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ダークファンタジーは萌と共に  作者: 深川 七草
第一章
4/40

*4話 見た目てきに*

「日も傾いてきたし、落ち着いたらお腹空いてきたな。ミントはどう?」

 真人は、相変わらずミントに話しかけてしまう。

「ああ、どうしても普通の人にしか見えないんだよな。そもそも食べるのかもわからないんだった」

 エレクトラの機嫌が直っているとは思えなかったが、部屋に籠っているわけにもいかないと真人は意を決して部屋を出ることにした。

「ミント、リビングに行こう」

 真人が立ち上がり話し掛けると、ミントも頷き立ち上がった。


 トントントントントン


 テレビで見たことあるー。

 真人は、台所に立ち音を立てるエレクトラにそう思うともう一つ、新たな感動を覚える。

「可愛いリボンだね」

 エレクトラは、料理をするにあたって長い髪を後ろでまとめポニーテールにしていたのだ。

「ありがとうございます。動きやすいですし、かまどを使うと暑いですからね」

 真人は、水色のタイルが張られたオシャレな台所なのに薪を使うと聞いて、ますます自分じゃ料理ができないと思う。

「そうだ。食材は?」

「はい、さっき召喚しておきました」

「ごめん、手伝わなくて」

「いえ、食材の召喚はさすがに一人でできますよ。それより、薪を運んでほしいのですが」

「薪も召喚したんだよね?」

「はい。でも家の中に召喚するわけには行かないので、外に置きっぱなしです。お風呂に使う分など結構量もありますし」

「えっと、料理に使う分をここに運んで、残りは壁際に積んでおけばいいんだね」

 真人はお風呂があること、そしてそれがひと昔前の五右衛門風呂のようなものだと理解する。

「行こ、ミント」

 真人はミントを連れて外に出て行った。


「わぁ、結構あるな。これならお風呂毎日入れるかも知れないけど、井戸から水も汲まないといけないって言ってたからどうなのかな」

 ミントは何も答えない。

「薪を積む場所はここだな」

 薪を置く場所には小さな屋根も付いており、横のスペースの壁にはお風呂に火をくべるための穴も開いている。しかし真人は、それよりも木の格子が高い場所にあることが気になっていた。

 家の土台の高さもあるしな。お風呂場の方から見ればそんなに高くないのかも?

「先に台所の薪を運んじゃうから、ミントはここで待ってて」

 真人は小さめに割られた薪を抱え、台所へと向かった。


「エレクトラ、こんなんで使えるかな?」

「ええ、大丈夫かと……どうかしましたか?」

 薪を床に置いた真人は、ケロッとしているエレクトラに話さなければならなかった。

「三人分あるかな?」

 …………

「彼女も食べるんですか?」

「わからないけど、食べるんじゃないかな? 見た目てきに」

「へーぇ。トイレに行ったり、お風呂に入ったりもするんですか? 見た目てきに」

「いや……わからないけど」

「どうしてですか? 造形したの真人さんじゃないですか!」

「いやでも、召喚したのエレクトラじゃん」

「ええ、召喚しましたよ。鬼を」

「鬼って」

「石で出来てないだけで、ゴーレムとか言うのと何が違うんですか?」

 真人には、何が違うのかわからなかった。

 調整スキルで喋らせたり動かしたりしてるなら、ゴーレムどころか他のモンスターとも一緒である。それに、壊さない理由が人型だからかと言われると、それよりも造形時に完全に好みが反映されてしまったことが問題だとわかっていたからだ。

