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第34話(神)・2


 コツコツと響いた音をさせ。


 鉄格子の前に現れた男。


 30代くらいで、厳かな騎士の格好をしていた。


 銀の鎧や武具の上に、黒のマント。


 剣は2本。


 装飾をこしらえた、立派な剣だった。


「女を連れて来いとの命令だ。そこの2人、来てもらおうか……ん?」


 彼はマフィアをジッと見て。


 顔が赤くなった。


 ボッ。


 顔に火が ついたようだった。


「サ、サンゴ将軍?」


 隣に連れ添っていた兵の男が心配そうに見た。


 サンゴ将軍と呼ばれた男……は。


 後ろを向き。


「好みだ」


と、ブツブツ唸っていた。


 兵の男が「はあ?」と変な顔をすると。


 ゴホン! と恭しく咳払いをし。


 兵の男に指示を出した。


「連れていけ!」



 私とマフィアは国王に直接 会わされるらしい。


 胸がドキドキする。


 ……自分で選んだ事ながら。


 上手く言えるだろうか。


 民族間での争いの事。

 残された者達の生活の事。


 そして宗教迫害の事。


 絶対王政ですって?


 つまりは王の意思には絶対に服従って事でしょ。


 ココでは王が神であり。

 神で ある王が一番 偉い。


 ふん!


 たかが人間が神ですって!?


 ……天神様は人間なのかしら?

 まあ、人間じゃないとして。


 とにかく、王が神だなんて事。

 あるはず ないんだから!


 よしっ、燃えてきたぞ!


 このまま一気に王と激突なんだからね!


 ……と、マフィアの方を見る。


 すると。


 マフィアは嫌な顔で何処か遠くを見ていた。


「どうしたの、マフィア」


 不思議に思って聞くと、


「ちょっとね……後ろからの視線に寒気が」


と、小声で言って うなだれた。


 チラと後ろを見て、ギョッとした。


 サンゴ将軍は すごくニヤニヤした顔で。


 でろーんと鼻の下を伸ばして。

 マフィアの背中を見つめていた。


 私は何か見ては いけないものを見てしまった気持ちで青ざめた。


 彼は こう思ってるに違いない。


(ああ……何て理想にピッタリの人だ。何てバラの花のように美しい人なんだろう!)


