18、石山本願寺戦線異常なし(忘れ去られる下間)
今回は、大阪本願寺での鈴木重秀の話ですね。
石山本願寺。それは、大阪に証如が建てた浄土真宗本願寺派の本山のことだ。
そんなここに、今俺はいる。
「くそっ! 吉正、兵部たちは大丈夫か!?」
「多分大丈夫でしょう……!! 彼らならば!」
「だよな。俺が信じなくて誰が信じるんだよって話だよな」
「はい!」
「って、お前誰だし」
「この、この私を忘れたのですか! 私は下間頼廉です!」
下間頼廉は、石山合戦において多くの活躍を残した男だ。この重秀と共に、「大坂之左右之大将」とまで言われた男だ。───だがそれはまだ先の話。史実よりも早く始まってしまった石山合戦の中で、顕如からこの戦の総指揮官の大役を任せられた男だ。相当有能な男だということは明白、か。
「ははは、そうだったな!」
「笑うとこじゃないですよ! ……さすがに危険になって来ているので、そろそろ戻りましょう」
「確かに。おーい、お前らー!! 引きあげろー!」
「「「おーう!!」」」
「なんか、忠誠心物凄いですね……」
「まあ、そんな感じだからなぁ。うちの衆は強いならどんな奴でも将まで登り詰められるからな。そのぶん向上心が高いんだろうな。それに、うちは内政担当軍師の一声で「四公六民」ってのやってんだ」
「はぁ……」
「まあ、考えればわかるけど、俺らがもらってる兵糧の取り分は、4割なんだ。そして農民は6割。そのお陰か、おこがましいかもしれないけど……忠誠心が上がった気がしてんだよなぁー……」
「そうなんです、か」
「ああ。どうだ?石山本願寺も四公六民をやって見たら?」
「まあ、考えさせてもらおう。法主殿が認めれば、だがね」
「ははぁ。もっと民衆を集められると思うのですがねぇ」
「そんな、そんな。民衆を集めようとはしていないんですよ。できるだけ多くの人に我々の教えを信じてほしい、そう考えているのでね」
「ほう、ほう。そんなもんですかねぇ」
「はい。そちらこそ、我々の教えを信じて、こちら側に来ませんか?」
「いや、遠慮させていただこう。私が信じるのは鴉様と仲間たちだけ、と決めているからな」
「そうです、か。残念です」
「ま、そんなこと言ってないで下がろうか。他の兵は退き終わったっぽいからな」
「ですね」
俺たちは殿を務めて退いた。
そしてこの他愛もない話が、後々に大変な出来事になって帰ってくることを俺はこの時、まだ知る由もなかったのだった。




