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第22話(聖なる架け橋)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/22.html

(『七神創話』第22話 PC版へ)




 神様って居るんだろうか。


 居るんだとしたら、コレって神様の気まぐれ?


『会いたい』って言ったら、会わせてくれるだなんて……。


「勇気……?」


「セナ……」


 しばらく私もセナも。

 ぼうっと突っ立って相手を見ていた。



「 本 物 !? 」



 声を揃えて そう言い合った後。

 再び お互いを見て、あははは……と笑いあった。


 だが、笑うでは済まなかった。


「ちょっと待て。今、お前……」


と、セナが こっちに近づこうとした時。


 セナと私の間に見えない透明の『壁』が あった。


 バンと ぶつかったセナは鼻を押さえながら。

 壁を叩いて怒る。


「おい、コレ、どうなってんだ!?」


「セナこそ、そこ、何処? キースの街に居るんじゃ……」


 ドンドン! と見えない壁をいくら激しく叩いても無駄で、ついに諦めたセナ。


 フー……と一息ついた後、落ち着いて話し始めた。


「ああ。お前が どっかに行った……って蛍が言うもんで、まさかと思ったけど。とりあえず帰ってくるかもしれないから、ココに しばらく居ましょうってマフィアが。キースの街の診療所の所に待機してる」


 そうなの?


 じゃあ……セナの姿はココに あるけど、実際セナは診療所に居るんだ?


「そっか……私達、姿だけで お互いに違う場所に居るんだね」


 私の話を聞いてか聞かずか、セナは話し続けていた。


「こっちはケガ人が山ほど居るもんで、退屈しないぜ……おい、それより」


 私は次に来る言葉を予想して、ドキリとした。


「何で勝手に どっか行っちまうんだよ! 俺だけじゃなく、皆 心配してたんだぞ!」


 予想通りの言葉を聞いて、胸が ますますチクチクし始めた。


「ごめん、セナ」


「謝って済むかバカヤロー!」


 バ、バカヤローって。

 ……そんなぁ。


 ……でも仕方ない事よね。

 誰だって怒るに決まっている。


「だいたいなあ! 無理しすぎなんだよ! 疲れたなら疲れたって言えよ! 言わなきゃわかんないだろ、そーいう事は!」


 腕を組み 目を閉じ 眉を吊り上げ 怒りをあらわにするセナを前に。

 

 私は何も言い返す事ができない。


「……うん。そだね」


「バカみてーに“何でも ないよ”って言われたら、こっちも気のせいかって思うだろ!?」


「うん」


「シャンとしろ、シャンと!」


「うん……わかってる」


「わかってねえよ! お前は いつも」


「そんな事ないって」


「いーや、口だけだ! わかったフリして絶対わかってない。お前は一人で何でも かんでも抱え込みすぎるんだよ。何でも隠したがるから、こっちだって推測でアレコレ考えるしかない。皆も俺もお前を理解したいのに、それが できない。いつもそうだ。今回もそうだ。お前、いつまでコレを繰り返すつもりだ。いい加減にしろよ!」 ……


 ……それを言われ、私はクルリとセナに背を向けた。


 ちょっと、ショックだったんだ。

 そんな風に人に言われた事が なかった。


 そして今、言われて初めて気がついたんだ。


 私って、皆と壁を作っていたのかもしれない。


 他人に深入りしない……ううん、したくても何処か退()けてしまう。


 それは、自分の所に他人が入って来るのが嫌だからかもしれない。


 ……要するに、プライバシー?


 他人の心に侵入しない代わりに自分の心にも他人をいれない……。


 自分の身が大事だから。

 誰にも知られたくないから……だ。


 私は学校で いじめにあっていた事を、セナ達にも お兄ちゃんにさえ話していない。


 話す気なんて全く なかったんだ、最初から。

 そうやって、自分の身を守っていた。


 知られたら、嫌われるかもしれない――そんな恐怖感からだった。


 セナやマフィア、蛍でさえ、自分の事を色々と語ってくれたのに。


 私自身の事に ついて話した事は、ほとんど ない。


 あっても、楽しかった事とか思わず笑ってしまうような事とか、そういうのだけ。


 私、怖かったんだ……話す事が。


「勇気!」


 しばらくの沈黙の後、急に呼ばれて びっくりする私。


「早く帰って来いよ。皆 待ってる」


 そうセナは優しく語りかける。


 とても優しく……優しくて。

 思わず涙が こみ上げる。


 セナに背を向けたまま、首を振る私。


「私が居なくたって青龍は封印できるよ。七神の力で きっと。そしたら私は必要ない。元々、無理だったんだよ。だって私、なーんも できない ただの人間だもん。セナみたいに力も ないし、マフィアみたいに強くない。カイトみたいに一つに集中できないし。自分がピンチの時は いつもセナ、お兄ちゃん助けてって、叫んでる。……コレが天神に選ばれた者? コレが救世主? ……お笑いよ。こんな邪魔者。どうせ私は こっちの世界でも元の世界でも邪魔扱い。セナだって呆れたでしょ? 世界の命運を、こんな奴にかけるのかー!? って」


