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第31話(復活の女神[ハルカ])・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/31.html

(『七神創話』第31話 PC版へ)




「やあ。また会えたね」


 黒髪をサラサラと させ。

 ニッコリとカッコよく笑う。

 キースの街医者。

 ハウス先生。


 その横には。

 紅い髪を以前と同じく。

 ポニーテールに している女医。

 ミゼー先生。


 ミゼー先生は黙々と。


 イスに座って繕いものをしていた。


 私が寝ていたベッドから起きてボケっとしていると。


 ハウス先生はポンポンと私の肩を叩いた。


「大丈夫かい? ココは僕の診療所だよ。君は気を失って、セナ君達が運んできてくれたんだ」


 キースの街の診療所……?


 ああ そうか私。

 一人でレイの所に のりこんで。


 ……紫苑が助けてくれたんだっけ。


 私達、3人を……。


 大丈夫。


 記憶は完璧に戻ったぞ。


「まあ いいか。じゃ、僕は仕事に戻るよ。セナ君達なら、たぶん向かいの飯店で お昼をとっていると思う。お腹すいてるかい?」


「あ……いいえ」


「そう。まあ、何か あったらミゼー先生に言ってくれ。ミゼー先生、よろしく」


 呼ばれたミゼー先生は。


 繕い物をしていた手を止めて。

 顔を上げて私達を見る。


「わかったわ」


「じゃ、ゆっくり休養を」


 バタン。


 部屋に、私とミゼー先生を残して。


 ハウス先生はドアを閉めて去った。


 シーンと静まりかえった病室。


 ミゼー先生はチクチク縫い物をしているし。

 邪魔できない。


 参ったなあ……と。

 考えている時。


 プツン、と糸を切って縫っていた物を広げたミゼー先生。


 よく見ると、それは私の制服だった。


 ボロボロだったはずが、元通りに なっている。


「こんなものでいいかしら」


「へっ……あ、え、あ、は、はい! って、わざわざ直してくれたんですか!? ソレ!」


 つい背筋を伸ばして聞いてしまうと。

 ミゼー先生は首を傾げた。


 そして表情を変えずに。


「余計だったかしら?」


 と言ったのが。


 ちょっと怖かった。


「い、いえいえっ! そんなめっそうもないっ」


 慌てて首を振り。

 手を振った。


 ミゼー先生が家庭的だったのが意外で。


 ちょっとびっくりしてしまったので あります、ハイ!


 だって。

 いつもはムスッと。

 ……いや、フン、って感じかな。


 とにかく そんなピリピリした雰囲気の人だったからさ。


 あんなにもボロボロの服を直してくれただなんて。


 修繕された制服を受け取って。

 表、裏、前、後ろと返して見てみる。


 ……すごい。

 繋いだ跡が見えない。

 完璧だ。


 素晴らしいわと しか言いようが ない。


 なんて器用!