 ……

「三人分ですね。そう言われればそうします。仕事ですから」

「ごめん。お願い」

 黙々と食材をカットするエレクトラに謝ると、真人は待たせているミントのもとへ向かった。

 やっぱり機嫌、直ってないよな。むしろ傷口を広げたかな。


 戻った真人が庭を見ると、散乱していた薪の半分ほどがなくなっている。そして、薪を両手で抱え歩くミントが置き場へ向かっているのが見えた。

 四、五、六、うん? あの太いのを六本も持ってるの? 一本一キロ近くあると思うけど。

 さらにミントは置き場に着くと、左手で全部を抱え右手で一本ずつ薪を重ね積んでいく。

 俺、あんなに持てないよ。それどころか腰やるわ。

 真人が自分の貧弱さを嘆いてくると、ミントが戻ってくる。

「運んでおいてくれたんだね。じゃあ、残りの半分も一緒にやろうか?」

 ミントが頷き再開するので、真人も慌てて薪を運ぶ。

 指示してないのに運ぶなんて。造形がイメージなのはともかく、調整もこんな漠然としてるいるものなのか?

 真人は、思考の沼にはまっていく。

 歩くとか、握るとかって、習わなくてもできるようになるよな。見た目や誕生ストーリーからロボットっぽい扱いをしていたけど、その、モンスターとは言わなくても、プログラムとかAIで動くんじゃないってことだよな。

「はぁ」

 薪が運び終わり、真人はため息をつく。

「ご飯できたかな。あーでも、水も運ばないといけないのか」

 真人が井戸に向かって歩くと、ミントは後ろをついて行く。

「ねえ、ミントは言葉わかるよね?」

「うん」

「お腹空いた?」

「たぶん」

 幼い喋りとはいえ、普通に返してくるミントに真人は進化を感じる。

「ありゃ、これ桶で汲むのか?」

 井戸に着き確認した真人は、これではいつ風呂の水が溜まるかわからないと思う。

「ミント、一杯だけ汲んで一回戻ろう」

 真人は桶に飲む分だけ汲むと、それを持って戻ることにした。


「終わりましたか?」

 戻ってきた真人にエレクトラが尋ねた。

「うん、薪は片づけたけど、あれじゃあ水を汲むの大変だね。とりあえず、飲む分だけは持ってきたけど」

「でしたらそこの、飲み水用の瓶に入れておいてください」

 真人が瓶に水を移していると、エレクトラは食事をテーブルに並べだす。

「お、完成だね。お茶いれようか?」

「いえ、それも私がやりますので。それよりも席はどうしますか?」

「うんと、そっちに俺とミントが座るから、」

「わかりました」

 真人の話が終わる前に、エレクトラは返事をした。


「さあ座って」

 ミントを座らせ自分も座った真人は、テーブルの上を確認する。

 木製のスプーンとフォークか。箸の方が気楽なんだけどな。

 でも、平たい皿には芋にトウモロコシ、深い皿にはスープ、中央に置かれたバケットには小さめの丸いパンだから箸じゃなくて当たり前か。

 そして、お茶を持ってきたエレクトラも座ると食事が始まる。

「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

 エレクトラは目を丸くした。

「その子、こんにちは以外も喋るんですね」

「う、うん」

 実は真人も、適切な反応に驚いていた。

「これ、ジャガイモ?」

 沈黙が怖い真人は、一口食べるとわかりきっていることを聞く。

「はい。味、薄かったでしょうか?」

「ううん、丁度いいよ」

「ところで真人さん。その子のこと、ミントって呼んでいるんですか?」

 変態野郎と言わんばかりの視線を向けられ真人は硬直する。

「うん、私、ミント」

「エレクトラよ」

 代わりに応えてしまうミントに、何事もなかったようにエレクトラも名乗った。

「そうだ! エレクトラ。鉄ってないかな?」

 耐え難い空気を感じていた真人は、間を埋められそうな話題を思い出す。

「ええ? 鉄ですか?」

「うん、金属があれば造形で、ポンプを作れると思うんだ。全部木製で作るのは厳しいかなって」

「そうですね。鉄ならイメージできますし、多少なら召喚できると思いますけど」

「じゃあ明日、試してみよう」

「はい。それはわかりましたが、では今日のお風呂はやめておきますか?」

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