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第36話(繋がり・壱)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/36.html

(『七神創話』第36話 PC版へ)




「私の体の中に四神鏡が存在するって、一体どういう事なの?」


 戦いの後。


 私とマフィアは。


 さっき鶲達に邪魔されてしまって。


 聞けなかった事をもう一度 聞き直した。


 鶲に全滅させられた兵士達を。

 逃げていた家臣や下女達が戻ってきて。

 別の場所へ運んだりケガの手当てをしたりしている。


 セナとカイトも手を貸して頑張っていた。


 私も最初 手伝っていたんだけれど。


 先にマフィアと謎の剣“光頭刃”に ついて。

 国王に聞いてみる事にした。


「見ろ、兵士達を。皆、負傷しているだろう?」


 国王は。

 城内のあちこちで呻いている兵士達を見て指さして言った。


「皆、すごい斬り傷。さすが偽物とはいえ、“邪尾刀”よね」


と私が言うと。


 そばに居たマフィアもウン、と同意した。


兵士達(かれら)は普通の人間だから ああして大ケガを負ったのだ」


 国王の表情は表立っては変わらないように見えたが。


 その目は少し悲しげに私には見えた。

 気のせいかもしれないけれど。


「……?」


 私の頭上にクエスチョン・マークが浮かぶ。


 普通の人間だから?


 ……普通の?


「さっぱり訳が わからないわ。ちゃんと教えて下さい」


 マフィアに頼まれて。


 国王は坦々と語り出していった。……


「『四神獣も一つずつ鏡を持つ。


 其の鏡 自らで水に溶け 風に さらされ


 土に腐り火で燃えたり。


 つまりは人間の体内に侵入し


 元の形を築き始め一枚の鏡となる。


 よって四枚の鏡 存在す。


 四枚で力は最大と なりて


 四神獣の体を復活させる力と成りたり。


 なほ、其の鏡を所有する者の体 寿命 尽きるまで


 死することなく永遠の力 手に入れたるが


 鏡 失えば即死す』――


“七神創話伝”の中の一部だ。父上が よく私に言い聞かせた。この世には、自分の体の中に鏡を持つ人間が4人居る、と。4人それぞれが持つ その鏡は、四神鏡。かつて、四神獣が所有していた力の鏡。四神獣は封印され、鏡は何処かへ行ってしまった。だが、鏡は まるで生きているかのように、なくなりは しなかった。伝説のように自然の中で生き抜き、人間の中へ潜り込んだ。そうして自分の住み家と したんだ」


“七神創話伝”!


 メモしなきゃ、と思ったけれど。


 手元に持ち物が ないので今は いいや。


 後で忘れずにメモしておかなくちゃ!


「鏡が意志を持っているかのように、人間の中へ!? それが……それが四神鏡!」


 私は国王の言葉を頭の中で整理する。


 国王は目を伏せ、続けた。


「そうだ。世界に4人居るのだ。彼らは、人間(じぶん)の体に寿命が来るまで、その四神鏡に護られ、大ケガだろうと たちどころに治してしまうという」


「体内に鏡が ある限り、死なないって事ね……」


 マフィアが そう言った時。


 私は ある事を思い出した。


 キースの街。


 思い出すのもツライ惨状。


 レイに襲われた街。


 その街へ行く途中に出会ったリカルという女の子の双子の妹。


 ミクちゃんっていったっけ。


 ミクちゃんが殺された時。


 その時の状況を全て見ていた人が居て。


 変な事を言っていた。


『ミクは、一回 斬られて重傷を負ったはずだが まるで生き返ったみたいだった』と。


 それから。


『何か白い物を取り出した』とも。


 後で その白い物が四神鏡の一枚だったって わかったんだ。


 その時は、ついに四神鏡がレイの手に渡ってしまったってショックで。


 深く考えたりしなかった。


 そうか……。


 そういう事だったんだね……。


「次に、邪尾刀だが」


 国王は私達が。


 一つずつ納得して聞き入っているのを確かめながら、続けた。


「邪尾刀は魔の刀。あれで斬られると普通の傷より完治が遅い。あの刀で斬れないものはないと言われているが、それほどはある斬れ味だという事だ。だが、その邪尾刀の力をもってしても、傷をすぐに治してしまう者が居る」


