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ツンデレアクロバティック娘

作品第2号です!

ぬるい目でお願いします(^ ^)



 昔、昔のそのまた昔。


 ある所に、綺麗な金髪と空の様に澄んだ青い目を持った美しい少女が居ました。


 少女は綺麗な心を持っていましたが、なにぶん、素直になれない性格だったので、周りからはあだ名の「シンデレラ」をもじって「ツンデレラ」と呼ばれて居ました。


 何故シンデレラと呼ばれていたのかというと、お掃除が好きな変わった子で、よく灰まみれになっていたからです。


 ツンデレラのお母さんは早くして亡くなってしまい、身寄りはお父さんしか居ませんでした。


 それでも、ツンデレラは幸せでした。


「行って来ます。良い子にしているんだよ」


「ぶ、無事に帰って来なさいよ!


 かっ、勘違いしないでよね!


 別にお父様の事なんて心配して無いんだから!」


 お父さんはツンデレラが素直になれない性格だと理解していたので、実は心配している事を分かっていました。


 お父さんはツンデレラの頭を撫でて、仕事に行ってしまいました。


 お父さんが仕事に行ってしまうと、ツンデレラは暇です。


 一緒に遊ぶ友達は居ません。


 ツンデレラは素直になれない性格で周りに誤解を与えてしまう為、友達は一人もいませんでした。


 それでも、ツンデレラは「寂しい」とは思いませんでした。


 何故なら、そんなツンデレラにも話し相手が居たからです。


 それは、よく家に遊びに来る動物達です。


「ピィピィ、チュンチュン」


「わんわん」


「ええ、そうね。紅茶にミルクは常識よね」


 訳すと、こうなります。


「ワイ、こないだ煎餅拾ってなぁ」


「ウェヒヒウォへへフ」


「ええ、そうね。紅茶にミルクは常識よね」


 この様に、全くコミュニケーションなんて成り立っていませんでしたが、ツンデレラは会話していると感じていました。


 そんなツンデレラを見て、周りの人達は思いました。


「アイツ、友達居なさ過ぎて動物と会話し出してる…ヤバ…」


 そう言われて、黙っていられないのがツンデレラです。


 直ぐにその人達に言い返してやりました。


「誰がぼっちよ!


