第26話(苛立ちと不満)・4
宿屋に戻った私。
皆は もう広間のテーブルに ついていた。
お茶だけを宿屋の おかみさんに頼んで。
何やら談笑していた時。
帰ってきた私は さっそくチリンくんに聞いた事を話した。
「デタライト島だって!? あの魔の島!?」
色めきだったのはカイトだけ だった。
驚いた顔をして、私の顔を見た。
「そうか……うん、そうだな。レイが そこに居ても別に変じゃないか……」
と何やら ひとり言を言っている。
「変なのは お兄ちゃんだよ。何ブツブツ言ってるの?」
メノウちゃんが そうツッコむと。
「いや……ひとり言」と言って黙ってしまった。
「参ったわね。そこ、魔物の巣とも言われてる所よ。人は滅多に行かないし。いくら私達でも危険すぎるわ」
マフィアは考え込むようにイスに身を預けた。
そして やはり黙ってしまった。
「しかし よくわかったな。レイの居場所」
セナが そう言って私を見たが、私は「うん……」と自信なさげだった。
セナが おいおい、しっかりしてくれよというような顔をしたので。
私は俯いてしまう。
「そこに居るって言ったのは……あのチリンっていう。セナ、覚えてない? 元の世界に戻る時、私の そばに居た男の子」
セナは考えながら唸る。
「うーん。そういや居たけど……あんまり覚えてない。何者なんだ? そいつ」
「知らない。とても、不思議な子……」
「まあいい。俺の勘じゃ、たぶん味方なんだろう。そいつを信用する、か……」
腕を組んでいたのを解き。
私達 全体を見渡したセナ。
「行くか行かないか……だろ?」
と……視線を私でピタリと止める。
私は、キッパリと言った。
「もちろん、行くわ」
と。セナは見て、満足そうに頷いた。
「それじゃ……」
カイトがマフィアを見ると。
マフィアも頷いてカイトを見た。
「明日。決行ね」
今度は全員で頷いた。
夕食を食べた後。
同じ場所で話し合いは続いている。
デタライト島は、ココ マイ大陸の真南。
テナ海を南へ進めば おのずと見えてくるのだけれど……。
問題なのは。
「どうやって行くかって事だな。船なんかねーし。何処かで船を借りるか」
「それなんだけど。試してみない? カイト」
マフィアが意味ありげにカイトを見る。
カイトは壁に体を もたれさせていて指をいじっていたが。
止めて顔を上げた。
「はあ?」
言ったのはカイトでは なくセナだった。
「私とカイトの力で、よ。練習していた技のアレ。マーク国へ到着するまでの間に、だいぶバランスが とれるようになったじゃない? そうね……4人くらいまでならイケるわ。勇気、セナ、カイトと私で行けば」
それを聞いて憤慨する蛍。
ドン、とコブシをテーブルに打つ。
「私も行くわよ! もちろん紫も! 置いてきぼりだなんて!」
マフィアの言葉に熱り立つ蛍。
マフィアは困った顔をした。
カイトが口を開く。
「なあ、マフィア。それって、アレだよな。『草鞋』で木の葉の塊を作って、その上に乗って、海面上をスイスイ渡ろうという」
「そうよ」
「4人までなら、っていうのは君が『草鞋』の上に乗った場合の人数なんだろ? 水の上じゃ、木の精霊の力は弱くなる。限界が4人って事なんだよな? って事はさ。木の精霊が ふんだんに居る場所でなら、もっと人は乗せられるんじゃないかな?」
カイトが そんな風に言う。
マフィアは片方の眉をひそめた。
「つまり?」
「って事はさ。俺と、勇気と、セナと、蛍と紫。この5人が行くんだよ。君は陸で遠隔操作してくれればいい。陸の方が精霊も多いし水面より楽だろうしな。たぶん俺らならできるはず。陸で、君はメノウの面倒を看てやってくれ」
陸に残って遠隔操作!
そんな事、思いつかなかったけれど。
でも そのやり方だと確かに行く事の できる人数は増やせるわけで……。
なんて私は考えていたが。
いつもは穏やかなマフィアが。
この時ばかりはカッと顔が赤くなった。
「私も行くわよ! 相手はレイと四師衆! 戦力は一人でも必要でしょう! 家を出た日から、私はレイ達を倒すって決めてたんだから!」
それを聞いた今度は蛍がカチンとなる。
「レイ様を倒すなんて許さない! 私はレイ様を倒すために行くんじゃないわ!」
両者の睨み合い。
思わぬ展開に なってしまった。
雲行きが怪しくなってくる。
まだまだ、会議は終わりそうな気配を見せなかった。
《第27話へ続く》
【あとがき(PC版より)】
へー。
『苛立ち』って『いらだち』と読むんだ〜。へー。
……。
作者、過去の自分に学ぶ。
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