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傭兵達の下剋上  作者: 羽賀唯人
1章 本圀寺の変
3/35

1、室町幕府に喧嘩売る(仮)

時は1569年、1月。

年が明けて早々、雑賀にとある報が入った。

「三崎様、三好から文が来ました」

「ん、りょーかい。ありがとー。下がっていーよ」

「はっ!!」

「……三好からの文か……?なんかあったのか?」


俺はその文を開くと、衝撃を受けた。

その内容は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものだった。しかもその行為に雑賀も参加しろ、という内容だった。


「おーい、三崎〜。入るぞー」



……え?俺たちに幕府の敵になれと?

無理でしょ。俺個人はいいけど、さすがに他の人たちは許さねーんですけど。これってマジで選択難しいんですけど。


「おーい」


えーと、さすがにこれは辛いよ。

だって幕府だよ?その権力はほぼ皆無とはいえ、天下に名高い武士の総本山というべき存在の幕府だよ?絶対に反対……あれ?俺ら武士じゃなくね?傭兵でした。でも反対勢力はいるだろう。土橋さんとか岡さんとか宮本さんとか。うん。絶対に無理だな。朝敵ならぬ幕敵は嫌だな。……ぷっ。幕敵だって。変な名前。


「おーい」


だけどここで無視をしたら、傭兵の名が地に落ちる。三好さんは割と金払いは良いからな。雑賀の経済を潤す数少ない良い財源(カモ)だからここで易々と見逃すわけには行かない。だけど無理して幕敵の汚名をかぶる必要もない。さぁて……どうするかなぁ。


「しーんじー」


いや!ここはむしろ足利将軍についてみるという策もあるぞ!権威は地に落ちたとはいえ幕府は幕府!多分莫大な金があるに違いない!足利将軍の後ろには織田がいる。信長はそろそろ帰ると書いてあるから、その織田に対してこのことを密告するっていう策もあるが……。


「針司!!」


いや、しかし、そうすると傭兵としての地位が落ちる。雑賀衆全体の強さを見せるにはどうする?織田に付くか?斎藤家にはすでに今世の孔明(竹中半兵衛)はいない。となると、やはり織田に付くのが得策なのか?


「針司ィッ!!」

「ふわっ!?って湊かよ……」

「はいはーい!湊でーす!……で、何に悩んでたんだ?」

「“これ”だよ」

「なんだ?文か?」

「ああ。読んでみてくれ」

「ん。…………ってはい!?」

「そうだろ?」

「まさか、本当か?」

「ああ。きちんと三好から来ている。つまり、三好は本気で足利義昭を狙っている」

「つまり、三好三人衆は織田と敵対する覚悟が完全にできているということか?」

「ああ。そういうことだ」


こいつは湊高秀(みなとたかひで)

雑賀衆の中でも珍しい常識人だ。

飲み込みが早く、すぐに話を理解する。有能な人だ。

多分俺より軍師してる。


「ところで湊。なんでこっちに来たんだ?」

「ああ、それなんだが……」

「おーい、おーふたーかたー。なーにやーってるのー?」

「「重朝さん」」

「さーんはー、つーけなーくてー、いいーってー、どーのくーらいーいーえばー、いーのーかなー?」


彼は鈴木重朝(すずきしげとも)

話し方はいつもこんな感じ。

鈴木重秀の実の弟である。

酒と女が好きで、いつも酒の入った瓢箪を腰に下げていて、いつも背負っているのはでっかい銃である。

この人も鉄砲の腕は一流。


「で、何しに来たんですか?」

「いやー、ただきになーったからねー。なーにしてるーのかとおもーってさー」

「そうですか。こちらは少し相談に乗ってもらおうとしていただけですよ」

「そーなんだーねー。さーいかのーはーなしー?」

「まあ、そうですね」

「ふふふー。やーっぱりー、『今世の元直』のなはー、だてじゃーないねー」

「今世の元直?」

「こんにちは。何してるんすか?」

「あれ?知らないの?お前はあの義理堅く、それでいて武にも学にも優れてるからそう呼ばれてるよ」

「元直っていうと……、ああ。徐庶か」

「お-い」

「そ。その徐庶のような奴がお前なんだよ」

「へー」

「お-ぃ」


徐庶か。

なんか最後は曹操に引き抜かれるんだよね。

まあ、でも相当の切れ者だからいいや。

……てかそれほどの異名がつくってことは俺何かしたか?