 別に、人とお友達になりたいだなんて思って無いんだからねっ、馬鹿ぁ!」


 そう言うツンデレラは涙目でした。


 ある日、お父さんが新しいお母さんを連れて来ました。


 お義母さんはバツイチで、二人の連れ子がいました。


 一番上のお義姉さんはサンバ踊ってそうな人でした。


 黒い肌にきんきらきんのアフロという奇抜な出で立ちでした。


 その人からはよく『シャカシャカ』という音が聞こえました。


 ツンデレラは「きっとマラカスの化身なのね」と思いました。


 ツンデレラはコウ○ン(C○WON) ハイレゾプレーヤー○LENUE/D ○D-32G-SBの存在を知りませんでした。


 人の友達が居ないので、そういう物に疎かったのです。


 二番目のお義姉さんはおかっぱ黒髪黒目で分厚いぐるぐるメガネをかけていました。


 近づくと、「デュフwww」と言う鳴き声が聞こえました。


 お義母さんは意地悪な人でした。


 お父さんの居ない所でツンデレラを虐めていました。


 自分の娘達には無い綺麗な金髪の髪が妬ましかったのです。


 ツンデレラはお父さんに継母から虐められている事を言いませんでした。


 お父さんがその事を知ったら悲しむと思ったからです。


 再婚から暫くして、お父さんは死んでしまいました。


 ツンデレラは悲しみにくれました。


「何で死んじゃったのよぉ…お父様の馬鹿ぁ…」


 しかし、神様は非情です。


 継母は父がいなくなったのをこれ幸いとばかりにツンデレラを虐めまくりました。


 ツンデレラのツインテールを紐の様に引っ張ったり、ツンデレラを奴隷のように扱ったり、子供に任せられる量を超えた仕事を押し付けました。


 ツンデレラは次第に「いつか継母をぶん殴りたい」と思うようになりました。


 その様子を見て、一番目のお義姉さんは無関心でしたが、二番目のお義姉さんは可哀想に思いました。


 二番目のお義姉さんは継母の目の届かない所でツンデレラの仕事を手伝ったり、甘い物をこっそりあげていました。


 因みにツンデレラはしょっぱい物の方が好きでした。


 二番目のお義姉さんは画家でした。


 その為、偶にツンデレラもモデルになっていました。


 二番目のお義姉さんはツンデレラのツンデレっぷりを見て萌えました。


 オタクだったのです。


 ツンデレラがツンデレする度、二番目のお義姉さんは言いました。


「ツンデレktkrッ!」


 ツンデレラにはその言葉の意味が分かりませんでした。


「きっと食べ物ね」


 ツンデレラはまだ見ぬ食べ物に思いを馳せました。


 ツンデレラは継母からご飯をあまり貰えなかったのでご飯への執着度が異常に高くなってました。


 ある時、継母達は舞踏会へ行く事になりました。


 ツンデレラは継母の事が殴りたい位に嫌いだったのでストレートに「行きたい」という事を伝えました。


 ツンデレは好きな人専用なのです。


 しかし、継母はツンデレラの嫌がる事をしたいので許しませんでした。


 継母は言いました。


「ツンデレラ、貴女は舞踏会に来てはいけません。


 第一にドレスが無いでしょう!


 そんな灰まみれのみっともない姿で舞踏会へだなんて許しませんわ!」


 継母はツンデレラの名前をそのままツンデレラだと思っていました。


 あだ名だと言う事は知らなかったのです。


 継母はツンデレラが自分のドレスを一から仕上げ無いように二人のお義姉さん達のドレスの用意を押し付けました。


 ツンデレラはお金を1円も持っていません。


 ドレスを買う事なんて出来ませんでした。


 それなら作るしか無いのですが、作る時間が継母から奪われてしまいました。


 ツンデレラはキレそうになりました。


 というのも、ツンデレラは舞踏会には一ミリも興味はありません。


 そこに出てくるバイキングが目的なのです。


 ツンデレラの舞踏会行きを阻止するという事はバイキングを阻止するという事。


 そのバイキングを阻止するという事はツンデレラにとってとてつもなく有罪(ギルティ)な事でした。


 前述の通り、ツンデレラは御飯への執着度が異常に高いので、食べ放題のバイキングなど天国に行く様なものです。


 その天国が、継母の手で潰された。


 ツンデレラは、復讐の意も兼ねて、意地でもついて行く事に決めました。


 ツンデレラがかなりキレてた様子を見た二番目のお義姉さんが言いました。


「デュフ…私のを貸しますよ…」


 二番目のお義姉さんは結構優しい人でした。


 ツンデレラはツンデレを発揮させつつ喜んで二番目のお義姉さんのドレスを借りる事にしました。


 しかし、サイズが合いません。


 二番目のお義姉さんも小さい方だったのですが、ツンデレラはそれよりももっと小さかったのです。


 理由は単純、継母からご飯を貰えないから。


 ツンデレラは継母に殺意を募らせました。


 その様子を見ていた一番目のお義姉さんが言いました。


「ワ『シャカ』シノ、『シャカシャカ』カシ『シャカ』イデスヨ『シャカシャカ』」


 一番目のお義姉さんのセリフは、シャカシャカうるさかったのですが辛うじて聞き取れました。


「か、感謝なんてして無いんだからねっ!


 これは本当よ!」


 ツンデレラは喜びました。


 この頃になると一番目のお義姉さんもツンデレラが素直になれない性格だという事を理解していました。


 しかし、ツンデレラはまたすぐに落胆しました。


 一番目のお義姉さんは大きかったのです。


 一番目のお義姉さんは裾のサイズを合わせれば何とかなると思っていましたが、無理でした。


 ツンデレラはまた継母へ殺意を募らせました。


 殺意のレベルが2になりました。


 二人のお義姉さんがツンデレラを着せ替えしているのを見た継母は怒りました。


「貴女達、何やってるの!


