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傭兵達の下剋上  作者: 羽賀唯人
1章 本圀寺の変
8/35

6、本圀寺の変(本領発揮)

1569年 1月5日。

雪の降る、追い風の日の夜に、それは起きた。


ドォーン!ドォーン!ドォーン!


本圀寺の外から三回の太鼓の音が響いたかと思うと、外から多くの兵がやってきた。


「引き付けろ!」

俺はそう叫ぶ。皆、そこまで緊張の色は見えない。

しかし唯一心配なのが足利義昭だ。

彼は2代前の将軍である足利義輝とは違い、武力がほぼ皆無だ。

ここまで逃れることができたのは、おそらく細川藤孝の助力あってだろう。


「かかれぇー!!!」

敵将の声が響いた。

「もっと、もっとだ……!!もっと引き付けろ!」


蛍の顔色も戻ってきた。まだ少し緊張しているようだが、ここからは雑賀の本業。

さーて、そろそろ、放とうか!


「撃てぇーーー!!!!」

バン!バン!ドパァ!

俺が叫ぶと鉄砲の音が鳴り響く。

俺ももちろん構えている。


「グハァ!」

「うわぁー!!!」

「てっ、鉄砲だぁぁぁ!!」

「逃げろぉ!!」


敵兵は逃げる。

これが後に”本圀寺の変"と呼ばれる戦の始まりだった。


◇   ◇   ◇


「なっ!向こうに……種子島の備えだと!?」

「ちっ!十中八九、雑賀の所為でしょう。雑賀は三好・斎藤方(こちら)ではなく、足利方(あちら)側についたようですね」

「くそっ!小笠原!」

「何でしょうかぁ?」

「討ち死に覚悟でお前は本圀寺内部へ迎え!」

「そう、ですかぁ。どうやらここまでで、さようならのようですね……」

「な、何だ!?」

「政康ぅ、康長ぁ!ここで死ねぇ!」


小笠原信定、謀反。

これが、三好に起きた最初の不幸だった。


◇   ◇   ◇


「どうされました?兄上」

「蛍か。多分、向こうでは内部分裂が起こっている。……信定を調略していた甲斐があったな」

「いつの間に、調略を行っていたのですか?」

「まあ、それはいずれ話そう」

「そう……ですか」

「それよりも、目の前の敵を殲滅するぞ!お前ら!気を抜くな!吉正さん、守重さんは()()の実行をお願いします!」

「了解!」

「分かりました!!」

「何を……したのですか?」

「見ていればわかるさ」

「そうで…‥」

「お、お主ら!何をしているのじゃ!?なぜ、ここを戦場にしているのじゃ!?」

「義昭さん!うるさいです。そして今あなたは命を狙われていることをお忘れですか?」

「忘れてはおらぬが!だが、それとこれとは別問題じゃ!」

「関係あります」

「へ?」

「ここが戦場になるということは、ここにあなたがいるからです。あなたがここから引かねば、この戦場は無くなりません。しかし、あなたがいるところを三好たちは襲うでしょう」

「そう……か」

「さあ、将軍!後ろに下がって!雑賀謹製、焙烙火矢の登場!放て!!!」

「「放て!!」」


ヒューン!!ヒューン!!

焙烙火矢が、三好の本隊に飛んでいく。その飛距離は3kmにもなると言われ、雪の降るこの地に降り注ぐ。

雪に燃え移り、その火の手は風に煽られさらに大きく、さらに本陣深くに燃えていく。

(矢というものの、今でいう手榴弾のような形だ)


「どんどん放って!」

「もっともっと!放て!!」

「……これが、兄上の言う()()ですか」

「まあね。今、向こうは混乱している。その隙に……鉄砲隊!!もう一度、放て!」

バン!バン!ドパァ!

もう一度、銃声が鳴り響く。今はもう、皆の表情は、興奮に染まってしまっている。


「気をつけろよ!追い詰められた鼠ほど怖いものはない!」

「「「はいっ!」」」

織田にはすでに使者を送っている。

大丈夫だろうが……、信定は死んだな。これは。


◇   ◇   ◇


「くそっ!なぜ、雑賀は向こうに付いたのだ!!」

「なっ!長逸様!先行隊、壊滅です!」

「何!?それは本当か!?」

「はい!よくわからない武器を投げられ、こちらの軍は壊滅!そして……」

「まだ、まだ何かあるのか!?」

「小笠原信定様……、謀反を起こしました!」

「信定が!?」

「はい!」

「ちっ!……あの文は誘っていたのか」

「長逸さん、どうしますか?」

「うわっ!友通いたのか!?」

「いましたよ」

「ならば……、全軍!恐れを捨てよ!突撃ィ!!」

「「「オオォォー!!!」」」


「……信定、すでに本隊が動き出した。お前は早く死んだほうがいいぜ?」

「遅かれ早かれ儂はこの戦で死ぬだろう。ならばなるべく長く生きた方が良いではないかぁ?」

「ちっ!まあ、そう……だな」

「くそが!まだこの火炎弾が飛んで来るのかよ!……ハハッ、雑賀の底力はヒデェや」

「確かに、な。だが、我らはまだ死んでいない」

「まあ、そうだな」

「この策にマンマと嵌められた俺らが悪いんだろうな」

「そんなことを言っている暇が、あるのかねぇ?」

(ちっ!信定は三好でも割と強い方だ。これは相当めんどくせぇな)

「死ねよ!信定ぁ!!」

ザシュッ!

