”武器”決勝~祝砲~
「トウコツはんは、2人掛かりの方が嬉しいやろけど。シロちゃんは、キュウキちゃんには控えてもろたほうが良えけどなぁ」
大会中に出来た”借り”を返さんと、特級妖魔”九尾”のシロが飄々と告げる。
__『この”現身”が女の姿なのはナ。ウチとの戦いに敗れた者達が、悔しい顔をするからだ。見所のあるヤツなら、再戦のために強くなってくるからナ』
「もし、キュウキが出張るなら、ウチも本気を出すゾ。昨日の今日で弱体化したままのコントンだけを相手なら、この場に居るヤツ等だけで充分だロ!」
戦いを楽しむために出来うる限り、相手に合わせて弱体化した状態でいることを常とするトウコツが、”四凶”が全力で来るなら来いと息巻く。
むしろ、全力で来れないコントンよりもキュウキが参戦してくれた方が嬉しいといった様子であった。
「今、タイチさんを殺すと言ったのはコントンですか? ”殺す”と言ったからには、”殺される”覚悟が有るんですよね?」
鬼気迫る標準語で、まさに”鬼”の殺気を放ちながら笑顔のツァンが襲い掛からんとしていた。
「女性は怖いですね。……と言いたいところですが、私もタイチ師父を亡き者にすると言われるのであれば、怒りますよ!」
大会では、”極真武”では、あまり良いところの無かったフェイ・ランが欝憤を晴らすかのように奮起する。
「コンちゃん、大丈夫? コッちゃんと”九尾”の女狐。”鬼”と”万能”。弱体化したままならキツイっしょ? 逃げるなら手伝うよ?」
「貴女が素直に手を貸すとは思えませんね。貸し借りは作りたくないので____限界まで粘ってみます」
我、関せずを貫くキュウキを置き去りに、コントンが抵抗するために四人の前に躍り出る!
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「ぶべっ!!? コラ! 少しは手伝え!? ”幻惑”の女狐!!!」
「嫌やで~~。シロちゃんが頼まれたんわ、足止めやん? 苦戦しとんなら、トウコツはんが本気を出せば良えやんか!」
コントンの【神技】、”属性”のダメージを相手にも負わせる【呉越同舟】。
それを警戒したため、”属性”無しでも攻撃が通るであろうメンツが集められている。
しかし、ことごとく有効打を与えることなく返り討ちに遭い、地べたに転がされ、まともに触ることさえ出来ずにいた。
「”幻”で逃げられぬようにして、”属性”を使わずに私を追い詰めようと考えているようですが、無駄ですよ! 肉弾戦、近接戦で私に触れられるものなら、やって御覧なさい!!!」
コントンの【狂化】は、任意の”青龍”へ”朱雀”させる【仙術】。
攻撃の照準を狂わせ、体幹を狂わ|せ、思考を狂わせらる。
__『”奥義”は、咄嗟に出るくらい身体に覚え込ますために反復しても良いが。”禁じ手”は覚えるだけにしておけ』
技術とは、技能とは、見るだけでも覚えることが出来る。
タイチという手本を見てきた天才達が、【武道】を使え始めていることは確かなことで、その威力は”属性”を用いなくてもコントンにダメージを与えるには充分であった。
そう___
「ツァンちゃん____パーーンチ!!!」
「アッハッハッハ! 何処を狙っておいでですか!?」
___当たれば、の話なのだ。
「ここまで手応えを感じない相手は初めてです」
タイチの【武道】に一番長く触れ、見てきたフェイ・ランですらコントンに有効打を与えられずにいた。
当たれば特級妖魔ですら粉砕するツァンの攻撃も、フェイ・ランの華麗な攻撃も、考えてから行動している。
タイチのように身体に覚えさせ、無意識下でも咄嗟に行動できるように、身体に覚えさせる程の反復練習が出来ていない。
見ただけで覚えられる程の天才であるがゆえに、思考から行動へのタイムラグが発生していた。
そして、そのタイムラグにコントンの【狂化】が挟み込まれ、全てが明後日の方向へと導かれているのだ。
「すご~~い! コンちゃん、普通に勝てるんじゃない?」
手伝わないと言ったが、別に負けて欲しい訳でも無いキュウキが”四凶”の勝利の兆しに目を丸くする。
「ほ~~い。ほな! 時間切れって、ことで良えね?」
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突如として、通り過ぎた凄まじい”雷”の閃光!
遠く、”極真武”の会場からの”雷”の【神技】の輝き。
__『タイチ様! 実は【神技】の仙力は2級の仙石で物足りなくて、1級で少し過剰、特級は充分過ぎる程に過剰なんだよ!!!』
「クッソォ~~!! 間に合わなかったゾ!!!」
「間に合いませんでしたか、仕方ないですね。タイチ師父の”お節介”を受け入れますか……」
要らぬ”援護”が来るまでに、自分達で決着を付けたかったトウコツ達が悔しがっていた。
神を穿つ”雷”の【神技】が通り過ぎ、戦況は終結しようとしていた。
__『特級は充分過ぎる程に過剰なんだよ』
「コレでも死なないか……。距離も有る、【狂化】と【忘却】で照準も合わせにくい。こんなもんだな……」
シロが作った照準である【狐火】に向かって、【神穿雷】を放ったタイチが、手応えが少なかったことに悔しがっていた。
”特級”の中でも悪神の影響を受けた刑天の仙石には、タイチを全快させるだけの仙力が内包されている。
「仕方ありません、キュウキ! これは”借り”です!! 逃げるのを手伝ってください!!!」
「お~~!? シロちゃんの足止めが下手やったのを考えても、アレ喰ろうても元気やな~~」
少しズレたとはいえ、顔面への【神穿雷】を受け、口から上を焼失した状態でもコントンは滅んでいなかった。
囲まれた状況、タイチからの次弾の気配、悪足掻きはココまでと潔く判断したのだ。
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「どういうことで、やがりますか……。タイチ、何したでごぜーますですか!?」
突如として空へと放たれた”雷”に、ニーナを初めとした観客達が困惑を隠せないでいた。
「……五月蝿い邪魔者を追い払っただけだ」
コントンとキュウキ、悪神達の本気の逃走を確認し、脅威が去ったことをタイチは確信する。
「さあ、決着を付けよう。ニーナ・ワンフィールド」
こうして、”武器”決勝が幕を閉じようとしていた。
未だに”武器”決勝とタイトルに付けてるのは、試合が終わっていないからです