 ツンデレラに服を貸す事は禁止です!」


 二人のお義姉さんは継母に見つかった途端蜘蛛の子を散らすように逃げてしまいました。


 二人共、継母が怖かったのです。


 二人は別に舞踏会に行きたいとは思っていませんでした。


 特に二番目のお義姉さんは見たい深夜アニメが丁度舞踏会の日にあったので、物凄く行きたくありませんでした。


「行きたくない私達が行くよりも、行きたがってるツンデレラに行かせた方がいい」と思っていました。


 しかし、大魔王継母には勝てませんでした。


 ラスボスなのです。


 そこらへんの町娘A・Bには勝てない相手でした。


 そして、とうとう舞踏会の日になってしまいました。


 継母は言いました。


「あら、ドレスは間に合わなかったのね。


 無様ね。


 ドレスの無いツンデレラは舞踏会に来ちゃいけませんからね。


 家で小さくなってると良いわ」


 継母はそう言い残して義姉二人を半ば無理矢理連れて行ってしまいました。


 ツンデレラは「誰のせいよ」と思いました。


 ツンデレラは誰もいなくなったのを確認すると、言いました。


「イシホスレド!」


 途端に地面に水色の輝く線で模様が描かれ始めました。


 それを見た仲間の動物達が何だ何だと集まって来ました。


 ツンデレラのMPが1減りました。


 ツンデレラは昔、名付け親の魔女に魔法を教わっていたのです。


 ツンデレラには物理召喚の魔法の才能がありました。


 一際強い光を描かれた魔法陣が放ったかと思うと、そこにはツンデレラにピッタリなサイズの水色のドレスが置かれていました。


 そこではた、とツンデレラは思いつきました。


「靴は無いと歩きにくいわね。


 靴も召喚しましょう!


 イシホモツク!」


 再び魔方陣に強い光が集まりました。


 目を開けると、そこにはツンデレラの小さな足のサイズにピッタリなガラスの靴がありました。


 ツンデレラのMPが1減りました。


 ツンデレラはドレスを着、靴を履きました。


 鏡を見ると、もうまるで自分が自分には見えませんでした。


 そこにいたのは灰まみれの薄幸少女では無く、どこかの令嬢でした。


 ツンデレラは言いました。


「よし、これでドレスは揃ったわね。


 継母(クソババア)は言ったわ。


『ドレスの無いツンデレラは舞踏会に来ちゃいけません』って。


 今の私はドレスもあるわ!


 それに、そもそも私の名前はツンデレラじゃないわ。


 シンデレラでも無いわ。


 これって、行っていいって事よね!」


 勇者ツンデレラは言葉の綾を突き大魔王継母の命令を躱しました。


 勇者ツンデレラは気づきません。


 仲間の動物が2匹(・・)消えてしまった事に。


 物理召喚には代償がつきものなのですが、ツンデレラはそれをすっかり忘れていました。


 長い事魔法なんて使わなかったからです。


 勇者ツンデレラは仲間2匹の尊い犠牲によりドレスと靴を手に入れたのです。


 因みに魔法が解ければ動物達は帰って来ますので悪しからず。


 ツンデレラは出て行った馬車に追いつく為に走り出しました。


 その光景は、水色の流れ星が地上を走っているかのように見えたそうな。






 一方その頃、出番がお亡くなりになった名付け親の魔女は。


「予想外の方向に強く育ったねぇ…」


 浜辺で遠い目をしていたのでした。


 潮風が目に染みました。






 話は戻ってツンデレラ。


 彼女はガラスの靴から火花を散らしながら市街地を爆走していました。


 その速度は、人間が出せるものではありません。


 しかし、メシへの執着力がツンデレラに尋常じゃない速度を出させました。


 欲望は燃料なのです。


「! 見えたわ!」


 ツンデレラは目をカッ!!!、と見開きました。


 その威力で空を飛んでいた小鳥が数匹地面に落ちました。


 ツンデレラのメシへのあまりの執着度故に気絶してしまったのです。


 ツンデレラのEXPが8上がりました。


 てんてんてん!(マリ○の赤キノ○のSE)


 勇者ツンデレラのLvが63に上がりました。


 ちからが3上がりました。


 ぼうぎょが4上がりました。


 そくどが2上がりました。


 MPが95324865715896上がりました。


 勇者ツンデレラは新しい技を覚えた!


