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第26話(苛立ちと不満)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/26.html

(『七神創話』第26話 PC版へ)




 勇気達がマーク国へ向かっていたと同じ頃。

 とある東の大陸の。

 ある地域がレイによって、襲われていた。


 ライホーン村、キースの街と同じ。

 あちこちに転がった死体の山と。

 崩れ滅びた家屋。


 レイの少し興奮気味の息づかいだけが。

 静まった辺りの中で聞こえていた。



 静かだった。


「レイ様……」


と、レイに。


 そばに居た さくらが白いハンカチをそっと差し出した。


 だがレイは それを邪険に振り払う。


 景色 遠くを睨むレイ。


 山の向こうに堕ちかけた太陽が、赤々とレイの顔を照らしていた。


「何故だ……何故、見つからない……?」


 手には固く握り締めた邪尾刀。

 刃先からは血が滴り落ちている……。


 するとレイとさくらが並んで立つ背後に。


 腹に深手を負いながらも。

 立ち上がって攻撃を仕掛けてきた者が居た。


「レイ様!」


 先に気が ついた さくらが振り返って悲鳴を上げる。


 ……が、心配 御無用とばかり。


 レイは即座に邪尾刀で見事に。


 振り下ろした刀で相手を思い切りよく縦にブッタ斬ってしまった。


 勢いのある返り血を容赦なく全身に浴びるレイ。

 服は構わず赤に染まる。


「……クソッタレが」


 レイは悪態をついた。


(こいつも違う。四神鏡を持っていない。何故だ……救世主は着実に七神を集めているというのに。あと、たったの3枚じゃないか)


 レイの思いが胸中を駆け巡る。


 同時に燃えたぎる熱い血液が。

 血管を伝って全身に通い行き届く。


(襲った地はココで3つ目か。人口の多い場所を狙ってきた。……おかげで一枚は見つかった。だが……)


 思考は加速する。


 止まるを知らず。

 感情と合わせていき叫びの音へと変えた。


「あと3枚もか!」


 もう一度、遠く彼方。


 山のある方へと睨みをきかした。


(早く……早く!)


 もはや(いら)立ちを抑えきれないでいるレイの様子を見ていて。


 さくらは不安になる。

 さくらの長い絹のような黒髪は、砂の混じった風で なびく。


 さくらは思う。


(このままでは いけない。何とか しなくては……)


と……。


 息を呑み。

 不安な片手を自分の胸へと押し当てた。




 カスタール村は、のどかで平和な村だった。


 入り口に人は立っておらず。

 村には ほとんど人が居ない。

 見渡せば田畑が広がっている。


 数少ない村人達は。


 いきなり やって来た私達を歓迎してくれていた。


 宿をとる。

 落ち着いてテーブルに ついていると。


 ささやかだけれど差し入れだと言って幾つかの果物を村長さんが持ってきてくれた。


 そして村長さんは私達が食事している間。


 久々に外からの客人だと。


 ずっと一方的に しゃべり続けていた。


 この村の歴史、世界の事……そして何と!


