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第25話(再会)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/25.html

(『七神創話』第25話 PC版へ)




 セナ……会いたい。

 私、どうしてセナの事ばかり?


 ううん……どうでもいい。

 会いたい。

 それだけ!



 光と風とのトンネルを抜けた。


 ……落ちた。


「きゃああっ!」


「うわっ!」


 どっしいいいぃぃんっ……!


 …………。


 すごい衝撃が体全体を襲った。

 最初、訳が わからなかった。


「あたたたた……」


 私は、私の下敷きになった人物と目がバッチリ合う。


「……!」


 2人とも、完全に声を失っていた。

 そして あんぐりと口を開け、お互いを指さしていた。


「勇気……」


「セナ……」


 どうやら私、セナが寝ていた所に落ちたみたい。


 ベッドの上で2人、身を起こし正座した。


 真っ暗で、顔がハッキリと見えるように なるには時間が かかった。


 セナも同じみたい。


 いきなり、寝ている所に私+荷物×3の下敷きに なったもんだから。

 当然 私よりダメージは大きい。


 ボケた頭で私……をジッと見ている。


 しばらく見合っていたけれど。

 私は我に返って慌て出した。


「ええとホラ、約束通り帰ってきたよ! ちゃんと向こうの世界にサヨナラして……その……踏ん切りがついたし、これからは全力投球で こっちの世界をね……」


 無理矢理 会話を続けようと頑張ってみた。

 なので自分が何を言っているのかが よく わからない。


 照れてしまう。

 何か言ってほしいんだけれど。


 あ、そうか。


 私、すんごく変な顔してるかも!


 何も言ってくれないのは、ひょっとして。

 それでセナ呆れてんじゃない? ……


 そう思ってチラリと彼の方を恐る恐る見上げる。


 セナはボーっとしていた。


 私は手を彼の目前にサカサカと振ってみせた。


 首を90度まで傾げて様子を見たりしたが。


 全然 反応が ない。

 動かない。


 私は どーしよーか……と思ったが、とりあえず。


「ただいま!」


とだけ言って、笑った。


 するとだ。

 言った途端。


 セナがスウッと……強張っていた顔の筋肉が。

 ほころび優しく表情を緩めていった。


 そして。


「……お帰り」


とだけ言った。


 私の中に じんわりとしたものが流れてくる。


(あったかいな……)