 しかし!技を4つ覚えているのでもう精一杯だ!


 何を忘れますか?


 →・もくてき

 ・フライパンじゅつ

 ・ままははへのうらみ

 ・ツンデレ


 1、2の…ポカン!


 ツンデレラはもくてきをすっかり忘れてしまった!


 そして!新しくぶとうじゅつを覚えた!


 ツンデレラは困惑している!


「私、何しに来たのかしら…?」


 ツンデレラは目的を見失ってしまいました。


 丁度その時、ツンデレラの腹が鳴りました。


 それはもう、地響きかと思うくらい力強い音でした。


 ツンデレラは思い出しました。


「 バ イ キ ン グ ! 」


 ツンデレラは地面を蹴り、跳躍しました。


 ツンデレラ 跳躍(99)→01 決定的成功(クリティカル)


 ツンデレラはジャンプ力を駆使し、馬車にしがみつきました。


 ズゴォン!!!


 馬車はツンデレラがしがみついた衝撃で揺れました。


 中は大パニックです。


「「ヒッヒィーン!」」


「ぎゃああああああ!?」


「きゃーーーーっ!?何事!?」


「ナン『シャカ』ー『シャカシャカ』」


「デュフwww揺れる揺れるwww」


「 に が さ な い わ よ ぉ … 」


「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????????????????????」」」」


 御者、継母、義姉1、義姉2の4人が叫ぶのも当たり前です。


 馬車の窓から鬼が覗いていたのですから。


 目はらんらんと輝き、髪は乱れ、口からはよだれを垂らし、二本の長い金色の角が生えている鬼が、窓から覗いているのです。


 勿論、その正体はツンデレラです。


 目はメシへの執着でらんらんに輝き、髪は流星の如き速さで走った為乱れ、ちょっと焦げた。


 口からはお腹が減った為よだれが滝のように出て、ツインテールはツンデレラが馬車の上から窓の中を覗いた為自然の摂理(重力)に従い下へ。


 声は何処かで聞いたこともあるような気はしましたが、馬車の中の4人共それどころではありません。


 SAN値チェックです。


 御者(50)→91 失敗!


 継母(35)→35 成功!


 義姉1(80)→12 成功!


 義姉2(90)→42 成功!


 御者 1d6→6


 御者 アイディア(85)→63 成功!


 御者は(この)(場に)(おい)(てあ)(り得)(ない)(存在)だと理解してしまった!


 不定の狂気 1d10→1 金切り声


「キエエエエエエエエエエエエエエエエっ!?何故!?何故ここにいるんだあああああ!!??」


 御者は運転が出来くなってしまった!


 ドゥシュワ!