「『七神創話伝』!?」


「本当ですか!?」


 私達は目を丸くする。


 丸いテーブルを囲んで。


 野菜をたっぷりと煮込んだシチューや、私達のために宿屋の主人が わざわざ作って下さった焼きたてのパンを頂きながら。


 長々と おしゃべりをしている村長さんの話の中に。


 その言葉が突然 登場してきたもんで、びっくりしてしまった。


 食べかけの熱いシチューが口から こぼれそうになった。


 私と、私の向かいにセナ。

 その隣に蛍や紫と。


 箸やスプーンを持つ手を いったん止めて。


 皆で村長さんに注目した。


「すごい反応だな。何だ、何か あるというのか」


 不思議そうな顔をする村長さん。


 まだ若いけれど。

 しっかりとした顔立ちと体格。


 まず私の顔を見た。


「あ、あの。興味あるんです。内容とか、ご存知なら ぜひに……」


 私が両手を組んで お願いする。


 同じ場に居た宿屋の主人と村長は顔を見合わせたが。


「おう。いいけどよ」と言った村長さんが嬉しそうに私達を見た。


「『或る日 天地開闢(かいびゃく)の……』って あたりくらいから、ちょこっとだけだけどな」


と、言った。


 反応をすぐに示したのは私だけだ。

 身を乗り出しそうになった。


「『或る日 天地開闢の』、ソレ! 夢に出てきたわ!」


 私が大声で言うと、セナが「はあ?」といった顔をした。


「夢って?」


「元の世界に戻ろうとした時、頭の中に浮かんだの。不思議よね、コレって」


「全部 覚えてるか?」


「えと……」


 セナに突っ込まれて。私はグッと息が詰まった。


「すごく長かったから……細かく覚えてないや。でも、七神が できた理由みたいな、昔話っぽかった気が……するんだけど」


と、セナと私が話していると。


 宿屋の主人がオホンと一つ咳払いをし、言い出した。


「七神創話伝 第二の章……“七精霊の誕生”だ。俺が教えてやる。とは いっても、俺が知ってるのは第二章まで なんだけどな」


「あ、ちょっと待って下さい」


 私はリュックからシャーペンとメモ帳を取り出した。


 忘れる事が ないように、メモっておこうと思って。


 まだまだ旅するにつれ、章は増えていきそうだしね。


「ついでに。第一章も書いておくよ」


 そう言って私はサラサラとメモ帳に書き出した。



『 この世に四神獣 蘇るとき

 千年に一度

 救世主ここに来たれリ

 光の中より出で来て

 七人の精霊の力 使ひて

 これを封印す


 七人の精霊の力とは

 転生されし七神鏡

 これを集め

 救世主 光へと導かれたり

 満たされし四神獣は

 また千年の眠りにつく 』



 ……うん。

 だいたい、こんなもんだったよね。


「じゃ、いくよ。メモって」


 宿屋の主人は得意げにスラスラと言い出した。



『 或る日 天地開闢の時

 神は まず 闇を鎮めなさった

 闇の精霊の王は

 闇神となりて 闇を司る


 或る日 闇神の腹の中

 神が弐に 一(つか)みの火を放ちなさった

 炎の精霊の王は

 炎神となりて 炎を司る


 或る日 弐神の間で

 神の知らぬ間に 輝く光が生まれた

 光の精霊の王は

 光神となりて 光を司る


 或る日 怒り狂った

 神の策略で 風を吹きなさった

 風の精霊の王は

 風神となりて 風を司る


 或る日 力を使ひて

 神に逆らひて 大地を造りなさった

 地の精霊の王は

 地神となりて 地を司る


 或る日 力を失くした

 神の涙が 水となりて流れた

 水の精霊の王は

 水神となりて 水を司る


 或る日 見かねた姿に

 神の為にとて 木を育てなさった

 木の精霊の王は

 木神となりて 木を司る


 このように七つの精霊の王

 七神と なりえたが


 闇は 神の悲しみによって

 育てられた木を苦とし


 木は 神の怒りを受けた

 炎を苦とし


 炎は 神の落とした

 水を苦とし


 水は 神の後悔の元となりし

 風を苦とし


 風は 神に逆らひて造られたる

 地を苦とし


 地は 神の子ではない光を かばうため

 光を苦とし


 光は 神が最初に造りし

 闇を苦とし


 ここに 七神円陣を 描く 』



「と、まあ、こんなトコだな」


 一気に話し終えた主人は、そばの お茶を飲んで落ち着いた。


「七神円陣って何ですか? 一体」


と私が聞くと、主人はチッチッチと指を立てて振った。


「今 言った事を図にしてみな」


 そう言う。


 私は「ええ……?」と弱った顔をして。

 今 書いた文をマジマジと見つめた。


 闇、木、木、炎、炎、水、水、風……


 あ。


「もしかして これって。こういう事?」


と、私は図を描く。


 円状に、闇、木、炎、水、風、地、光……と字を並べた。


「闇は、木を苦とする……つまり、木が苦手って事?」


 闇から木へ。

 矢印を引いた。


 そして後も同じように。

 矢印で線を引っぱっていく。


「木は炎に弱くて、炎は水に弱い……そういう事なんだ。で、これがその、七神円陣なのね!」


 私が勝ち誇ったような顔をすると。


 主人はパチパチパチと拍手してくれた。


 そして「お見事。花マル合格だね」と褒め称えた。


「へえー。結構 面白いな」



 セナは私が描いた図を見て頷いた。




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