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ダークファンタジーは萌と共に  作者: 深川 七草
第二章
18/40

*18話 スペース*

 真人とミントは、町に到着すると市をうろつき店を出せそうな場所を探していた。

「整列しているところを見ると、仕切っている人がいるよね」

 右も左もわからないとはいえ、商売をやらないわけにはいかない。

「どうだい兄ちゃん?」

 手ぬぐいを頭に巻いた魚売りが、目の合った真人に魚を勧める。

「すいません、客じゃないんです。あの、ここでお店を出すためには、どなたに許可をもらえばいいのでしょうか?」

「ええ? 町の商工会だけど、事前に申し込んでないと無理だろ」

 真人とミントは、それでも商工会の許可をもらおうと考え行ってみることにした。


「誰かいませんか?」

 教えられた建物に入り真人が声を出すと、中年の男性が奥から出てきた。

「お店を出す許可ですか? 保証料を預けていただいてから、場所の割り当ての抽選になります」

「いま申し込むと、いつお店を出せますか?」

「常に、一週間後の抽選をしていますので、当たれば来週ですよ」

 当然、真人たちにそんな時間はない。何より、宿代がかかるので滞在する予定がなかったのだ。

「あの、いますぐお店を出せる方法はないですかね?」

「ないですね」

「お金がいるんです。売り物はあるんです」

「そう言われてもなぁ」

 中年男性は、真人の必死さに難しいだろうと思いながらも提案する。

「ちょっとグレーですけど、代理販売か空いているスペースに物を置かせてもらってはどうでしょうか?」

「わかりました。探してみます」

 真人は、ミントを引き連れ市に戻るのであった。


「片っ端から聞いてみよう!」

 真人の言葉にミントも頷き、気合が入った二人は聞いて回ることにした。

「はぁ? そんなスペースあるわけないだろ」

「それっていいんですか? なら、当たった人に売るのを頼めばいいじゃないですか?」

「それができるなら、売り物がない連中がみんな申し込んでピンハネできるじゃねえか!」

 客でないだけでなく、違反行為をしろと言われたと思い売り子たちは皆怒る。

「真人、さっきの魚屋さんにも聞いてみよ」

 ミントも諦めずにそう言うので、真人は腹をくくり聞いてみることにした。

「よお、兄ちゃん。どうだった」

 商工会でのやり取りを説明し、協力を仰ぐ。

「勘弁してくれよ。商売できなくなっちまう」

 顔を歪めた魚売りは事情を続けた。

「いいか? 商工会が見逃そうとしても、周りの店が黙っちゃいない。場所取りも競争なんだよ。俺は漁師をやっていて自分で売りにきているんだが、もしそんなことをやったら売る場所がなくなるだけじゃねぇ。捕った魚を扱ってくれる行商もいなくなるってもんよ」

 真人は、断られ続けたからだけではなく、魚売りの説明で誰も引き受けるわけがないとわかる。

「そうですよね。ミント行こ」

「う、うん」

 町の入り口にかかる橋まで戻ると、真人は欄干に持たれかかりため息をついた。

 別に、悪い人たちじゃないんだ。みんな生活があるから俺たちのためにルールを破れないんだ。

「真人、もう頼みに行かないの?」

「うん、みんな売る場所がなくなっちゃうと困るから無理だよ」

「お爺さんも?」

 お爺さん? そうか! 市場ではなく、自分で店を構えている者ならどうなんだ?

「ミント、行ってみよう」

 真人は、薬屋の老人に相談してみることにした。


「いらっしゃい……って、お前さんたちか」

「どうも、覚えていてくれました?」

「当たり前じゃ。あんな酷い値切りをする奴は他におらん!」

「それで、今日もなんですが……」

「なんじゃい、買いにきたんじゃないんかい?」

「いえ、買うかも知れません」

「はあ?」

「実は、市で売ろうと商品を持ってきたのですが、売る場所がなくて困っているんです。もし、ここで売って下されば、その売り上げでここの商品を買います」

「そんな一杯背負ってきて、置くところなんぞあるわけないじゃろ」

「このリュック、本も入ってるんですよ」

 真人は、ミントのリュックから薬の本を引っ張り出し端を見せる。

「人の話を聞いとるのか! この戯けが」

「そんなこと言わずに、本を売っているスペースを少し開けて置かせてくれませんか?」

 老人はため息をつく。

「何か事情があるとはわかる。じゃが、ただ置いておいてもしょうがないじゃろ。何を持ってきたんじゃ?」

 真人は、すかさず商品の説明に入る。

「フム、いくつか問題がある」

「問題ですか?」

「まず、ここは人通りが少ないから雑貨を買う人が来るかどうか。それに、来る人が少ないということは噂が広がらんということじゃ」

「では、商品が悪いわけではないのですね?」

「正直、良くも悪くもない程度じゃな。価格次第というところか」

 真人は、スキルを使っている分は安くなるはずだと思うが、場所代や手数料によっては厳しいのかも知れないと考える。

「あの、まず置かせていただいて、売れたらその金額から一定のお金を払うということでどうでしょうか? ひとつでも構いません。場所は必要ですが、物はここに置きっぱなしになるのですから俺たちが逃げるとかはありませんし」

「うん? つまり売る仕事もワシがするということだな」

「そうですね。その手数料と場所代が一定額の根拠です」

「お前さん、お金に困っとるんじゃろ?」

「わかりますか?」

「ああ、誰が見ても困ってるじゃろ。それで売り物をワシに任せてどこへ行くんじゃ?」

「冒険と言いますか、旅と言いますか。ちょっと調査に行かないといけないんです」

「調査? ようわからんの。まあ、置いてやってもいいが、その代わり取り分はフィフティーフィフティーじゃぞい」

「ありがとうございます」

 真人がお辞儀をすると、ミントもぴょこっと頭を下げた。

 店主の老人による、この不二子ちゃんのような提案は決して悪くなかった。むしろ、お情けである。儲けは少ないが、これで店も店番もなしに売り上げの五割を回収することができるのだから。

「わしの名は、クリフ。受けたからには仕事はしっかりやるからな」

「俺は真人で、こっちがミントです」

「じゃが、さっきも言ったように仮に売れるとしても時間がかかるじゃろう。木工品や鞄だから腐ることがないとはいえ、金になるのは相当先じゃぞい?」

「そうですね……」

 クリフの言うことは正論である。仮に、市だとしてもいつ売れるかはわからなかったはずだ。

「ワシも応援してやりたいんじゃが、先払いしてやれるほどの金はない」

 真人は困り、店を見渡す。

「あの瓶の中身、薬草ですよね?」

「ああ、そういうことか。旅に出るなら、薬草や毒消しが必要だからな」

「では、先にこれを頂いてもいいですか?」

「うむ。戻ってきたとき、売り上げから薬代を引いて余れば金を渡そう。足りなきゃもってこいよ」

「わかりました。本当に助かります」

 真人はまた、頭を下げた。

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