 それは すぐにピンときた。


「四神鏡の所有者ね」


 マフィアが先に答える。


「そうだ」


と国王は さらに付け加えた。


「たとえ心臓を一突きに されようと、10分以内には復活できるだろう」


 だから。


 ――だからミクちゃんは生き返ったんだ。


 四神鏡を体内に持っていたから。


 レイは すぐに生き返ったミクちゃんを見て確信したんだ。


 四神鏡を持つ者だ――と。


 全てを斬る邪尾刀。


 その力さえも はね飛ばしてしまう四神鏡の力。


「すごい力なのね……」


 私は改めて感心してしまった。


「あ。でも。レイは人を襲う時、必ず邪尾刀一本で戦ってたよね?」


と、私はパッと思い浮かんだ事を口にした。


「それが?」


「それは どうして? だってさ。四神鏡を持つ者は、どんな大傷も すぐに治せるんでしょ? だったら体内に鏡が あるかどうか、普通の刀や攻撃で確かめてみたらいいじゃない? そんな時間をいっぱい かけてさ。わざわざ邪尾刀一本で探すなんて。何か理由が あるのかなあ?」


 言いながら。


 何でだろう? と首を傾げる。


 それはマフィアも同じで、隣で一緒に悩み出した。


「うーん……そういえば そうね……邪尾刀一本に こだわる理由って……」


 腕を組みつつ考えたが。

 やはり わからなかった。


 国王も しばらく。


 負傷して運ばれている兵士達を目で追いながら。

 考えていたみたいだけれども。


 ボソリと発言する。


「こちらに、そう思わせるため」


 私とマフィアは え、と国王の横顔を見つめた。


「どういう事ですか?」


「我々に、その者……レイとやらが、邪尾刀で なければ街や人を襲えないとでも思わせておけば、何か都合が いいのでは ないのかと思ってな。例えば……」


 ドキリと……そしてドクンドクンと。


 自分の心臓の音が大きく聞こえた気がした。


「その者は……お前達を待ってるんじゃないのか。時間をかけて……いたぶるように……とか」


「……」


 心理作戦。


 私達を誘うように先回りを。


 そういえば前に私は誘われるようにレイの所へ のり込んだんだった。


 私達が苦しむように……か。


「もしくは、傷の度合いを均一にするため、とかな」


 もう一度、国王の顔を見る。


 目が合ったが。

 私はハテ? と目で聞いた。


「ただの憶測だが。恐らく そのレイとやらは、人間 皆 同じような深さと大きさの傷をつけていたのではないか。常に同じ武器を。それも強力な物を使う事で、鏡の有無を極端にしてみせたのだろう」


 極端に?


「そっかー……。いつも違う武器を使っていたら、つける傷具合も毎度 違ってくるわけで。ひょっとしたら浅くなったりして、見分けが つきづらくなってしまうのかもね」


と、マフィアは国王の説明に納得を示したんだけれども。


 私には さっぱりと わからなかった。


 なので もう一度 聞いてみる。


「つまりね。ココにリンゴが数十個あるとします。それと、ナイフも違う斬れ味の物が何本か あります。リンゴに一本一本、ナイフを突き刺していくわけだけど。勇気は、その突き刺した何十個かのリンゴを並べて見て、どれが一番 固いリンゴか、わかるかしらね?」


 マフィアが投げかけた質問に私は考え込む。


「ええ? わかんないよ。だって、一番 固いリンゴを一番よく斬れるナイフで斬るのと、一番 柔らかいリンゴを全然 斬れないナイフで斬るのとって同じ手応えになるんじゃない、ひょっとして。どれが一番 固いリンゴかなんて聞かれても……答えようがないよ」


 私の頭の中にはリンゴが いっぱい。混乱しそお。


「じゃあ、数十個のリンゴに一本のナイフじゃどう? 勇気」


 頭を抱えている私にマフィアは少し微笑みながら。


 私は「うーんと……」と また悩む。


「そりゃあ……斬れ味は一緒なわけだから。どれが固いか わかる……そっか。なるほど!」


「そうよ」


 マフィアが今度は満足気に微笑んだ。


 複数の武器を用いてもダメなんだ。


 レイは単独で……自ら一人で村や街を襲っていた。


 多人数を相手に単体で。


 部下には任せずに、レイ自身が。


 強力な武器で。


 思い切って容赦なく傷をつける事で所有者の復活を極端に見る事が できて……。


「……」


 容赦なく、と思った所で背筋が凍り。


 手や額にジットリと汗をかいてきた。


 嫌な汗。


 そして気分が悪くなる……。


「レイは……それを頭に入れて行動していたのかもしれないわね。いつも同じ邪尾刀を使う事で、リンゴ――人間のタフさ、治癒力。死んでいった人達の傷痕を見れば わかる事ね。皆につけられた傷は、情け容赦なかった……」


 眉間にシワを寄せ。


 悔しく悲しい表情をマフィアは浮かべた。



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