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序章
「──遂に、織田が来たか」
紀伊の国人である、鈴木家。最強の鉄砲傭兵集団である、雑賀衆の本家である。
「雑賀衆を味方にすれば必ず勝ち、敵にすれば必ず負ける」。そんなことを言われていた雑賀衆だが、大大名に成り上がった織田家に勝てるはずはない。
戦国乱世に降り立った、第六天魔王と呼ばれる織田信長。
戦国時代最強の寺社勢力である、一向宗の総本山、本願寺顕如。
二つの二大勢力の狭間で、鈴木重秀率いる雑賀衆は、戦おうとしていた。
その雑賀衆の鉄砲隊を率いるのは、『鈴木重秀』。
又の名を伝説の鉄砲使い、『雑賀孫一』である。
この物語は、そんな雑賀衆の中で活躍した鈴木重秀ではなく───
「──信長か。こちらは寡兵……。なら、毛利の厳島を真似れば良いな」
鈴木家に現れた、『今元直』と呼ばれることになる天才軍師、『三崎針司』である。
彼は、嫌々ながらも軍師を引き受け、天才的な軍略で領地の拡大に貢献しまくっていたのだった。
個性がトンガった人たちの多い雑賀衆の中で、彼は自身の知力で織田や羽柴、徳川と戦う。