他に似たような奴をつけられたのは……竹中重治の『今世の孔明』と黒田孝高の『今世の張良』ぐらいだよな。ぱっと思いつくのはそれぐらいだね。

ってことは、半兵衛官兵衛のと同列!?これはなんか恐れ多いというかなんてーか。


「ところで、湊。お前、相談って何?」

「ああ、それなんだが。……また人は来ないな。」

「?」

「ああ、こっちも文の件でな……、斎藤からも同じような内容で来ていた」

「な!?」

(気がついてください……)

「さっきのーふみー?」

「ああ。三好から将軍を攻めるように」

「な!?それは真ですか!?」

「「ん?」」

「いや、失敬。ここで何やら人が集めっていて気になったのでな」

「岡殿ですか。どうぞ」


彼は岡吉正(おかよしまさ)

脳筋ではあるが、瞬間的な発想力に長けているため突拍子もない案を出すことがある。

恐れをほとんど知らず、命中率は高い。

『雑賀の虎』、『胆中』とも呼ばれる。


「ありがとうございます。ですが、三好が本当にそんなことを考えているとは……」

「まあ、十中八九松永との共謀でしょうがね」

「でしょーうねー」

「それにしたって斎藤も参加ですか」

「ああ……って土橋さん!?」

「いつの間に!?」

「失礼な。今世の元直の名前のくだりからいましたよ。本当に」

「ああ。そういえば、確かに意味不明の声が聞こえましたね」


土橋守重(つちはしもりしげ)

影が薄い上、気が弱いためにほとんど存在感がない。

だが、龍の異名は伊達ではなく、戦になると人が変わったように気が強くなる。

命中率は尋常ではなく、雑賀でも一番。

そのため『無二』や『雑賀の龍』と呼ばれる。


「そういえばってひどいですね」

「しーかたーなーいねー。そーんざいーかんーはうすーすぎるかーらねー」

「ひどくね?」

「仕方ないですね」

「ああ」

「まあね」

「ひどすぎる!」

「まあまあ、それよりか、雑賀がどちらに味方をするか考えないとね」

「織田と三好ですか」

「ああ。織田は国力では三好に負けている。だけど、織田はその代わり配下に恵まれている。質を取るか量を取るか……。まさに量対質の対決だね」

「これはみんなを集めて考えた方が良さそうだね」

「そーだねー。おださーんにかてそーではないかーらねー。」

「だからといっても三好を敵に回すのは分が悪い。その辺どう考える?三崎」

「俺は織田に味方する」

「「「決定事項!?」」」

「ああ。織田信長の才は朝倉教景(あさくらのりかげ)(宗滴)も認めている」

「それは……確かに」

「さらに、配下にも恵まれているということは質がいい。質を欲するか量を欲するか……。良い質は量を超える。赤壁の戦いでもそうだっただろ?だから俺は織田に着く。だが、まあ曹操が質で劣っているかというと、そうでもねぇからな。夏侯惇に張遼。策謀では郭嘉に荀彧に司馬懿なんかもいたからね」

「赤壁って……。まあ、孫権と劉備が組んで曹操を倒したあれは三国志最大の見せ場でもあるがな」

「それを出されちゃ勝てそうもないね」

「他にも、足利将軍に敵対はしたくない。だろ?」

「ああ」

「それはできれば避けたい」

「なら決定だな。今重秀はいない。さて、土橋さん!織田に密使を書いといて!金の要求も忘れずにな!」

「はーい!」

「重朝さんはみんなを集めて!」

「ん。わかーったー」

「さて、みんなはこの結果に納得しますかね?」

「するだろ。てかさせるよ」

「まあ、だね」


5人と相談して決定したこのことで、皆は納得するのか。疑問が残った。

まあ、大丈夫でしょう。

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