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第37話(繋がり・弐)・3


 とりあえず落ち着いて考えてみるに至る……。


 ハルカは綺麗だと思うもの、思われるものをピックアップしてみる事にした。


 まず、花。

 そして装飾品、宝石。

 景色、絵画、光、言葉、女……。


 普段、綺麗だと思うものなど そう周りにあるわけはない。


 だから、花、宝石あたりが妥当だと思ったが。


 ……とはいっても、両方とも種類は多い。


 ……いや、待てよ?


 ハルカは自分の頭の固さを馬鹿みたいだと思った。


 彼の言葉に だまされるな。


 近づくと攻撃する花だなんて……発想でピンと来ないか?


 何を真面目に考えていたんだろうと。


「まだヒントが ほしいか?」


 レイが そう言うと。


 ハルカは慌てて首を振って制した。


「大丈夫。答えは わかった」


 ハルカは自分の後ろを見る。


 そして視点を集中させ、 ソ レ を一本。


 ブチと手を使わずに見えない力で茎を千切った。


 そのままスウっと自分の所へ運び手で持ち。


 レイの手前に さし出した。


「……正解だ」


 冷静に装ってはいたが、驚きを浮かべていた。


 それは、問題が解けたという驚きではなく。


 手も使わずに摘んだ その『力』に対してのものである。


 レイは ソレを受け取ると。

 またハルカを見た。


「この力は初めて人に見せた」


「……」


 無言に なるレイ。


 だが口元だけ、少し歪ませる。


「……お互い、普通とは違う力を持つ者だったというわけか……面白い。こんな面白い奴は貴重だ」


と、親指と人差し指で つまむように持って。


 クルクルと回して遊んだ。


 すると、指と指の隙間から。


 つー……っと細く赤い血が流れた。


『綺麗だが、近づくと攻撃する。2つになると崩れてしまうもの』


 レイの手に持っているのは。


 さっき彼が さりげなく褒めた真っ赤な『バラ』だった。


 クイズを出す前から。

 正解は呈示されていたのだった。


 昔からバラは綺麗な女性に対して慣用され。


“近づくと攻撃”するのはトゲのせい。


 2つに なると崩れる……というのは。


 崩れて『バラバラ』に なってしまうという意味だろう。


 難しく考える事など なかったのだ。


 ただの なぞなぞ だったのだから。


 それでハルカは彼の思惑に添って。


 後ろに あったバラを一本摘み。


 渡して よこしたというわけだ。


「俺はレイ・シェアー・エイル。あの相棒はセナ・ジュライっていう奴だ。お前は……何だっけ」


「ハルカ・ティーン・ヴァリア」


「悪いな。他人の名前など覚えないクセがあるもんで。ハルカ、だな。俺はレイで いい」


 レイは立ち上がった。


 軽く腰を回す。


「レイ」


「何だ?」


「……いや、やっぱりいい」


「何なんだ。言いたい事が あるなら早く言え」


 ハルカは間を置かず素直に。


「今、“また そっちに行ってもいいか”と聞こうとした。だが、お前なら こう言うだろう。“来たければ来るがいい”と」


と……言うと、レイは一笑した。


「ははは! やはり貴重な奴だ。よく俺の心理が読めた事で。全く その通りだな」


 ハルカは え? と心中で呟いた。


 別に自分はレイの考えを読むつもりなど なかった。


 それが自分に できてしまった事に驚かされた……。


 ひょっとして この人と居ると。


 もっと何か発見できるのかもしれない。


「さて。そろそろセナが心配するな。セナは俺の力の事も知らないし、まさか監獄を抜け出しているとは思いもしていないだろうよ。帰るとするか」


と言いながら。


 さっきまで指と指の間で遊んでいたバラを手の平で包んで持ち。


 グッと握りつぶした。


 花弁は形を変え。

 整っていた形は失われ。


 グシャグシャと。


 まるで使い古した紙を丸めたようになってしまった。

 茎ごと。


 そのせいでトゲが容赦なく刺し。


 握り締めたコブシからは。


 ポタポタと血液が滴り落ち地面に降った。


「あいにく、もらっても仕方ないんでね。監獄(あそこ)では」


と、パッと手の平を広げた。


 同時に。

 握りつぶされたバラは無残な『形』となり地に落ちた。


 ハルカは落ちていくバラを見ていた。


 バラ、バラ、バラ。


 ……頭の中で、何かが引っかかっているような感じを覚えた。


「来るなら昼 前後か日没後に しろ。来た時、目印として……そうだな、あそこの一番大きな木……下から5メートルほど上の所の枝に、白か黄色系の目立つ色の布でも巻いておけ。そしたら、俺らの部屋から それが見れるだろう。それを合図として、俺が辺りを見回すから」


 そう言い残して。

 レイは早足で歩き去って行った。


 ハルカは見えなくなるまで、背中を目で追う。


 ……奴は何しに来たんだ……?


 こんな所、気まぐれや暇つぶしで来れるような所では ない。


 だとしたら、何のために?

 私に会うために?

 何故?


 この前の態度は あまりにも冷たいものだった。


 私の存在を邪魔扱いした。


 それが何故ココに来るという結果に なるのだ?? ……と。


 腑に落ちない。


 レイの一挙一動、そして会話の内容は疑問ばかりだった。


「わからない」


 呟いた。


 瞬間、ビュウ、と。


 ひと吹きの風が吹き抜ける。


 冷たいレンガ造りの地面の上で。


 おとなしく横たわっていたバラの残骸は。


 風に さらされ転がっていった。


 …………バラ。


 彼の意図は おそらくバラに ある。


 そんな気がして ならなかった。



《第38話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 1万文字を過ぎると作者、執筆中に焦る(かなり)。『繋がり』壱と弐を繋げたら軽く超えて1万7千文字ほど。やべっ、長すぎ! 分割マジック! (てやあ〜)


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-98.html


 そして出来ましたらパソコンの方は以下のランキング「投票」をポチッとして頂けますと……


 ……。


 ありがとうございました(ふ)。



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