 ほろっと泣きそうにまで なってくる。


 すると今度は。

 私とセナが正座しているベッドの隣のベッドから。


 別の声が上がった。


「何だよ寝ぼけて……」


と、寝ぼけ眼をこすりながらムクリと起き上がったのはカイトだ。


 のんびりと、こちら側を見た。


 私の姿を確認して、仰天する。


「うおお!?」


 身を後ろに少し退いた。

 まるで物の怪でも遭遇したようなリアクションをとった。


「カイトぉ!」


「ゆ……勇気ィ!?」


 私はセナから離れ。

 スタッ! と床に降りて立ち。

 仰々しく敬礼の構えで張り切って言った。


「松波勇気、ただ今 戻りましたあ!」


 隊長、とばかりに片手を頭の前に、気をつけの姿勢。

 笑顔だった。


 そんな私に つられてか。


 カイトもベッドの上で正座して。

 私と同じように敬礼! のポーズ。


「何なんだ、一体……」


と、カイトが高速まばたき しながらパチクリしていると。


 部屋の入り口のドアが開いて外から団体がやって来た。


「どうしたの!? 真夜中に すごい音……」


 先頭で やって来たのはマフィアだ。


 後ろにマフィアよりも背の低い人影の何人かが。

 きっとメノウちゃんや蛍だろう。


 今に気が ついたけれど。


 セナの寝ていたベッドを越えて一番 端際のベッドには、紫が居た。


 あまり気配が なくて気が つかなかったのだ。


 私を見て、皆は驚きをあらわに次々と騒ぎ出した。


「勇気……帰ってきたのね!?」


「勇気!」


「お姉ちゃん!」


「皆 元気そーだね! よかった」


と、私が言うとマフィアもメノウちゃんも。


 いっせいに私の所に飛びついた。


「寂しかったよおお!」


とメノウちゃん。


「ほんと! 一週間も!」


と、マフィアが。


「え、一週間?」と私は聞き直す。


 時間の流れは こっちも あっちも同じくらいなのかなあ。


「皆……ただいま!」


 私は最後に特上の笑顔で大きな声を上げる。

 今が真夜中なんて事も気にせずに。


 カーテンで閉められていた窓からは。

 隙間から朝の光が見え隠れしていた。



 一日 完徹してしまったけれど、全然 眠くない。

 むしろ、パッチリと目が冴えていた。


 感動の再会!

 を終えた私は帰ってきてから眠る事が できず。


 夜も明けたので外へ出てみる事に した。


 外は まだ白っぽい空で。


 遠くで鳴く小鳥達の声が清々しさを引き立たせている。


 んー、朝! って感じだ。


 空気が私の居た世界のとは違う気がした。


 野や家屋の においが混じったような、新鮮な。


 つい深呼吸をゆっくり連発してしまいそうな。


 無味無臭なはずの空気をおいしいと思うなんてね。


 ……なんて。

 ノンキにしていたんだけれど。


 ココ……キースの街は。


 レイの襲撃に遭ってほぼ壊滅の大被害を受けた。


 今は街の様子を見渡すと、面影は充分に あるけれど。


 あの時のような悲惨さは感じ取れなく なりつつある。


 あの時は本当に凄まじい出で立ちで。

 思わず目を逸らしたくなる衝動が何度も あったと思う、皆。


 私は気絶してしまって ほとんどを寝て過ごしたりしたけれど。


 生き残った人やセナ達は ずっと救助や支援に回って大変だったはずだ。


 街のあらゆる所に転がるように眠った死体の数は、多すぎて計りしれない。


 聞く所によると。

 死体は まとめて街の外れで火葬したんだそうだ。


 集団墓地が大掛かりで造られる事が決定したそうで。

 その同じ街隅で建設され始めている。


 すでに外国から、知らせを聞いた事業家や国が援助資源や大金と一緒に。

 花束が次々と贈られてきているそうだった。


 何処かの国の王や村長などが人を率いて来る事が度々あった。


 暗い顔をして。


 積み重なるようにして火葬されるのを待っている死体の山を前に。

 手を合わせていた。


 彼らは きっと こう思っている。


 ……ウチの国、村や街でなくて よかった。

 でも いつかココと同じ目に遭うかもしれない、と。


 不安が絶えず重い空気を永遠のように作り出す。


 痛々しいほどに伝わってきた。


 ……と、マフィアが さっき言っていた。


「不安なのは皆一緒……私達、これから どうするのかしらね?」


と声に出して漏らしたマフィアの言葉は、私に深く印象づけていた。


 これから……とりあえず、今は。


「何してんだ?」


 トタトタと私が救急箱を小脇に抱え廊下を走っていると、セナとバッタリ会った。


 私と箱を交互に見て少し何かを考えていた。


「ケガ人が まだまだ たくさん居るってマフィアに聞いたから。しかも薬とか足らないって。だからホラ、私の世界から持ってきたやつ。少し足しになるかもって、思って」


 私は張り切っている。


 背中にリュックを背負っていたんだけれど。

 中には家に あった医学なんかの本が入っている。


 何でもいい。

 役に立てば、とだけ思った。


「それじゃね、昼に戻るから!」


と言い残し、去ろうとした私をセナが呼んだ。


「何?」


「あ、いや……頑張れよ」


「? うん!」


 セナが何を言いたかったのかは わからないけれど。


 私は笑って頷いて。

 また前を見て走り出した。


 セナは前髪を掻き上げ、


(あいつ……)


と少し心配そうに私の背中を見送ってくれていた。




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