希望を探す日々
今日も雨だ。
何故か毎日身体がだるい。
原因は不規則な生活や食生活の乱れであることはわかっている。
職場で美術館の招待券をもらったので、行ってみることにした。
最近、絵画を描くので、真似できる材料があるかもしれない。
外は土砂降りではないが、冷たい雨が降っている。
もう6月なのだが、全く暖かくなる兆しがない。
気持ちは暗くなるばかりだが、何かを求めて車を走らせた。
車で10分程度の所に美術館があり、すぐに到着した。
駐車場に車をとめ、赤いレンガ調の坂を上る。
その頃にはもうほとんど雨は降っていなかったが、暗い気持ちは滞在したままだ。
平日のお昼過ぎ。
来場しているのは私と黄色いカーディガンを着た中年女性、黒いジャンパーを着た年配の男性2名のみだった。
閑散としており、職員のこそこそと話す声ですら、響いてくる。
受付は多分若い女性だったが、私は全く目を合わせなかったため、表情などはわからない。
展示室へ案内する声が、なんとなく嬉しそうな声にも聞こえた。
今日は客も少ないだろうし、暇していたのだろう。
展示室に入っていった。
一番初めに展示されていた作品は、高校時代の書道の先生のものだった。
「花鳥風月」というタイトルで、大きなパネルが4枚、飾られている。
書道作品なのだが、文字はない。抽象化した黒い図形と点が描かれていた。
しばらく眺め、何かを感じ取ろうとした。
「花鳥風月」の「月」に当たる4枚目には、おそらく月が描かれている。
黒い長方形の後ろにうっすら丸いものが浮かび上がっていた。
「風」には細く渦巻きが書かれているため、これが風を表しているのだろうか。
よく見ると「鳥」には下の方に小さく鳥が羽ばたいているのを真上から見たようなものがある。
これが鳥だとして・・・
だから、なんなのだろう。
結果、何も感じとれなかった。
バランスは整っているし、家に飾ると格好良さそう、とは思う。
それからというもの、見る作品どれもが、謎に包まれていた。
何故これを描いたのか。
何を伝えたいのか。
これは、芸術なのか。
一つ一つ作品に足を止め、作者のプロフィールを読み、
作品を近くで見たり、遠くから見たりし、
ひたすら考えたがわからない。
黄色いカーディガンの中年女性が私を抜かし、歩いていってしまった。
黒いジャンパーを着た高齢の男性2人は、一つの作品に顔を寄せ、一生懸命何かを話し合っている。
そのうち眩暈がしてきた。
中央に椅子があったので掛けて休んだ。
だるくて、目の周りをマッサージして深呼吸するが、一向に良くならなかった。
もう、残りの作品を見る元気もなくなってしまい、
早々と帰ることにした。
私は何も得られなかった。
しいて言えば疲労か。
作品を見て挫折出来るほど私は芸術の心を持っていない。
当然だが、私の居場所はここにはない。
家に帰った。
暗い部屋に、イーゼルに乗った真珠の耳飾りの少女の模写がある。
視界に入れたくない。
今日は、絵画は、やらないことにした。
暗い部屋でただ、過ごす。
私は何をしたらいいのか。
どこに向かっているんだっけ。
なんだかエネルギーが吸い取られてしまったようだ。
何をする元気も沸かなくなってしまった。
日記を書き、今日も1日終わろうとしている。
かろうじて、希望を探す心は失っていないとは、思う。
もしかすると、日々の激務で
疲れているだけなのかもしれない。
そう考えて眠ることにした。
こういう日は、休むことしかできない。