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第31話(復活の女神[ハルカ])・4


「!?」


 私が驚いて目を見開くと、ハイと何かを渡された。


 それは……。


「何、コレ……ブレスレット?」


 渡されたのは、光る小さな石が何個か連なっただけのブレスレット。

 石は透明で、キラキラ輝いていた。


「やる。さっき買った」


 笑ったまま私の反応を楽しんでいるかのようだ。


 私が よく わからずじまいな表情で いると。


 横からメノウちゃんが走って来た。


「あー! ずるーい! メノウも欲しーい!」


と訴える。


 するとセナはズボンのポケットからゴソゴソと取り出して。


 私のと あまり変わらない石の連なったブレスレットを渡した。


 メノウちゃんのは、青い石だった。

 大喜びだ。


「わーいわーい!」


 はしゃぎ回っている。


 セナは、蛍とマフィアにも似たようなブレスレットを用意していたようだ。


 蛍には赤の。

 マフィアには緑の色の石の物を。


 最初 言葉が なかった2人だったが。

 ちゃんと それぞれ後で「ありがとう」とお礼をセナに言った。


「俺には ないわけかー?」


と、カイトが口を尖らす。


「あるよ。せんべい もらったんだ。あ、ハウス先生とミゼー先生にも あります。今まで世話に なったんで、ほんの お礼です」


「ええ! いやあ、悪いね、お礼だ なんて。何も していないのに」


 ハウス先生は苦笑いをしながら自分の首筋を撫でて。


 セナから袋に入った せんべいの詰め合わせを受け取った。


「せんべい、か……」


 ちょっと悲しげにカイトが呟いた。


 少し離れた向こうでは、紫の口元が少し笑っている。


「どういう風の吹き回しかしらね」


「気まぐれ風のセナ君、ってか?」


 カイトは言ってフン、と鼻を鳴らした。


 マフィアも肩を竦ませる。


 私はブレスレットを握りしめ。


 セナに違和感のようなものを感じ続けていた。




 私達はキースの街を後にし。

 シュガルツ港から東のベルト大陸へ向かった。


 離れている大陸だから、到着までには一週間くらい かかる。


 まあ、仕方ない。


 船以外の交通手段なんて ないわけで(飛行機なんて ないし)。


 一週間も!? と つまらなさそうに諦めていたわけだけれど。


 そんな事ないみたい。


 今まで乗ってきていた客船と比べると。


 もっと大型で、人数も かなり居た。


 カジノコーナーといった娯楽場や談話室。


 ピアノが置いてあって演奏できたり、といった設備が それなりに揃っており。


 場によっては商人達が集まって小さい店を かまえ。

 武器や防具の売買の取引をしていたりする。


 船上の街が出来あがってんじゃないだろうか。


 しかし業者ばかりでも ない。


 富豪達も居るし。

 温かそうで平凡な家族や男女のカップル。

 明らかに民族っぽいような格好の人達。

 とにかく、色んな人が同じ船に乗っていた。


 しかも皆、とおっても親切!


 目が合ったりすると。

 笑顔になって話しかけてきてくれる。


“何処から来たんですか?”とか“どちらへ?”とか。


 そういった事柄から始まって。

 会話は段々と盛り上がってくる。


 船の上では何処からでも笑い声が聞こえてきていた。


 何か いいよね、こういうのって。


 ま、私ったらウッカリ商人の一人に つかまっちゃったりしてさ。


 何だかんだとホメ殺しにされた挙句。


 訳の わからない民族 人形なんかを。

 ……買ってしまったりしちゃったけれど

(しかも その後セナにバカーってデコピンされた……)。


 でも、楽しい。


 楽しいから。

 あっという間に4日が過ぎてしまった。


 明日は いよいよ5日目……という、夜。


 オープンテラスでセナとマフィアと私と。


 3人でドリンクを飲んでいた。


「どーやらベルト大陸って、別名『民族大陸』って言われているらしいわね」


と、マフィアは注文した果実のミックスジュースを飲みながら。


 話を持ちかけた。


「民族大陸?」


「うん。今日、買い物してたらさ。商人の おじさんが色々と教えてくれたのよ。その おじさんは西南出身らしいけど、ベルト大陸は何度か商売に出かけているって。ベルト大陸は世界で一番大きな大陸で、独自の文明や文化を持った民族ばっか なんだって。そのせいで、民族 同士の対立が絶えないとか」