と……。


 もう少しの辛抱だから、というような気持ちで。


 ポンとマフィアの肩を叩く私。




 ココは西洋風の城なんだ。


 外観からは見てないんだけれど。


 国王に呼ばれて向かって行く途中。


 広い中庭や やけに豪華に彫られた柱や壁。


 扉、長い廊下を見て そう思った。


 私とマフィアは。


 赤い絨毯(じゅうたん)が敷かれた真っ直ぐの長い長い廊下を歩かされ。


 やっと国王の居ると思われる所へ着いた。


 床はピカピカの宝石のようで。


 窓はステンドグラス。


 天使や花の模様をして。


 両壁にある。


 ココは……王座というより、教会のようだった。


 マリア像とかは ないけれど。


 赤い絨毯が。


 10段以上は軽くある階段の上にまでスッと続いている。


 段の最上には。


 白いレースのカーテンが閉まっていて。


 両脇に大きく立派に生けられた花が飾られていた。


 その花の壷の装飾も花に劣らず豪華絢爛で見事だった。


 カーテンとカーテンの間。


 閉まっているけれど、人影が映っていた。


 彼が……国王に違いないのでは。


 広大なベルト大陸の南半分を治める、南ラシーヌ国王。


 一体 如何なる人物なのか。

 とても興味が沸く。


 しかしカーテンが開かれた時……。


 私もマフィアも。

 目をいつもより倍以上に見開いて驚いた。


 不死鳥みたいなものが乗っている金色の王冠。


 自身も金や銀、赤といった色とりどりに。


 これまた不死鳥か何か それらしきものを刺繍されたものを。


『着させ』られているかのように思える衣装を……。


 周りに引けを取らずに自身も豪華な。


 小さな体。


 子供……だった。


 ほんの、7・8歳か そこらの……。


 しかし体は子供でも。


 顔つきは大人らしく見える。


 キリッと整えられた眉。

 鋭く吊り上がった目つき。


 クスリとも笑いそうにない口元。


 レイでも そのまま子供に したんじゃないかと言えば、わかりやすいかも。


 堂々とし、落ち着き。


 私達を見下ろすというよりは。


 見下すといった感じを受けさせる。


「どうした。相手が子供で、拍子抜けか」


 端整な眉をピクリとも動かさず。


 私達に そう言った。


 声柄は子供だが。

 それが逆に怖い印象を与える。


「ふん。まあいい。救世主は どいつだ?」


 この子、いや、王――は。


 私とマフィアを交互に見た。


「私です」


と、私が名乗り出ると王は「ほう」と返す。


「お前か。では、証拠を見せよ」


「へっ!? 証拠!?」


 急に証拠を見せろと言われ、たじろぐ。


 予想も していない事だった。


 必死に考えた。


 救世主で ある証拠……。


 そんなもの、ない。


 私が困って難しい顔を延々としていると。


 王は待っていられずか。

 無感情に言い放つ。


「何だ、ないのか。ならば用は ない。斬り捨てろ」


 王の言葉を聞き。


 階段下の壁際の方で控えていた兵達が2・3人。

 即座に動き出す。


 私だけを狙うように。


 腰の剣を抜きながら歩み寄って来た。


 様子を見て慌てて私の前へと飛び出し庇う、マフィア……。


 マフィアは庇う体勢をとりながら。


 王に聞こえるように大きく叫んだ。


「この子は本物の救世主です! 天神様から召喚され、私や牢に居る者で残りの七神を捜す旅をしているのです!」


 マフィアの決死の叫びは。


 ちょっとでも通じたのだろうか。


 王は反応してくれた。


「ほう、七神か」


 マフィアは それに少しホッと安堵して。


 礼儀正しく お辞儀した。


 私も つられて、真似た お辞儀をする。


「はい。私は七神の一人、木神。マフィア=レイク=オクトーヴァと申します。こちらが救世主、松波勇気です。付き添い、旅をしておりました」


 国王は その態度を見て。


 少し考えた後に結論に達した。


「ふん……あながち嘘でも ないようだな。まあいい……お前が救世主か。ユウキと言ったな」


 名前を呼ばれて。


「はい!」と返事する私。


「お前が救世主なら、一つ頼みがある」


「……」


 返事をするタイミングを失った。


 頭の中、少し混乱気味に。


 国王が私に頼み事?


 一体 何?


 もしや いい事かしら……?


 なんて、淡い期待を抱いていた。


 私の やや斜め後ろにスッと静かに人が立った。


 マフィアは気がついて まず その人を見上げる。


 私が数秒ほど遅れて振り向こうとした時に。


 自分の首筋に冷たく硬い物が……触れた。


 それが。

 よく磨き上げられた剣だと理解するまで、また数十秒。


 剣で私の首を狙っているのが。


 サンゴ将軍だと理解するまで、さらに また数十秒と。


 私と視線が合うと。


 ニヤリと楽しげな口元に変わっていった。


 訳が――わからない……。


 これは何のパフォーマンス?


 ふざけているの?


 という麻痺した妙な感覚か余裕さで。


 もう一度 王座に座っている国王を見た。


 目は ちっとも笑っていない。


 賎民でも相手しているかみたいに。


 完全に高みから見下している。


 私は あの眼を知っているわ。



「国民の前で死ね」



 言った。


 王の言葉。


 大きな声では なかったはずなのに。


 空間を支配し弾圧さを秘めた抑揚の ない声が。


 屋内の隅々にまで響き渡った。


 首元に置かれた剣。


 全く身動きできない私とマフィア。


 ただ命令するだけの国王。


 ……これは夢?


 夢なの?


 夢なら早く覚めて欲しい……。


 そう、全てが夢なら。


 あの親子も救われる。


 私は救世主で なくなる。


 でも、この剣の冷たさは。

 そうはさせては くれないだろう。


 あの、人を(あざけ)り、射抜くような視線。


 海も山も空も凍りつくような厳かな視線。




 私は あの眼を知っている。




《第35話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 救世主で ある証拠。何だろう。

 まな板でも調べてもらったらどうだ? と ちょっと思ったりしましたが……(何となく思っただけだあ)。


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-93.html

 そして出来ましたらパソコンの方は以下のランキング「投票」をポチッとして頂けますとニョキ(あ)。


 ありがとうございました。



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