨の三人はボクの普段の姿の話で盛り上がってしまった。そばで聞かされるこっちの身にもなって欲しい。ものすごく恥ずかしいのだけど。


顔を赤くしながら紅茶を飲んでいると、駿介がボクに話しかけてきた。


「なあ雪、一つ聞いてもいいか」

「うん、何?」

「今じゃ日本で雪のことを知らない人ってもうほとんどいないくらい有名になっただろ?“銀の歌姫”って二つ名的なものも付いて、過去の音楽祭とかでも最優秀賞何度も取ってるし」

「うーん、自分で肯定するのもあれだけど、まあそうだね」

「でさ、気になったのは、それでもまだ歌手を続けるのってなんか理由あるのかなってこと」

「・・・福谷は姫様に歌手を辞めてほしいのかしら?だとしたら私が黙っていないけれど」

「ちょ、違うっての! 単純に気になっただけだって! なんか今日俺への当たりが強くないか!?」


いつの間に話を聞いていたのやら。というか怜奈の圧力がすごい。こわい。


「冗談よ・・・確かに私も気になるわね」

「私も。教えてくれるかな、雪」

「私からもお願い」

「うーん、まあ少しだけなら」


今ここで全部を話す気はない。結構暗い話になってしまうから。けど一部だけならまあ問題は無いかなと思い、話すことにした。


「えっと、実はとある場所でライブをしたいんだよね、かなり大きいんだけど」

「ライブ?」

「そう、北海道にあるスーパーアリーナ。そこで大きなライブをするのが、今のボクの夢なんだ」

「ほえ~、確かにあそこってすっごい大きなドームだよね。けどどうしてそこなの?」

「・・・ん~、まあ、ちょっと思い出のある場所でね。とある人たちに恩返しをしたいって意味でもあるんだ」


肝心な部分は省いて言ったが、少し不自然だっただろうかと心配した。だがどうやら杞憂だったようで、そこを悟ってくれたのか、飛鳥がベクトルを少しだけ変えて話を続けてくれた。


「・・・・そっか~。けど北海道か~、行けるかな」

「行く気なんだ・・・」

「当たり前だよ!雪のイベントは今までほとんど行ってるんだから!」

「全部ではないんだね?」

「さすがに抽選式のが多いからね、当たらない時だってあるよ」

「ならもしその時が来たら、私がどうにかしましょうか」

「どうにかって、どうするの?」

「もちろん、家の力を使って・・・」

「いやダメダメ!それ絶対やらないでよ怜奈ちゃん!?」


なにやら不穏なことを言い出しかねない怜奈に、美乃梨が止めに入った。


「はは・・・・けどそっか、そういう理由もあるんだな。変なこと聞いて悪かったよ」

「ううん、気にしてないからいい」

「それにしても、雪は立派だよね、ちゃんとそういう目標があって、それに向かってひたむきに努力して。私には何もないからな~」

「あら、飛鳥には目標があるんじゃなかったかしら」

「え、何か言ったっけ」

「ほら、姫様とこ「ちょっと怜奈こっち来て!!」・・・むぐっ・・・」


何か言いかけた途中で飛鳥が横やりを入れると、怜奈の口を塞いで席を離れていった。


「・・・なんだったんだ、今の」

「・・・さあ、なんだろうねぇ」

「・・・?美乃梨は何か知ってるのか」


なぜかにやにやしながら二人を眺めていた美乃梨に、駿介が聞いてみるが。


「ううん、何も~」

「なんだよ、明らかに知ってる風な言い方じゃないか」

「ふふ、だから何も知らないってば」

「怪しいな~」


と疑ってはいるが、どうやらこれ以上は追及しないようだ。そうこうしているうちに飛鳥と怜奈が戻ってきた。


「お、おまたせ~」

「なんの話をしてたの?」

「ギクッ・・・ゆ、雪には関係ないから、気にしなくていいよ~」

「・・・?そう」


まあ飛鳥がそう言うのなら、これ以上は考えない様にしよう。


「ところで、そろそろいい時間だし、今日は解散しない?」

「そうだね、帰って早速CD聞きたいし」

「ええ、そうね」

「よし、んじゃあ解散するか」

「うん」


日も少し落ちてきたころ、ボクたちは解散した。帰る途中携帯の着信音が鳴り、確認してみると夕からの電話だった。


「もしもし、夕、どうしたの」

「あ、雪、今から時間あるかしら」

「うん、あるけど、何かあったの?」

「ええ、実は今日の歌番組の生放送で、出演するはずだった子が怪我をしてしまったみたいなの」

「・・・・大丈夫なの、その子」

「ええ、ただ怪我をしたのが足みたいで、出演は難しいってことみたい。それで他にすぐ出られる人はいないかとうちの事務所に連絡が来て」

「ボクに白羽の矢が立ったってことね」

「ええ、それでどうかしら」

「うん、大丈夫だよ、どこにいけばいい?」

「あなたの部屋にいて頂戴、迎えに行くわ」

「わかった、じゃあまたあとでね」


そう言って電話を切る。・・・怪我をした子は残念としか言いようがないな。こういう話って実はよくあることだし。それよりも・・・。


「なんか最近は、あの日のことをよく思い出すなぁ」


怪我のせいで出演できなくなったと聞いたとき、2年前のことを思い出したのだが。


「やめやめ、とにかく帰って、今のうちに発声練習からしておこうっと」


急遽決まったことだけど、生放送は嫌いじゃないし、歌える場所ができるなら、ボクにとっては大歓迎。気持ちを切り替えて帰宅するボクの足取りは、自然と軽くなっていた。

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