「民族 同士の対立……」


 私は、学校の社会の授業を思い出していた。


 教科書に そんなような資料や記述が並んでいた気が する。


 日本には民族 紛争なんて事は ないし。


 私は あまり関心が なかったけれど。


「戦争も たくさんあったらしいわよ」


 戦争。

 戦争……。


 ニュースで見た事があった。


 大好きなラーメンを食べて。

 ヒンヤリと おいしいジュースを飲みながら見ていたと思う。


「そういや昨日、変わった服を着た女の人が教えてくれてたなあ」


と、セナがグレープジュースに近そうな物を飲みながら言った。


「何、ナンパでもしたの?」


 マフィアがピシャリと言ったのをセナは否定する。


「違う違う。向こうから話しかけてきたんだって」


「それって逆ナン……」


と、言いかけた私の頭を上から すかさずチョップするセナ。


「――で? 何て言ってたわけ?」


 マフィアが話題を戻してくれた。


「これから行く所はリール港だけど、そばにタルナ民族の村が あるわねって。そこはサッサと通過した方が いいわよ、って」


 通過した方が いい?


「どういう事?」


「さあ……」


「さあ、って。何で肝心なトコ聞いてこないのよ」


「だって。知りたきゃ金くれって言うんだぜ? 冗談じゃない」


と、ガラスコップの底に残ったグレープジュースもどきを全部飲み干した。


 コロン、と氷の音がコップの底で鳴る。


「ふーむ。やっぱり……“民族は集団 意識が強くて自分達の事は話したがらない”って噂、本当みたいね」


 マフィアの言葉に少し共感。


 私も時々会った人とかに聞いてみても。


 なかなかコレといった素性の事は話してくれない。


 当たり障りのないような話ばっかりだった。


 怖いイメージが つく。


 私の居た世界じゃ。


 民族のイメージといえば楽しそうに。

 パレードなんかしちゃったりするのかなと。


 サンバとか踊って、フェスティバルを開いたりと。


 戦争とか、話だけで全然 身近に感じた事なんて ない。


 どう理解したらいいんだろうか。


「さてと。俺、もう寝よ。じゃあな」


 セナは起立して。

 私達を置いて船室へ行ってしまった。


 マフィアが私に だけ聞こえるくらいに近づいて耳元で尋ねた。


「ねえ、セナ、何かあったの? 最近、やけに……」


 私はドキリとした。

 マフィアも私と同じ事を思ったんだと。


「……わかんなくて。何かね、最近……セナの考えている事が わからないの……」


 視線は私が飲みかけていた、味がアップルジュースもどきに。


 淡いピンクの液体に、私の顔が小さく映っていた。


 泣きそうな、悲しい顔を。


「変わったのは、レイとの戦いの後? その時、何か変わった事あった?」


と、マフィアは私の顔を見た。


 マフィアは知らない。


 ――セナとハルカさんの関係(こと)


 どうやらレイとの戦いの後カイトから。


 セナとレイとハルカさんは昔の知り合いらしいって事と。

 ハルカさんはレイの事が好きらしいって事を聞いたらしい。


 でもマフィアは それ以上は知らないんだと思う。


 マフィアだけじゃなく、カイトや蛍達も……。


 3人の間で昔 何が あったのか。

 全然 知らないんだと思う。


 ハルカさんが あそこに居た理由も。


 セナがハルカさんの事を好きかもしれないって事も。


 話してしまった方が。


 ……いいのかもしれない。


 でも、ごめんなさい、皆。


 言うには私に、力が ないの。

 そんな勇気が ない。


 今は……


 今は、言うのが辛い――



 私が黙ってしまったのを見て。


 マフィアは もう何も言わなかった。




《第32話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 ○レーラムネというのを飲みました。

 ワキ毛の味がした……(不味い……@)。


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)↓

http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-85.html

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 ありがとうございました。




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