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ダークファンタジーは萌と共に  作者: 深川 七草
第二章
20/40

*20話 商工会*

「缶詰とやらは、これで全部ですね」

「ありがとうグレイス。二人でやってたら、いつ終わるかわからないところだよ」

 お礼を言うミントに真人は、お前がつまみ食いをし過ぎなんだよと突っ込みそうになる。

「ところでこれ、どうやって開けるんですか?」

「これはね、缶切りっていう専用の道具を使うの。蓋を固定するために折った部分があるでしょ? そこに引っ掛けて、てこの原理で刃を缶の淵に当てて切り込みを入れていくんだ」

 真人はグレイスに、事前に作っておいた缶切りを見せる。

「なるほど。あとは、鉄が高いことぐらいですかね問題は。瓶なら再利用ができていいんですけど」

 造形を使える真人からすれば鉄も再利用できるので瓶に比べて不利な点はない。しかし、材料である鉄の値段はグレイスの言う通り問題であった。

「そうなんだよね。鉄があればもっと作れるのに。どこかで安く手に入らないかな?」

「商工会のアルバートさんに聞いてみたらどうですか? どこでもあまり変わらないかも知れませんけど、流通に詳しいので少しは安く買えるかもです」

 真人はまた商工会かと思ったが、他の用もあったのでそれも聞こうと思う。

「じゃあ、そうしてみようかな。今日は、遅くまで手伝ってくれてありがとう」

「いえいえ。ミントさんと仲良くなれて、うれしかったです。明日、お立ちになるんですよね? 後はやっておきますのでもうお休みください」

 真人とミントは言葉に甘え、缶詰を背負うと部屋へ戻ることにした。

「ミント。明日は商工会で話を聞いてから町を出るね」

「うん。お金が貯まったら、またここに泊まりにこようね」


 グレイスに見送られ宿を出ると、二人は商工会へ向かった。

「こんにちは」

 玄関を入り、事務所と思われる部屋を覗く。

「あ、こんにちは。どうでした?」

 デスクでの作業を中断し、返事をするのは昨日の中年男性である。

「おかげさまで商品を置いてくれる場所は見つかりました」

「そうですか。それはよかった」

「それで申し訳ないのですが、また教えていただきたいと思いまして」

 中年男性は、横にある応接スペースに真人とミントを案内する。

「挨拶が遅れました。シビル商工会副会長のアルバートです」

「俺は真人で、こっちはミントです。旅をしています」

 グレイスが言っていたのはこの人かと思いながら、真人は挨拶が終わると座り質問に入った。

「昨日の話からもわかると思うのですが、この辺に詳しくないのです。それで地図が手に入らないかと思いまして」

「地図ですか? うちでも仕事で使っているものが一冊あるぐらいですからね。どこで売ってるかなー」

 真人は、配布用の簡単な地図でもあるのではと期待していたが、どうやらアルバートは売り物の地図を探していると勘違いしたらしい。

「周辺の街道がどんな感じか知れればいいのですが」

「それじゃあ、地図を持ってきますよ」

 アルバートは棚から取り出し持ってくるが、広げるタイプの一枚地図ではなく本になっていた。

 真人はそれを見て、この世界では地図が貴重品ではないかと想像する。

 何故ならそれが、新聞ぐらい、つまりA2ぐらいの大きさもある上に、表紙も背表紙も革で保護されていたからである。

「ここが今いる、シビルの町ですね」

 それを開き、アルバートは町を指し示す。

「街道ですと、東がヒタ村、北がヨルダ村、南が港町ガレンへ行く道です」

「このヒタ村は海沿いですかね?」

「小さな漁村ですよ。でもここだけの話、ちょっと前に馬車がモンスターに襲われたと騒がれましたから、お嬢さん連れではお勧めしにくいですね。」

 真人はもちろんモンスターが気になった。だが、モンスターがいなくなったから転移されたはずなのに、整備されている街道にまで出るということの方が疑問であった。

「街道はどこも、馬車が通れるぐらい広いのですか?」

「ええ、雨が続いたりすれば別ですけど通れますよ。とりあえず旅でしたら、ヨルダ村がいいでしょ。果物もたくさん取れて豊かな村ですよ」

 話が長くなる中、真人にはもう一つ聞かなければならないことがあった。

「市で鍋などを買ったのですが、鉄製品はやはり高いですね。どこかで安く手に入りませんか?」

「ああ、変わったお名前だとは思っていましたが、真人さんは外国の方なのですね? この辺じゃ高いですよね。鉄製品はガレン経由なのでどうしても高くなります」

 ガレンは港町だと言っていたので、現地にはない輸入品みたいなものだと真人は理解する。

「なるほど。ですが先ほど、モンスターが出ると仰ったじゃないですか? 武器屋もありませんし、どうやって戦ってるんですか?」

「それは、モンスターなんてごくまれですし、強くはないですからね。成人男性なら木の棒でも竹やりでも負けませんよ。それに、普段いる場所は人里離れたところと聞いています。本当に怖いのは盗賊ですよ」

