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ダークファンタジーは萌と共に  作者: 深川 七草
第二章
15/40

*15話 スライム*

 時間を持て余した二人は、再び探索を開始する。

「本当にギルドもないし、武器屋とかもないんだね」

「そうだね。あそこ、もう町の端じゃない? ねえねえ、見張りとかもいないし、一度外に出てみようよ」

 知佳の提案で町を出てもそのまま道は続いており、周りは草原で平和そのものである。

「知佳。あの林とか何かいそうじゃない?」

「うーん、近くに見えるけど、これって周りに何もないから行けそうに見えるだけだよね? 実際目指すといつまでも着かないというか」

「だよね。じゃあ、あそこの岩までにしておこうか」

 歩き疲れていた二人は、岩場まで行くとそれに腰掛けようとした。


 ピヨン! ピヨン!


「ねえ翔、あれスライムじゃない?」

「うん、スライムだね」

「モンスターよね」

「でも、モンスターなんて滅多にいないって言ってたような」

「なに? じゃあこの世界では、これがモンスターじゃないからモンスターがいないってことになってるの?」

「わからないけど、僕勇者みたいだし戦ってもいいんじゃないかな」

「そうよね。散々な扱いを受けたし、遠慮なんてすることないわよね」

 二人は、スライムの前に立ちはだかり武器を構えた。

 翔は剣を抜き。

 知佳は、杖を掲げる。

「おりゃ!」「えい!」

 瞬殺であった。

「知佳、ステータス表示とか出た?」

「出てないよ。翔の一撃目で死んでたんじゃないの?」

「僕の方も出てないよ。レベル差があり過ぎて何のポイントも手に入らなかってこと?」

「そもそもそういうのって出るの? 空中に文字が出るとかってハイテク過ぎない?」

 二人は、倒したスライムの周辺を確認してドロップがないことを確かめると、町に戻り夜まで休憩することにした。


「く、暗いね」

 知佳は、翔の後ろを隠れるように歩く。

 外は、建物から漏れる光が頼りで、街灯などと言えるものがなかったからだ。

 目的地である酒場の前を過ぎると、店から男たちの笑い声が響いてきた。

「大丈夫かな? マスターは裏口から入って来いって言ってたけど」

「何かあったら僕が守るよ」

「ほんと?」

「ステータスマックスだし」

「ほんとかな?」

 従業員口から入った二人は、そのまま客席のあるホールに入った。

「酒臭いな……」

「お、坊主」

「え、あの」

 ぼやいた翔が、早速カウンターに座る一人に捕まった。

「なんだ? ミルクでも飲みにきたのか?」

「じゃあそうしようかな……」

 小声で返す翔に、カウンターの中にいたマスターが嘆く。

「ミルクの方が保管が大変で割に合わないんだけどな」

 ガッハッハッハッハ

 カウンター席の数人が笑い出す。

「お前たち、聞きたいことがあるんだろ? 彼らは常連だから平気だ」

 マスターが、チャンスを作ってくれたのだ。

「そうなんです。僕たち勇者としてきたんですが、冒険者ギルドがなくてお金が稼げなくて困ってるんです」

 笑っていたお客たちは目を丸くし沈黙する。

 そして、再び爆笑した。

 ガッハッハッハッハ

「勇者って、でもその鎧も剣もすごいな」

 常連の一人がそう言うともう一人も、

「それを売れば金になりそうだがな。モンスターなんていないんだし」

と続ける。

「まあ、そうからかってやんなよ。彼ら本気らしいんだ」

 マスターがそう言うと、翔が続けて昼間の話をした。

「ほー、スライムを見たって? なんだそれ?」

 ガッハッハッハッハ

「こう、ポヨンポヨンしているやつですよ」

「ポヨンポヨンって、なあ姉ちゃん?」

 ガッハッハッハッハ

 酔っ払いたちは、知佳の方を見た。

「で! あれはモンスターじゃないんですか!」

 知佳は、怒りと恥ずかしさで顔を赤くしながら聞く。

「そんな変な生き物は知らねえな、ポヨンポヨン」

「捕まえたら金になるかもな、ポヨンポヨン」

