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お節介焼きの万屋・タイチ  作者: 花畑
報酬の使い道
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神の従僕☆

 西洋のファンタジー小説やゲームで良く見る翼の生えている(ドラゴン)ではなく、東洋系で見られる翼のないタイプの青き竜が、そこに居た。


『内在する仙力(シィェンリー)を視るに、何処ぞの勇者のようだが。”迷い人(ミィーレェン)”なら、放っておくとしよう』


 さっきまでの厄災(おんな)と同じように、脳内に直接的に話しかけられているので、専門用語のような言葉は分からないが、どうやら俺に興味関心は無いらしい。

 この竜の寝所(ねぐら)と思しき場所に乱入してきた俺を見逃してくれるのは、非常に助かるのだが、発言に不穏なものを感じる。


「突然の来訪を、お詫びします。これ以上、棲み処を騒がしくしないように、早々に退散いたします」


 この竜の心象を悪くしない為にも、早々に立ち去ろうと身体を起こすために水面に突き出た岩を掴んで立ち上がろうとする。


「え!?? おっふう!!!」


『ほう!!?』


 掴もうと思っていた岩を()()()、予想していた手応えを感じなかった身体がバランスを崩し、再び水面に叩きつけられる。

 感覚は有るが、手が、腕が、()()にでもなったように周囲の物に触れることが出来ない!??


『軽く視ただけ、推し量っただけだったが。お前の仙力は大したモノだな。もう()()され始めたか』


 掴もうとした岩に身体を預け、立ち上がろうとする直前で脚も、腕と同じように幽霊のようになり、立ち上がることが出来ない!!?



「これは、いったい……どういうことなんだ……」


『ここから離れてから消え去ると思っていたが、なかなかに規格外の”迷い人”なのだな。お前は。情けだ。死因(理由)を教えてやろう』


 予想外の連続に困惑する俺に、青き竜が答える。


『何事も限りがある。食料、能力、仙力、魂さえもだ。この世界に()()()()()()訳ではない”迷い人”に分け与える程、世界は優しくない。”迷い人”は遅かれ早かれ、そのように世界から排除される定めなのだ』


 手足を幽霊のようにされ、腰、胴、頭と消えゆく実感と恐怖を感じながらも、生き残るための情報を竜から得ようと、叫び出しそうなのを堪えつつ黙って聞く。


『通常なら、もっと後。消滅も、もっと緩やかだ。だが、ワシですら見誤るほどの莫大な仙力。世界が、(お前)を、仙力を、一刻も早く()()()()()としているのだ』




 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ーー


 ー




『アッハッハッハ!!! 素晴らしい!! 勇者に相応しき仙力! 混乱する中でも、ワシに詫びを入れて、退散しようとした礼節!!』


 一心不乱に、竜が高らかに笑っているが意に介さず、一心不乱に!


『少ない情報から、的確に最善最良の方法を選び出す知性! そして、それを躊躇なく実行する度胸!!!』


 岩に預けていた身体を三度(みたび)、水面に水没させてまで、一心不乱に()()()()


『消滅の前に、窒息という苦しき死の可能性がある選択だが……そうだ! それが正解だ!!』


 俺の脳内に、あの厄災(おんな)と同じく語り掛けることが出来て、対峙するだけでも”神”だと実感できる程の青き竜の棲み処の水を飲む!

 仙力を奪い返すために消滅されるのならば、消滅を遅らせるには新たに仙力とやらを蓄えればと考えたのだ!!

 ”神”が長年にわたって浸かっていたであろう池の水に、世界が取り返そうと躍起になる仙力とやらが含まれていないはずがないと判断して、一心不乱に水を飲む!!!





『気に入った! ワシの名において、しばしの在留を許そう!!!』


 途端に、手に、腕に、脚に、腰に、実体が戻り、立ち上がることが出来るようになる。


「……お礼を。命を助けてもらったことに感謝をします。……それで俺は、()()()に何をすれば良いでしょうか?」


「ますます気に入った。対価が要求されると分かるか。その通りだ。この世界と同様、(世界の護り手)であるワシとて優しくはない。()()()()()()()()()()()()だ」


 俺を実体化(在留)させるだけでなく、言語についての不備も解消したのが、口頭で会話できていることから分かる。



「妙な気配がしたと思い、暇つぶし(興味本位)で訪ねて来たが。なにやら面白そうなことを始める気だな。”青龍(チンロン)”よ」


「”四神(スーシェン)”達には、後で伝えるつもりだったのだが。流石に嗅ぎつけるのが速いな。”白虎(バイフー)”よ。お前も一枚、噛まぬか? この者に、我らの昨今の悩みを解決させようと思ってな」


 中空から現れた白き虎が、俺を品定めでもするように周囲を飛び回りながら、見つめてくる。


「俺を見ても動じない胆力。これ程の仙力を持ちながら、青龍に関心を抱かせる時間を与える程、残留できた機転。……良いと思うぞ。()()()でもあるし、俺達より上手く出来ると思うぞ」




 ーーーーーー



「つまり、貴方がたの代わりに、”願い”を叶えてくれば良いと?」


「タイチよ。お前の世界では、どうだか知らぬが。(ワシら)は信仰と引き換えに、願いを叶えている。ただ、最近は難しいのだ。人も増え、考え方も変わり、多種多様で、()()()()な願いが増えたせいでな」


 要約すると俺の世界でも見られたが、学問の神に恋愛成就を、商売の神に健康祈願を、交通安全の神に安産祈願をする馬鹿が増えている。

 もし仮に、俺の世界の神が”願い”を叶える義務が有ったなら、対応した神に案件を振れば良いのだが、この世界の主な神は”四”。


 河川の反乱などの水難の抑止、正しき流れを指し示す、水の神”青龍”。


 日々の健康、強靭な肉体を授ける、風の神”白虎”。


 五穀豊穣、地盤の強化、日々の生活を守る、土の神”玄武(シェァンウー)”。


 煮炊き、鍛冶、破壊と創造の象徴、火の神”朱雀(ヂゥーチュエ)”。



 対応できる幅が狭く、出来ることを組み合わせても”願い”を叶えることが難しくなっているのだ。



「お前にとっても、悪い話では無い。ワシらの代わりに”願い”を叶える過程で、いつしか世界から()()と判断されるかもしれぬ。そうなれば、わざわざワシらの代わりをせずに済む。そこからは好きに生きるが良いぞ」


 こうして、俺の第二の人生が、幕を開けたのだった。







次の話から本編みたいなものなので、朝の六時に投稿します。

一章の終わりまで、平日は午前六時、土日祝日は午前一時に投稿します。

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