 空を手で仰ぐ。

 でも、相変わらずセナに背を向けたまま。


 セナは黙ったまま何も言わなかった。


「だから お望み通り、居なくなるのよ。こっちだって清々(せいせい)するわ。救世主なんて肩書きから解放されてね。向こうの世界へ帰って、ゆっくり羽を伸ばすんだから」


と、腕を思い切り伸ばした。


 セナは静かに口を開く。


「だから帰る……と。どうせココに居ても邪魔だから……と」


 セナが悲しそうに言っても。

 私は振り向こうとは しなかった。


 夜風が何処からか吹き抜ける。

 冷たさが心地 良かった。


 今度の沈黙は長かった。

 破ってくれたのはセナの方だった。



「……じゃあ何で泣いているんだ……?」



 ……。


 ……言われて。

 私は この時初めてセナに振り向いた。


 私の両目からはボロボロと、涙が後から後から こぼれていた。


 何か悔し……泣いてたのが、バレバレだったみたいだ。


 ヒク、と しゃくり上げながら黙って(うつむ)いていた。

 眉間にシワを寄せて。


 一回そうなってくると、なかなか止まりそうに ない。


「あのさぁ……」


と、頭を掻きながら。


 セナは天井の方を見ながら、言いにくそうに話し出した。


「確かに最初は意外だったさ。こんな小娘が、世界をどーにかしようだなんて。たぶんマフィア達だって そう思ってたと思う」


 ハッキリ言ってくれる。

 セナは淡々と話しづらそうでも話してくれた。


「俺、正直いって嫌だった。七神の一人なんて肩書き。俺には人には ない力が あるこたあるけど、それで世界をどうにかするなんて全然 信じられなかったし。お前が現れた時、“嘘だろ!?”って……思ってた。ホント、勇気を恨んだ事も少しあったよ」


 今度は下を見る。


「でもさ……俺、勇気に会えて変わってったと思う。なんつーかなぁ……毎日が楽しいというか……満たされてたような気がするんだ。不思議と、さ」


 私は黙って聞いていた。


「勇気に俺、救われたと思う。色々と。だから、そのうち……こいつと、世界変えてみるのも面白いって思い始めたんだよ。なのに その矢先、居なくなっちまって。ガックリ……何だそれ、って感じ」


と少し笑ってみせた。


「勇気、自分は必要ないって。ずっとそう思い込んでたんだな。一人だって。邪魔だって。もし俺が今 言った事をもっと早く言っていたら、こんな状態にはならなかったんだろうな。一人で何でも抱え込むなって さっき言ったけど、人の事は言えないかもな。俺だって本音 隠してたわけだし」


 そう言って自分の頭を叩く……私は泣きながら、少し呆れていた。


 私は涙声を我慢して、頑張って話し返した。


「私……キツイ事 言っちゃったね。清々する、なんてさ」


 そう言って顔を上げた時。

 セナの優しい顔がニヤっと笑った。


「今のが本音なんだろ? OK、OK。誰にも言わねえし、俺は怒らねーよ。それに だって本音を言う時は言葉遣いが汚くなるもんだ。俺だって“世界を変えてみるのも面白い”なんつーシャレにならん事を言っちまったもんね。コレ、内緒だぞ」


と、人差し指を立てた。


 私はクス、と笑ってしまった。


「勇気の本音は わかったけど。でもやっぱり、勇気には こっちの世界に居てほしい。皆も俺も、そう思ってる。……ダメか……?」


 セナは真剣な顔で私を正面から見た。


 私の胸の内がチクと、音を立てる。


 力なく私は……。


 ……。


 ……微笑んだ。


「それは……すごく嬉しい言葉だよ。ありがと……でも、でもね!」


 セナの顔を見上げた。


「私、一度 帰って、言わなきゃいけない人が居るの!」


 途端、セナの片方の眉が上がる。私は少し慌てた。


「お兄ちゃん、学校の皆……私、決着(ケリ)をつけなくちゃ。さよならって言って……そうしたら、また こっちの世界に戻って来るから! 絶対よ!」


 セナは まだ難しい顔を崩さない。


「本当か?」


 私は大きく首をタテに振った。


「うん!」


「絶対だな? すぐ帰ってくるんだな?」


「うん!!」


 セナは やっと、安心しきった顔で少し笑った。


「わかった。絶対、帰って来てくれ。皆で待ってる、勇気」


 見えない壁に手をついて再び優しく微笑みかけるもんだから。

 私はドキドキバクバクしていた。


 で、そんなすごくいい雰囲気(ムード)に なった時。



 私の背後に、すさまじく輝く光が出現した。




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