「ひでぶっ!?」


「「「「き、消えた!?」」」」


 ツンデレラは御者が運転をミスった為、馬車が壁ギリギリに接近し、城の門にぶつかって落ちてしまいました。


「な、何だったのかしら…」


 継母は城に入るまで心臓がずっとドキドキバクバクしていました。


 寿命が少し縮みました。


 一方そのころ、ツンデレラは。


「あー、痛かったわ…」


 痛がってはいましたが無事でした。


 もはや人間ではありません。


 むしろ門の方が負けました。


 門の壁に、ツンデレラの形の跡がついていました。


 門の衛兵はビビりました。


「一瞬見ない間に凄い音がして女の子型の跡が門についてる…。


 お化けかな…怖っ…」


 衛兵は帰りたくなりました。


「すみません」


「ぬぁあああ!?」


 衛兵は驚きました。


 一瞬のうちに女の子が目の前に現れたからです。


 その女の子は月の光が透き通るような肌をしていて、アクアマリンの宝石のように綺麗な空色の目、それからどんな金細工にも負けないような綺麗な金の髪を持っていました。


 何処か浮世離れした美しさに、衛兵は確信しました。


「ぜっっっっっったいっ…幽霊やん…っ!」と。


「こちらがお城であってますか?」


「あ、ああ、そうだが…嬢ちゃん一人で来たのかい?」


「…はい。お恥ずかしながら」


 衛兵は再び確信しました。


「ずぅぇっっっっっったいっ…幽霊やん…っ!」と。


 夜の街は危険です。


 女の子が一人呑気にひょこひょこ歩けるような場所ではありません。


 ましてはこんな綺麗な女の子がなんの危害に合わない筈が無いのです。


 それなのに。


 女の子は、何事も無く、ここに、いる。


 まるで、周りの人に見えてなか(・・・・・・・・・・)った(・・)かのように。


 不意に、女の子から声がかかりました。


「入っても、良いでしょうか?」


「えっ、はい、どうぞどうぞ。


 今日は王子様のお誕生会だからな。


 ドレスかタキシードを着た人なら誰だって歓迎さ」


「ありがとうございます」


 幽霊は足音も立てず、門の内側に入って行きました。


 衛兵は青くなりました。


「やべー…幽霊見ちゃったし…城の中に入れちまった…。


 流石に給料は減らされないよな、ハハ…」


 衛兵は冗談めかして言いました。


 でないと、今にもその場から崩れ落ちそうだったからです。


 それ程女の子の破壊力は凄まじいものでした。


 所変わって、女の子改めツンデレラ。


 ツンデレラは、目の前の様々な料理に目を輝かせていました。


「えー、皆さん。


 本日は僕の誕生会に集まっていただき、ありがとうございます…」


 目の前にいる王子様そっちのけでもりもりむしゃむしゃと食べていました。


 こんなに食べたのは久しぶりです。


 ツンデレラは嬉しさのあまり涙が出そうでした。


 しかし、王子様のスピーチ中に世界にただ一つ、吸引力の変わらない掃除機のようにもりもりむしゃむしゃと食べて入れば目立つというもの。


 すぐに継母に見つかってしまいました。


「ちょっとツンデレラ!


 何故ここにいるの!?


 そのドレスは一体何よ!?


 それから、沢山食べるのはみっともないのでやめなさい!


 留守番してなさい、と言ったじゃないの!」


「もりもりむしゃむしゃ…


 黙れクソババア…もりもり…


 私がこんなになったのは誰のせいだっつーの…むしゃむしゃ…ごくん。


 それにおかーたま☆はこう言ったわ。


『ドレスの無いツンデレラは舞踏会に来ちゃいけません』って。


 私はドレスのあるツンデレラよ。


 それにそもそも、「ツンデレラ」って名前じゃないわ」


「えっ」


「えっ」


「…本当?」


「本当よ。


 はい、論破…もきゅもきゅ」


 ツンデレラはドヤ顔で言い放ちました。


 それを見た継母はカチン、と来ました。


「食べるのをやめなさい!


 帰るわよ!」


「嫌よ!もきゅもきゅ…」


「 か え る わ よ ! 」


「 い や ! もきゅもきゅ…」


 終わらない押し問答にツンデレラは段々イライラして来ました。


 それに常日頃からの継母への恨みが加算されました。


 技、ぶとうじゅつ と ままははへのうらみ を合成しますか?


 →Yes

 No


 上位スキル発現! 恨拳(うらけん)


 ☆point☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 このスキルは日頃から溜まった恨みを大魔王継母にぶち当てる事が可能な勇者ツンデレラ固有の技です。


 さあ、積年の恨みを晴らす時ぞ!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「てぇりゃああ!!!!!!!!!!!!!!!」


「ごまだれっ!?」


 スキル恨拳使用!


 大魔王継母に8452367ダメージ!


 継母は倒れた! どぅん!(○ケモンがやられた時のSE)


 ツンデレラはスッキリした!