 酔っ払いたちは、更に面白がって知佳にポヨンポヨン言っている。

「あの、マスター。この人たち焼いてもいいですか?」

 知佳は、マスターに話かけると同時に両手を前に出す。そして、手のひらを向かい合わせにすると、その間に火の玉を作って見せた。

「「「うおおおーーー!!」」」

 酔っ払いたちもマスターも体を背けて驚く。

「お嬢ちゃん、どうやったのそれ?」

「芝居小屋とかでやったら稼げるんじゃねえか?」

 酔っ払いたちからポヨンは消えるが、聞きたいのは冒険者としての仕事である。

 そう思っていた翔に、後ろから話かける初老の男性がいた。

 何でも、商品を輸送している馬車がモンスターに襲われることがあり、それを退治してくれる人を探していたところであったと言うのだ。

 知佳の魔法を見て、翔の装備も伊達じゃないとわかったらしい。

 続けて男性が依頼したいとその場で申し出るので、二人はこれを承諾することにした。


 その後、これを皮切りに二人のもとには仕事が舞い込んでくるようになる。

 スライムのようなモンスターから野犬やコウモリなどの動物退治まで、次々と頼まれるので生活費には困らない程度まで稼げていた。

「ねえ翔。モンスターが少ないって聞いてたからどうなるかと思ったけど順調だね」

「知らない町を回るのも悪くないしね。ただちょっと、敵が物足りないような気もするけど、僕が勇者だからしょうがないかな」

「なに調子に乗ってるのよ。ヘマしては私に回復させてくせに」

 二人は、行く先々で問題を解決していくのであった。


             ――――――


「さて、いよいよ勇者様はミソラ村に入るようですね」

 ハルモニアは一人つぶやくと、次のモンスターのことで考えを巡らせていた。


 何も知らない翔と知佳は、村に入ると早速村長のもとを訪ねた。

「紹介状ですか? 平和が訪れ冒険者など消えたかと思っていましたが、まさか勇者様がいらっしゃるとは」

「前の村で、困っていると聞いてきたのですが……」

 翔は、前の村で紹介状を書いてもらった理由と来た理由を説明する。しかし、気の弱そうな若い男に、この人じゃ話にならないかなと思う。

「申し遅れました。私はアーロンと申します。いま村長は、城に兵を出してくれるようお願いに行ってましていないのです」

 彼は村の名士で、村長が帰ってくるまでのあいだ代行をやらされているだけだとわかる。だがそれは、翔を納得させると同時に依頼もないのではと思わせた。

「では、僕たちへの依頼はありませんかね?」

「とんでもございません。力をお貸しください」

 アーロンは慌て願い出る。

「熊や鹿のモンスターは村や畑だけでなく、街道を行く人々まで襲っているのです」

「ただの熊や鹿でも危ないとは思いますけど、そいつらはモンスターなんですね」

「はい。目は光、体は紫色の部分などもあるそうです。立ち上がったまま歩くこともできるとか」

「でも、兵士がくるなら倒せるような気もしますけど」

「そのことなのですが、村長からの手紙によると熊や鹿の数に対して送られてくる兵が少ないようなのです。目撃や襲撃の情報は同時に複数くることもありますし、一か所に数体いる模様です」

「見た目だけでなく、集団行動までとるなんて本当にモンスターみたいですね」

「もちろん、勇者様にもお一人で立ち向かえとは申しません。兵士たちが来てから一緒に行っていただければと思います」

 そしてアーロンは、続けて人を呼んだ。

「トムさん」

 すると、茶色い髪を刈り上げにしている筋肉ムキムキの大男が現れた。

「勇者様、この者に村の案内をさせますので見てきてください。あと、泊まる場所もこちらで用意いたしますので、終わりましたらそちらまでお送りさせます」

 トムの体つきに、この人なら熊でも倒せるんじゃないかと自分の必要性を翔は考えてしまう。

「では、行きましょうか勇者様」

 トムに言われ、翔と知佳は村の見学に出るのであった。

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