表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/161

第36話(繋がり・壱)・3


 ……僕らは眠る事は しない。

 疲れる事が あっても、放っときゃ回復するしね……。


 花は、光合成とかいう生物としての重要な役割とかポストがあるけど。


 僕らには そんなものは ない。


 ただ、レイに仕えるだけ。

 レイに従うだけの存在。

 それって、ただの人形みたいだな……ハ、人形。

 なるほど。

 人形か。

 確かに似てる。

 そうか、僕らはピノキオだったわけか。

 嘘つくと鼻が伸びたりして。



 最後にクックックッと笑ってみたりする鶲。


 花は暗闇の中で佇んでいた。





 別の一室では。


 ハルカがベッドの中で就寝していた。


 身の回りの世話は。


 頼みもしないが さくらが ほとんどしてくれていた。


 白い洗いたてのシーツや毛布も、さくらが用意したものだった。


 さくらが作った食事をとった後 入浴し。


 これまた さくらが用意したラベンダー香を。

 ほのかに漂わせる寝服に袖を通し。


 ベッドの中へと潜り込んでいた。


 おかげで、グッスリと深く、深く。


 ……懐かしい思い出の夢の底へと落ちていった。……




 細く、小さな体。


 パッチリと開いた赤い瞳。


 陽に当たると照り輝く髪。


 上品な、王族に ふさわしい立ち振る舞い、その気質。


 その容姿から、本当は誰もが羨望の眼差しを送るはずだった。


 ある小国の王の城で産声を上げた。


 王には幾つかの妃が おり。

 子供も たくさん生まれていた。


 ハルカは、王の15番目に生まれた子供。


 名は、母親が名づけた。

 名の由来は母親が すぐに病死してしまったため わからない。


 幼いハルカは一人ぼっちだった。


 なんせ、母親が亡くなった後。


 ずっと部屋に閉じ込められていたからだった。


 しかも その部屋は。


 窓から国が一遍して見渡せるほど高い所に あった。


 城外で、楽しく笑いあい駆け回る子供達を見ては。


 自分の立場を呪っていた。


 まだ物心ついた年頃の頃は。


「どうして私は外に出ちゃいけないノ?」



「何で お母さんは死んでしまったの?」


と。


 毎日 同じ疑問が浮かんでは。


解答(へんじ)も無く消えていった。


 だが。


 部屋に ずっと居てジッとしているわけでもない。


 ハルカは本が好きで記憶力も優れていたので。


 一回 読んで学んだ事は絶対に忘れる事は なかった。


 そのため、部屋で。


 昨夜 読んだ本に書かれていた魔法とやらを試してみた。


 もちろん、呪文は完璧で。


 始めハルカは どうせ できるわけがないと思い込んでいたが。


 呪文を声で発していくうちに胸が高揚していくのを感じた。


 そして唱え終えた後。


 ハルカの体全体を不思議な淡い光が包んだ。


(何だ、これは……)


 確か この呪文は。

 物を動かす呪文だったはず――。


 ハルカは試しに部屋の中央。

 隅に置いてあった、到底一人で動かすのは無理な大きいクローゼットに向かって。


“動け”と念じてみた。


 すると どうだろう。


 クローゼットは浮かび床の間に5センチほどの隙間を空け。


 スー……と、右に一メートルほど移動した……。


「……」


 魔法が自分には使えた……。


 喜びが湧き上がる。


 確かな手応えだった。


 よし、と納得した後に。


 クローゼットを元に戻そうと壁を見た時。


 ハッと気がつく。


 壁に黒い縦の筋が見えた。


 ……いや、筋は縦の線だけではない。


 どうやら四角を描くように筋が通っている。


 大きさは、人が通れるほどの高さの。


 ……ちょうどドアぐらいだった。


(まさか……)


 抜け穴。


 半信半疑で、近づく。


 そっと白い壁に触れてみても、壁はビクともしなかった。


 ましてや自分は まだ子供。


 普通の子供の力では どれだけ頑張ってみても。


 動かすには力の無駄だろう。


 そう、普 通 の力ならば……だ。


 ハルカは もう一度。


 先ほど唱えたのと同じ呪文を唱えた。


 すると やがて四角い その筋の壁部分は中央に軸を置いて。


 4分の1ほど回転した。


 つまり この壁は。


 反転するドアの からくり仕掛けに なっていたのだった。


 ハルカは迷わず そこへ飛び込んだ。


 今は深夜。


 誰も部屋には来ないはず。


 最も。


 昼間でさえ滅多に人はハルカの部屋へ訪れたりは しなかった。


 ハルカを部屋へ閉じ込めておくくらい。


 溺愛していた父である王で……さえも。




《第37話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 鶲の中身はコーラかもよ(または醤油とか)。


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-96.html


 そして出来ましたらパソコンの方は以下のランキング「投票」をポチッとして頂けますと開花?(あと もうちょっと……)


 ありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