信定の胸に、三好政康の(エモノ)が刺さる。

「くっ!儂は……、ま……だ、死ね……ぬ」

ドサァ……。


小笠原信定、討死。

しかし、その対応に追われていたために気がつかなかった。

第二の不幸に。


◇   ◇   ◇


「さて、最後は()()()に締めていただきましょうかね」

「あの人って誰ですか?」

「まあ、気にするな。一言で言うと、今の俺たちでは太刀打ちできない相手だな。一矢報いることはできるだろうけど、あくまでも一矢だけだからなぁ」

「???」

「考え込むなよ。すぐ来るだろうし」

「はぁ……はぁ……はぁ……、大雪とかまじふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「おっ!きたな。」

「信長様……、兵はほとんど疲弊しています……」

「一益!先ずは本圀寺に入るぞぉぉぉ!!」

「話を、聞けぇぇぇ!」

「あれは?」

「織田信長。あいつが、この戦を終わらせる圧倒的な力を持つもんだ」

「あれが!?」

「ああ」


織田信長。知らない日本人はいないだろう。ものすごく先見の明に長けているしそれに見合う実力も持つとかいうただのチーター。リアルチートふざけんな。


「ってかあれって失礼すぎんだろ。あと滝川さん忘れるな」


ドタドタドタ!

ガコッ!

ズシャァ!!


「コケましたね」

「コケたな」

「本当にあの人で大丈夫なんですか?」

「まあ、大丈夫だろう」

「適当ですね」

「ああ。適当さ」


そして数分後俺は織田信長に会い話をした。

「お主の名は何だ?」

「俺ですか?三崎針司です」

「ほう……雑賀孫一ではないのか?」

「まあ、あの時は孫一さんは外征に行ってましたから」

「そうかそうか。それにしてもなぜこちらに参加したのだ?」

「まあ、こちらの気分と申しますか何と言いますか?」

「そうか……。まあ、一つ謝っておきたいことがある」

「何でしょう」

「すまぬ。兵が足りぬ」

「へ?」

「兵はほぼ口らに来る間に……亡くなった」


死んじまったのか……。今は大雪。美濃国も同じ天候だろう。

なら死因は……「凍死」ってことか。

悪いことをしちまったな……。


「そう……ですか。分かりました。こちらには……まだ策がありますので俺はそれを待とうと思います」

「伝令!三崎様!三好の本隊が攻めて参りました!」

「わかった!十分引き付けろ!」

「あれで良いのか?」

「ああ。まだ一つ、策は残っていますよ」

「?」

「まあ、見ていてくださいよ。多分そろそろ……来ますよ」

「兄上!三好が……、三好が兵を退きました!これは……何でしょうか!?」

「最後の策。長宗我部と毛利に……三好を突かせた」


◇   ◇   ◇


「長逸様!伝令!!長宗我部が……長宗我部元親が安芸国虎と結んで攻めて来ましたぁぁぁぁ!!」

「何だと!?」

「さらに河野、毛利も長宗我部、安芸に同調し……、三好打倒の兵を挙げようとしています!」

「それは、本当か!?」

「はい!本当です!」

「くそっ!退けぇ!ここで本城を毛利や安芸に取られたくはない!退けぇ!退けぇ!」


「……けぇ!……けぇ!」

「何だ?長逸が何か叫んでるぞ?」

「……!?」

「どうしました?康長様!?」

「退くぞ、政康。長逸からの撤退命令だ」

「なぜ、この場面で!?」

「わからない。だが何か理由があるな」

「……退けぇ!退け!」

「退くんだ!長逸直々の命令だ!!」


この宣言は、三好兵を一瞬で死から生へ引き戻した。

しかし、それは一番やってはいけない選択だったのだ。


「……ひ、ひえぇぇぁぇー!!!」

「血……!?なん……で!?」

「嫌だぁぁぁぁ!!!」

「なんだ?何が起きている!?」

「兵が、慄き、脱兎のごとく逃げ出しているだと?」


兵は、極度の興奮状態にある。

しかし、退くことで自身の土地へ帰ることができる。そう思うと我に帰ってしまう。

そうすると、もうダメだ。

痛みが体を、恐怖が心を縛る。


「そうすると……、生きる糧を思い出してしまい、もう動けない」

「精神の戦……でしょうか」

「ああ。その通り」

「ふっ!お主、面白いな。采配は半兵衛並みというところか」

「いえ、それほどでもありません。俺よりも頭の切れるやつならば、戦そのものを起こしていないと思われる。それより、戦は終わってはおりませんよ」


先ほどまで三好・斎藤連合軍がいたところにはすでに火の手が上がっている。

その火の手は未だ消える事はない。

その火の手が広まり……、


「火の手は三好を襲う」

「あれほど多くいた三好の軍が……、もういない!?」

「向こうの損害は少なく見積もっても4000を超えるだろう。だがこちらの損害は多く見積もっても100程度。この成果は相当だな」

「素晴らしいな。だが、三好しか姿は見えないが?斎藤はどうした?」

「それは、細川に……」

「三崎さーん!斎藤龍興勢、退かせましたー!」

「お!よくやった!藤孝!」


「面白いな……。この、雑賀衆の軍師は」


本圀寺の変は、ほとんど犠牲を出さずに足利勢の勝利となった。

これにより三好は本州から引き去り、足利・織田との確執がさらに深まることになる。


しかし雑賀衆は、本圀寺の変で織田・足利に手を貸したことによる名声を得たのだった

変更点(2/27)


明智光秀→滝川一益に変更

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