 いやあ、こいつは感動でっせ。


「裁縫……ベリうまですね……ぶったまげちゃいました」


「馬? 豚が何ですって? 動物と何かあったの?」


 ……心に木枯らしが吹いた。


 ヒュルルルル。


「……じゃ、なくて。ええと……裁縫、上手ですねって……」


「そう。ありがとう」


と、素っ気なく言った後。


 足元の紙袋から また別の繕い物を取り出した。

 トントンと肩を片方ずつ叩きながら。

 フウと息をついた。


「あと、あなたのスカートが まだね。それから彼らの服も。もう少し待っててもらえるかしら。今日中に終わらせるから」


 何と。


 それぐらい してあげて当然みたいな口振りのミゼー先生。


 私は申し訳ない気持ちで いっぱいだった。

 ポリポリと、頭を掻くしかない。


「す、すみません。お仕事の邪魔しちゃって……」


 ミゼー先生、初めて微かに笑った。

 しかしフッ、と少し笑う程度。


「仕事はハウス先生が全部やってくれているから。私は あなた達の お世話を頼まれているのよ。だから気にしないで。それより、お腹が すいたでしょう」


「あ、はあ……」


 ちょうどいいタイミングで。

 お腹がグウと鳴った。


「服は そこに置いてあるのを着てもらえる? 私のだから少し大きいのだけれど……」


 目線の先を見ると。

 ベッドに放りだしてある私の足の そばに。


 きれいに たたまれていたワンピースが。


 私は それを着て、診療所の前の飯店へ向かった。




 シンプルなデザインの水色のワンピース。


 丈は長くて、大人っぽい。


 ノースリーブでハイネック。


 マフィアに でも なった気分だったけれど……。


 所詮、私が着ても。

 やはり お子チャマで ある。


 大人っぽいのは服で あって。

 私では ない。


 それに しても。


 ……こっちの世界の服は。


 布の感触が、私の居た世界の物とは違う。


 ゴムみたいに伸びるし。


 手触りは紙の質感に近いんじゃないだろうか。


 一体 何の素材を使っているのだろう。


 飯店に入ると。


 すぐにセナ達を見つけた。


 奥の隅っこの方で、大きい丸テーブルを囲んでいる。


 ちょうど蛍とカイトの間が空席だったので。

 私は そこに腰かけた。


「ソレ、ミゼー先生の服?」


と、隣のカイトが聞いてきたので。


「うん。よく わかったね」と言い返すと。


 クンクン匂いを嗅ぎながら。


「やっぱりね。ミゼー先生の匂いが する」


と言った。


「お前は犬かい」


と、カイトの隣に居たセナがカイトの頭にチョップした。


「お姉さん、追加っ!」


 頭を押さえながら。

 エプロンを身に着けていた店員の人に向けて挙手するカイト。


 追加 注文をとって少し落ち着いた後。

 セナが話を切り出した。



「……で。全員揃った所で。現在の状況と、これからの事だけど」


「……」


 はあ……さっそく その話ね。

 ま、仕方ないんだけれど。


「ハルカが復活した」


 目の前の食べ終わった皿を見ながら。

 一つずつ確認していく。


「レイも……生きていたし、きっと復活するだろう。で……レイとハルカは、たぶん……」


「手を組むだろうね。恐らく」


 手を組む……。


 私も そう思う。


 レイは別に そのつもりなくとも。

 ハルカさんはレイを支持するに違いない。


 夢の中で『レイのやる事に邪魔は しない』なんちゅう事を堂々と言っていた。


 世界の破滅だろうが たとえ切腹だろうが。


 ハルカさんに とってレイは絶対の存在。

 絶対神だ。


 レイが青龍を召喚しようとするなら。

 快く手を貸すんだろう。


 カイトの指摘に皆が頷いた後。

 カイトは指を2本立ててみせた。


「これで敵が2人に なった……はっきり言って厄介だ」


 目線は皿から離さない。

 ずっと下を見つめたままだった。


 私は段々と緊張してくる。


「彼女……ハルカだっけ。見ただろ、あの技」


 カイトが思い出した事を口にした時。

 私はハッと気が ついて声に出す。


「あの技……何? どうしてハルカさんが あんな技 使えたの!?」


 私達3人は確かに目撃した。


 首の飾りが赤々と光り出し。

 同時に“火焔”なんていう技を使った事を。


 普通の人間には決して できない。


 普通の人間には……。


「まさか……七神の一人……?」


「炎神か」


「すごい偶然」


「ちょっと。まずいんじゃないの、ソレって」


 口々に言い合った後。

 蛍の一言でピタリと空気が止まった。


「七神のうち、 2 人 が敵に なるんでしょ、勇気」


 そうだった。


 レイ=闇神と、ハルカ=炎神が あちら側に なる以上。

 どう頑張っても こっちには5人しか揃わないという事。


「ハルカさんが炎神だっていうの……間違いじゃない? 何かの……」


と私が反論してみても。


 賛同してくれる人は一人も居なかった。


「確信できるよ。七神アイテム、“七神鏡”だって持ってたんだから」


 七神鏡……首の飾りの事ね。


 そうだ……確かに。


 アレが反応していたのを私も見たんだ。


 セナの指輪やマフィアのペンダントみたいに。

 七神で ある事の証だ。


 シーン。


 沈黙は店員さんが。

 注文した料理を運んできてくれるまで続いた。




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