表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/161

第25話(再会)・3


 実は私達、2手に別れて行動する事にした。


 私とセナと蛍と紫。


 この4人でシュガルツ港から右回りに大陸を南下し、サワ港へ。


 そこから もっと南へ進むと、カスタール村。


 もっと南に行くと、マーク国だ。


 船に乗らず、コミ山道を通って行けば いいんだけれど。

 あいにく通行止め。

 何でも、巨大 魔物(モンスター)が現れたんですって。


 セナ達は強いけれど。

 わざわざ危険な目に遭いに行く事も ないでしょって事で。

 航路を選んだ。


 一方、マフィアとカイトとメノウちゃんの3人は。


 キースの街を南下し。

 マイラ村を通ってマーク国へ。


 こっちは陸路だ。


 マーク国で落ち合いましょうって事で。

 それぞれ出発した。


 もう船旅は慣れっこ だった。


 カスタール村までは2日は かかる。


 その間、様々に暇を潰していたのだけれど。


 ふいに、セナと2人きりに なった時があった。


 しかも、夜の甲板で。

 誰も居ない。


 ムード満点。

 来るなら来いって感じで(やっぱりエッチ?)。


 しばらくボーッと手すりに寄りかかって突っ立ったままの私達なんだけれど。

 やがてセナから話を切り出してくれた。


「元の世界では、どうだった?」


と……風で髪をなびかせ。


 普段より いっそう綺麗に見える、セナの姿。


「え、ええ? どうって?」


 だから ちょっとウロたえた。

 ドキドキが高なってきた。


「だって しばらく留守に していたんだろ? 家族とか友達とか……前 言ってた“学校”とか……」


「あ、ああ。うん。皆、元気そうだったよ」


 緊張してるからか、上手く言えない。


 一瞬、会話が途切れた。


「んとね……私、両親、居ないんだ」


 会話を続けるために、そう言い出した私。

 セナは少し驚いていた。


「へえ……俺と同じか」


 私は続ける。


「7歳の時、交通事故で いっぺんに。だから家族っていったら、お兄ちゃん一人なんだ。2人で……暮らしていたの」


 セナに対してというより、もっと別のドキドキが支配していた。


 前、セナと口論した時。


 私は気が ついたんだ。


 自分の本音を隠しているって。


 知られたら、嫌われるかもしれないから、とか。

 自分の身を守るために、とか……。


 色んな事に気が ついた。


 話そうと思う。

 自分の事を、もっと。


 皆に、ううん、セナに。


 もっと私の事を、理解してもらうために。


 そうすれば きっと自分の中のモヤモヤしたものがスッキリと晴れると思うから。


 それに。もう一つ気が ついた事……私が、セナに恋してるって事。


 だから余計に、もっと自分の事 話したいって気に なったんだよ。


「私は まだ小さかったしさ……一人で生きていく力とか、そんなもの なかった。お兄ちゃんは当時、17歳……あはっ、セナと同じだね」


と少し苦笑いをして頭を掻いた。


 セナは黙って話を聞いてくれた。

 続きを おかげで安心して話す事が できる。


「17歳っていったら……私の居た世界じゃ、一番 大事で楽しい頃だと思うの。でも……お兄ちゃん、せっかく頑張って勉強して入った高校……学校をやめて、働かなくちゃならなくなった。生きていくために。私を育てるために。両親が やってた……ラーメン屋を、守るために」


 ドキドキで苦しくなる。


 緊張?

 わからないけれど きっとそう。


 鼻の奥もツンと何か痛い。


 目も潤んで きていた。

 でも、泣く前に話そうと心に決めた。


「お兄ちゃんの後ろ姿に いつも謝ってた。“私のせいで ごめんね”って。小さい頃から今まで ずっと。両親が死んだのは事故だったし、仕方ないかもしれないけど……とにかく、早く自立しようって思ってた。早く一人前になって、お兄ちゃんを楽に させたがってた……でも」


 涙が今にも溢れ出そうだった。


 言葉にも詰まる。


 でもセナは何も言わず、手すりから夜の海を眺めていた。


 そうやって私の話す一言一言を待ってくれていた。


「学校じゃクラス中に無視されてイジメられるし、お兄ちゃんは私が居るから結婚できないって彼女から責められてケンカになっちゃうし……辛い事ばっかだよ。こんなんじゃ、一人で生きていけないね」


 こぼれそうになった涙を拭きながら、ふー……と深呼吸を一つ。


「元の世界へ帰った時、大騒ぎだったんだよ。お兄ちゃんも、学校の皆も。お兄ちゃんは顔クシャクシャにして喜んでくれたし、学校じゃイジメも なくなった。前、あんなに帰りたくなかったのが嘘みたいだった。あ、そうそう。私、記憶喪失だったんだよ? 帰った時」


「記憶喪失?」


「うん。こっちの世界の事、全部ブッ飛んでたの。でもさ、天神様の お使いの人……アジャラとパパラって いったかな。女の子2人組が迎えに来てさ。びっくりしちゃって」


 セナは自分の首筋を手で撫でながら頭を傾げた。


「へえ……で、記憶は今も?」


「ううん。記憶は戻ったの。コレのおかげでね」


と、右手をセナの前に掲げた。


 中指に、月光で光るセナにもらった指輪。


「思い出せて よかった。おかげで私、こっちに戻って来たものね」


「そうか……」


 セナは少し微笑んだ。


 私はスウッ、と息を整えて目を伏せた後。

 お腹に力を入れて言葉を続けた。


「私、決意を固めたの。こっちの世界を救うのよ、何たって私は救世主なんだから、って。もっと真剣に、深刻に。ゲームなんかじゃないんだって、理解するために……だから。アジャラ達に頼んで、お兄ちゃんや学校、思いつくまま全て。私に関わるもの全ての物や記憶、全部

 消 し て も ら っ た の 」


「……!」


「後悔は していない。これで いいんだ」


 私は船の進み行く先を一心に見つめた。


 それが今の私の全てを表しているかのように。


 前だけを見る。

 後ろを見ない。


 もう迷わない。


 私はココで生きていくんだと。


 救世主として……命をかけて。



「勇気……」


 セナの表情は暗く、私を見ては いたけれど。


 声の かけ方に戸惑ってしまっているようだ。


 夜風が、私とセナに優しく語りかける。

 ただ、何て言っているのかは わからない。


「やるべき事をやる。今の私のやる事は、青龍復活の阻止よ。今は それだけを考える。だからセナ。頑張ろう! 私に力を貸してね!」


と、私は片手でピース! を作り。


 ポーズを決めてみせた。


「ちょっと2人とも。夕食まだでしょー? 早く行きましょうよ。お腹すいたじゃない」


と、ひょっこり蛍が甲板に続く出入り口から出てきて私達に声をかけに来た。


「あ、はーい。今行く! セナ、行こ!」


 私はスタコラと お先に駆け出していた。



 波は穏やかで船が夜の帳の中を突き進んでいく。


 セナはフウとため息をつき。

 私の後を追った。




《第26話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 マーク国という言葉に個人的にドキドキしています(フ……)。

 いや、話には関係ないんですが。


 ご感想やご意見など いつでも お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)。今回は簡単にですが地図をちょびっと(見えにくいかな)。よければ そちらもチラリと……。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-74.html

 そして出来ましたらパソコンの方は以下のランキング「投票」をポチッとして頂けると大変嬉しく感動です。


 ありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