 丁度その時、王子様のスピーチが終わりました。


 トゥンク…


 王子様は恨拳を放つとても美しい少女にとても心惹かれました。


 王子様は強い女の子がタイプだったのです。


「もし、そこの方」


「…私?」


「そう、貴女です。


 僕と一緒に踊りませんか?」


「え…べ、別に良いわよ。


 勘違いしないでよね、アンタの為なんかじゃ無いんだから!」


 ツンデレラは割とどんな人にもツンデレになりました。


 その点、継母には全くツンデレなかったのでどれだけ嫌いだったかお分かりでしょう。


 王子様はツンデレラの手を取りました。


 その途端、二人の周りに黒い人物が五人も六人も現れました。


 ツンデレラは知りませんでしたが、それは、(しのび)と呼ばれる人達でした。


 忍は隣国の暗殺者集団です。


 実は王子様は隣国のお姫様に片思いされていました。


 それだけなら良かったのですが、お姫様はヤンデレでした。


「わらわの王子様が他の女共とお触れになったら、殺してしまいなさい!


 これは命令なのじゃ!


 わらわも後を追って死ぬのじゃ!


 こうすれば…ずっと…二人で…ふふ…」


 そう、忍達に命令していたのです。


 因みに王子様はお姫様の事を知りません。


 物凄い大迷惑です。


「お命、頂戴!」


 忍1が叫び、他も追随しました。


 王子様はビビりました。


「はうあ!殺される!?」


 王子様は「もうダメだ!」と思いました。


 短刀がシャンデリアの光を反射し、光ります。


 光る短刀が喉に飛び込んでくるーーその時でした。


「スキル!ぶとうじゅつ!はあ!」


「ぐわっ!?」


 音楽に合わせてツンデレラのスキルが発動しました。


 ツンデレラはダンスなんて一ミリも知らなかったので不安だったのです。


 だから、スキルで何とかしようとしました。


 …でも。


 このスキルは、『舞踏術(ぶとうじゅつ)』では無く『武闘術(ぶとうじゅつ)』だったのです。


 ツンデレラは音楽に合わせて忍を薙ぎ倒し出しました。


 王子様を凶刃が襲えば、ツンデレラは王子様の手をひいてかわさせる。


 先にツンデレラを何とかしようとすれば、ツンデレラの反撃に合う。


「うわっ!うわわわっ!?」


「ちぇりあ!」


「ぐああああ!」


 ガラスの靴が舞う。


 黄金の川が流れる。


 血の花が咲く。


 その姿はまさしく踊っているようでした。


 曲が終わる頃には既に立っている忍はいませんでした。


 みんなみんな、敷物のように地に伏していました。


 王子様には擦り傷一つ無く、今まで経験した事の無いワンダーランドな体験に目をパチクリさせました。


 音楽は鳴り止み、ダンスも終わっているのに、心臓だけはまだ踊っていました。


 ゴーン…ゴーン…


「はっ!いけないわ!」


「え!?ちょっと待っt「待てないわ!」


 周りの時が止まっている中、12時を告げる鐘が鳴り出しました。


 その音と同時にツンデレラは思い出しました。


「二番目のお義姉さまのアニメの予約確認してないわ!」、と。


 二番目のお義姉さんは舞踏会に連れて行かれるので仕方なく録画する事にしていたのです。


 心配性な二番目のお義姉さんは舞踏会に行く前にもちゃんと録画予約できているか確認しましたが、それでも不安だったのでツンデレラに録画の確認を頼んでおいたのです。


