27、岸和田の変(反逆・謀反は恐れなきゃ)
「治様、どうされましたか?」
「何もない、です」
私たちが織田へ帰っている途中、ずっと後藤さんが心配していてくれた。
まあ、それもこれもずっと泣いたままだった私が悪いんだろうけれど。
「それにしても、雑賀衆の兵はこれほど忠実なんですね……」
「ですな。雑賀が傭兵として名を馳せることになったのは、この兵の忠実さが一因にあったのかもしれません」
話をそらして後藤さんの注意もそらす。こうして後藤さんからの質問ぜめに耐えて来た。
そうこうしている間にも、私には彼に言われた言葉が私の中をめぐる。
『お前は、雑賀を舐めていたのか?』
『この娘の立てた策と我らは戦っていたのだ。これを舐められていると言わないなら何を舐められるというんだ!!』
『お前の策でいけると判断したからだ。お前程度の策で、な』
私の策を父上が採用していたのは、約束があったからだ。
気をつけてはいた。だけど、慢心もしていたのだろう。そうでなければここまで簡単に負けてしまうはずがないからだ。それに、有名な雑賀孫一がいない、石山にいるという報告も受けていた。だから私は父上の策を知られていない、そう思ってしまったのだ。しかし、どこにも無名の傑物がいるのだ。雑賀衆も、その例にもれなかったのだ。あの男が策を建てたという。
……さっきから、周りの兵が騒がしい気がします。
何か、あったのでしょうか?
「すみません、彼が倒れてしまったので、少し休ませてください」
「良いだろう」
一人の兵が倒れてしまったらしい。
そこに、どこかからの使者が来ていた。その人は、この兵たちの長と思われる人が対応している。
四半刻ほど経っただろうか。彼らが話をしていると、なぜか涙を流し始めた。
そうして意を決したようにこちらへ向かってくると――――――
「治様!逃げてください!!」
刀を抜き、私に向かって来た。しかし、後藤さんが私を守ってくれた。
え?何が起きたの?なんで、こっちに攻撃してくるの?
状況を理解するまで数瞬必要だった。しかし、私の危機本能が反応したのか、ギリギリで逃げることができた。
馬に乗り、来た道を引き返す。
走って、走って、走った。
雑賀衆の城下町までたどり着くと、私は倒れてしまった。
疲れ果ててしまったのだろう。何があったのか、私にはわからない。
雑賀の兵が反逆したのだ。雑賀は信じられるはずもない。
しかし、私は彼に一縷の望みに賭けるために、雑賀の地に再び足を踏み入れたのだ。




