プロローグ後編
自分がそれだと呼ばれている単語、NPCって何だよ。
隣のレジの新入り女性店員、アイちゃんなんかニコニコしながら直立不動で前を向いているだけだし……。
いや、待てよ。
不自然さを感じるそれも、思い返せば
いつもそうだったか……?
……。
その後、騒動が自然消滅するまでの間。
客が望んでいるであろう機械的な対応を心掛け、何とか職務を終わらせた僕は、裏の事務室へ退勤処理をしに行った。
家路につける、そのはずだった。
「……。」
絶句。
退勤すら出来ない状況を目の当たりにして、僕はようやく全てがおかしいのだと気付いた。
店の裏には、何にも無い闇だけが広がっていて。
僕が交代して入り、帰ったはずの従業員達が──
いや、交代で入るはずの次の従業員までもが
壁を背に、直立不動で無表情で並んでいる。
「!!?
て、店長……みんな!?
これは……な、何?
何だよ!? 何で真っ暗──」
……ああ、おかしい。間違い無く流石にこれはおかしい。
でも、そうだ……これも、そうなんだ。
頭ではおかしい事だと認識できるのに、日々を思い返せば……いつもの日常、なんだ。
次の仕事時間まで、この闇を前に立ち尽くし、ただ待機する。
家も、生活も、会話も無い。
ただ、レジをするだけの生き物。
決まったパターンを無限に繰り返す、生き物。
これは、生き──物?
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<NPC>
僕がそれだと自覚したのはこの時で、でも──それも感覚的なモノでしかなくて。
結局、僕は人間じゃないからこそ
人間としての在り方なんて知らず、理解出来ず。
しばらく旅をする後まで、僕は僕の中で──
確かに、人間だった。