 ツンデレラはその事を今思い出しました。


 アニメの時間は12時30から。


 あと30分しかありません。


 ツンデレラは走り出しました。


 二番目のお義姉さんは普段は優しい人なのですがキレると継母よりも怖かったからです。


 具体的には、バックに般若の化身が現れ、マグマが噴火しているのかと見間違えるくらい顔を真っ赤にさせます。


 とはいってもツンデレラには怒った事はありませんでした。


 解釈違いでスマホ片手にキレていた義姉を見た事があるだけでした。


 今まではそんな事は無かったけれど、その怒りが今回自分に向くかもしれない。


 ツンデレラは寒くも無いのに身震いしました。


 だからでしょうか。


「あっ!」


 前方不注意で階段から転げ落ち、空中三回転錐揉みジャンプを決めてしまいました。


 その拍子にガラスの靴が片方脱げてしまいました。


「待って下さーい!」


 後ろからは王子様の声が聞こえます。


 今戻れば王子様に捕まってしまう。


 かと言って自分がいた証拠を残すのは既に継母にバレてるけれど良くない。


「むむむ…。! そうだわ!」


 ツンデレラは閃きました。


 王子様が追ってくる中。


 ツンデレラは、脱げ落ちたガラスの靴を踏んで粉砕(・・)するという斬新な方法でガラスの靴(証拠)を隠滅しました。


「アディオス!」


 そうツンデレラは言い残すと光の速さで家に帰りました。


 普通の人間の王子様はツンデレラに追いつく事は不可能でした。


 王子様は粉砕されたガラスの靴を見て呟きました。


「僕もあの子に踏み潰されたい…」


「えっ」


 側にいた衛兵は引きました。


 実は王子様はドMだったのです。


 もうどうしようもありません。


 王子様はあの命の恩人の不思議な女の子の事が忘れられず、証拠が粉砕されても諦めきれませんでした。


「これも…焦らしプレイだと思えば…」


 ドM(王子様)はめげません。


 ドMは鋼のメンタルを持っています。


 精神攻撃に異常に強いのです。


 王子様は胸の高まりのあまり心臓が口からおえっと出そうになりました。


 衛兵は王子様から10メートルくらい離れました。


 王子様の命令で夜の間ずっと金髪の少女を探し続けましたが、結局見つかりませんでした。


 夜が明けました。


 王子様が靴が粉砕された階段の辺りを徘徊していると、朝日に照らされた絨毯の中で色が変わっている所があるのに気がつきました。


 よく見ると、それは血痕でした。


 血痕の周りにはキラキラと光るガラスの破片がくっついていました。


 実はツンデレラはガラスの靴を粉砕したはいいものの、そのガラスの破片で足を怪我してしまっていたのです。


 王子様はしめたとばかりに血痕を追いだし始めました。


 かなり長い事進むと、血痕がとある家に向かって落ちていっている事に気がつきました。


 王子様はその家の扉を叩きました。


 すぐに扉は開きました。


「まあ!これはこれは王子様!


 ようこそいらっしゃいました!


 ささ、どうぞ家にお入り下さい」


 扉を開けたのは継母でした。


 継母はG並みの生命力を持っていたので、ツンデレラの攻撃にも記憶が欠けるだけで済んでいたのです。


 王子様は言いました。


「ここに娘さんはいますか?