「ありがとうございました。参考になりました」

 真人は、長話に付き合ってくれたアルバートに感謝すると共に、盗賊がいるのかよと思いながら商工会の建物を出るのであった。


 真人とミントは、勧められた北ではなく東のゲートから町を出る。そして、モンスターが現れたという街道を進んでいた。

「真人、ヒタ村に行くの?」

「最終的にはね。でも、モンスターを探さないといけないから南東にずれようと思うんだ」


 記憶だけを頼りに街道を逸れ、野営を繰り返していた真人とミントは景色の変化が気になっていた。

「真人、薪に使えそうな枝が減ってきたね」

「この辺、木も少ないし、あっても低いな」

 動物すらいるかもわからず、街道方向へ戻るべきなのかと真人が迷っていたときのことである。

「あれあれ、なんかいるよ」

 ミントが岩場を指すのだが、真人にはよく見えない。

「もうちょっと近づいてみようか」

 腰を屈め枝葉に隠れ近寄るが、速攻で見つかってしまう。


 シャー!


「うわ、立ってるけど蜥蜴かな。青光りしてるし、人の背丈ぐらいあるとか勘弁してくれよ」

「真人、捕まえよう!」

「うん。だけど奴、竹槍を持ってるし、周りに仲間がいるかもだから注意しないと」

 ミントは耳を貸さず、お構いなしに真っすぐ向かって行く。

 ちょっと気持ち悪いけど、リザードマンってやつだな。過去の生き残りかな? 物語りだと戦士系の設定が多いから気をつけないとな。

 盾を構えた真人は、ミントを追いかけながら敵の正体を推察していた。


 シャ! シャ!


 だが想像に反し、リザードマンは全力で反対方向に走っていく。

 ええ、ちょっと待ってよ。足早くない?

 置いて行かれる真人をよそに、ミントも負けずと猛ダッシュをする。

「ミントキーック!」

 真人は初めて聞いた言葉と共に、飛び蹴りを食らい転がるリザードマンの姿を見た。

「い、いまだぁ~、ハァハァハァ」


 ファァーン!


 グダグダになりながら調整を使うと、真人の心の中で音がした。

 スキルを受けたリザードマンは、槍を拾い立ち上がると棒立ちのまま命令を待っているようだ。

「お前一人か?」

「シャー」

 真人の質問に、リザードマンはシャーと答える。

「真人。リザードマン、何て言ってるの?」

「うむ、俺にもわからん。だが、妙案がある」

 真人はそう言うと、リザードマンにさらに調整のスキルを使う。

「おろわまはろら」

「真人。リザードマン、何て言ってるの?」

「うむ、ミント。やはりわからん。だが、何となく喋れない理由はわかった」

『造形!』

 真人が造形を使うと、リザードマンの口回りが少し変形する。

「お前は、一人なのか?」

「俺は西側の見張りだ」

「じゃあ、仲間のところへ戻って俺たちのことを報告しようとしてたんだな」

「そうだ」

「真人。私にも、リザードマンが言ってることわかるよ」

「たぶん、みんなわかると思うけど」

「でもさ、何で顔の形が変わるとき、一緒に体の色も赤くなったの?」

「喋れるやつを隊長にしようかと思って。これで見分けがつくだろ」

「ふーん」

「それじゃあミント。仲間のいるところまで案内してもらって、もっと捕まえるってことでいいよね?」

「うん、任せて」

 このあと、リザードマンたちが集まっている岩場の陰まで行くと、赤いリザードマンを使って数体ずつ呼び寄せ調整をかけていく。

「真人、卑怯だよ。私の出番ないし」

「いいの! 無駄に戦わなくて」

 そして、この辺りにいた十八体のリザードマンを仲間し一息つく。

「隊長と副隊長の二体は喋れるようにしておくか」

「ねえ真人、そろそろご飯にしようよ」

 ミントに言われ夕飯の準備に入るが、リザードマンたちの様子がソワソワしている。

「心配しなくてもお前たちなんて食べないから」

 真人の冗談に、隊長リザードマンが思わぬ返答をした。


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