 僕に会わせて欲しいのです」


 継母は大喜びしました。


 王子様が自分の娘が気になっている、と思ったからです。


 継母はまず1番上のお義姉さんを連れてきました。


 王子様の前であってもイヤホンは外しません。


 いえ、外せません。


 実は1番上のお義姉さんは耳からイヤホンが生えているのでした。


 マラカスの化身ではなく、クリーチャーだったのです。


 王子様は言いました。


「ごめんなさい。


 僕が探しているのはもっと小さな(かた)です」


 継母は、「それならきっと2番目の方ね」、と思いました。


 継母は2番目のお義姉さんを連れてきました。


 2番目のお義姉さんは言いました。


「美少年ktkr!」


 2番目のお義姉さんは物凄い目つきで王子様をベロベロクンカクンカハァハァと、舐めるように見ました。


 王子様は鳥肌がゾワッ!、とたちました。


 こんな寒気を感じたのは生まれて初めてです。


 王子様は慌てて言いました。


「ごめんなさい。


 僕が探しているのはもっと、もっと小さな方です」


 そこでやっと継母はツンデレラの事を指しているのだと気がつきました。


 継母は怒りました。


「ツンデレラに幸せなんて与えてやるものですか!」


 継母は、自分達の娘よりも先にツンデレラが沢山の幸せを受けるだなんて許せませんでした。


 継母は冷静を装って言いました。


「我が家の娘は2人だけです。


 王子様、貴方は何やら勘違いしているのでしょう」


 ですが、王子様にはそれが嘘くさい、と感じられました。


 継母は冷静を装ったつもりでしたが、背中からメラメラと炎がバーニングしていたからです。


 ドレスの背中部分は焼け落ち、家屋に燃え移りかけていました。


 実は継母は、炎系の能力者だったのです。


 燃え尽きる程にヒートしていた継母に流石の王子様も声をかけられません。


 メラメラメラメラメラメラメラジュ…メラメラメラメラメラジュワ…


「って、何してんのよツンデレラ!?…あ」


 ツンデレラは継母の炎を利用して肉を焼いていました。


 上手に焼けました。


 肉の焼ける良い匂いが部屋中いっぱいに広がります。


 呑気に肉を頬張るツンデレラとは対照的に慌てて継母は口を押さえましたが、時は元には戻りません。


 その事は、「ツンデレラの存在をしっていて、あえて王子様に隠した」と言ってしまったようなものでした。


 王子様は真っ青になった継母の横を通り過ぎ、ツンデレラに跪きました。


「貴女は舞踏会の時に僕を助けてくれた(かた)ですね。


 好きです!結婚して下さい!」


「ふえ!?


 わ、私、アンタの事は嫌いじゃ無いけど、結婚は出来ないわ。


 じ、じ、実は他にすすすすす好きな人がいるのよ…」


 流石の王子様(ドM)でもこれはショックを受けました。


「そ、その人は一体誰なんですか!?」


 王子様は自分を負かした男を知りたい、と思いました。


 ツンデレラはもじもじしながら答えます。


「あ、アンタになら特別に教えてあげても良いわ。


 私のすすすすす、好きな人はね…」


「ごくり…」


「舞踏会で料理を作ってくれたコックさんよ!」


「!?」


 ツンデレラは可愛らしい顔を桃色に染めながら答えました。


 この時ばかりは継母のせいで女の子らしさが風前のともし火の様に消えかけていたツンデレラも女の子になっていました。


 風前のともし火は風を受けて消えるどころか燃え上がったのです。


 王子様はツンデレラのその言葉を聞いてニッコリ笑いました。


 それを見ていた2番目のお義姉さんが新しい同人を思いつきました。


 王子様は懐から王冠を取り出しました。


 それを見たツンデレラは顔を真っ赤にして驚きました。


「それなら結婚しましょう。


 僕は料理の国(・・・・)の王子です。


 実は、あの会場で並んでいた料理は僕が作った物なのです」


 王子様の王冠はシェフ帽でした。


 ツンデレラは無意識に好きだと本人に告げていた事に気づき、顔をお湯が沸かせそうな程真っ赤にして言いました。


「あ…アンタの事なんかぜんっぜん!好きなんかじゃ無いんだからねっっ!!!


 馬鹿ぁあああああああああああああっっっ!!!」


 馬鹿ぁー…


 バカぁー…


 ばかぁー…


 ツンデレラの声は街中に響き渡りました。


  それから暫くして王子様の結婚式が盛大に祝われました。


 勿論その相手はツンデレラです。


 国中の皆も動物達も、王子様とツンデレラの結婚を祝福しました。


 1番目のお義姉さんはツンデレラの為に踊り、2番目のお義姉さんは結婚を報じる新聞紙に載せる絵を描きました。


 その中で唯一祝福していない人がいました。


 言わずもがな、継母です。


 継母は開き直って、ツンデレラの義母という立場を利用して権力を握ろうと画策しました。


 その(よこしま)な思惑に気づいたツンデレラフレンズの動物達が継母にフェイス・バスターを決めました。


 継母は何処か遠くの山にすっ飛んで行き、顔から地面に埋まりました。


 後の世に「姥捨山」と呼ばれる所です。


 こうして国から悪者はいなくなり、平和になったのでした。


 とっぴんぱらりのぷうぷうぷう。

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