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第15話(蛍の逃亡)・3


 大きな岩があり、その上に座禅を組み。

 精神統一でもしているのか、静かに目を閉じていた。


「こんな夜中に……修行?」


 私は普通に近づいていって。

 正面から話しかけた。


「魔法を考案中なんだ。少しでも力つけねえと」


と、目を閉じたまま答える。


 何だ。

 近づいたのが私だって事が わかってたみたい。


 ふーん……と頷く私の真正面で。

 微動だにしないセナ。


 ……顔に落書きしちゃおっかな……。


 あれば油性のマジックで、と思った後で。


 いやいやいや、彼は真面目に やっているんだから。

 邪魔しちゃダメよねと思い直した。


「何だよ お前。ニタニタ笑ったり急にマトモになったり。気が散るっつーの」


とセナに叱られた。


 アラ、目をいつの間にか開けて見ていましたか。


「いやあね、セナの顔に落書きでもしちゃおーかなああ、なーんてね。ふふふ」


と、またニタニタ笑う。


「何だそれ」


と呆れたセナ。


 そして、私に ある閃きが起こる。


「ね。私にも できないかな!」


「は?」


「魔法だよ。私にも できないかな?」


 一瞬 黙ってしまったセナだったけれど。

 すぐに首を横に振った。


「……無理。魔力が ないと。お前、救世主だけど普通の人間だろ? 自分で そう言ってたし。第一、魔力を持っているのは七神だけだ。蛍や鶲は例外だけどな」


 私にも魔法が使えないか……と思ったのは。


 数日前の出来事のせいだった。


 そう、蛍と紫が私をやっつけようと、やって来た時。

 私が「もうダメだ!」と思った時に突如 降ってきた雷。


 私には その雷が偶然なのか。

 それとも私が呼んだ(?)のかが、わからなかった。


 でも雷に打たれてしまったのは紫と。

 ……身代わりになってくれたのかスカートに入っていたカイト手作りの人形。


 そして……怒った私は無意識に……?

 丘を一つ。

 消してしまったらしいと……。


 ……。


 私は目を覚ました後。


 セナ達に聞かれても何にも答えられなかった。


 丘だった所を後で見に行っても、何にも。


 わからない、何で そうなったのかが……と。

 考える事はもう、止めてしまったけれど。


 救世主って、特別なんだろうか。

 それも わからない。


 わからない事だらけだ。


 せめて魔法とか使えたり。

 はっきりしてくんないだろうかって思う。


「そっかあ……厳しいね。じゃあさ。剣とかナイフの使い方とか! 格闘技とかは?」


 私は気を取り直して聞いた。


「そりゃ頑張り次第だと思うけど。鍛えれば、それなりに。でも何で そう いきなり?」


「まあいいじゃん。私だって戦いに参加したい。ね、教えてよ!」


 セナはヤレヤレといった感じで腰を上げた。


「教えてあげてやってもいいけど、真剣にやれよ。それじゃあまずパンチだ」


と、私の右手を指さした。


「パンチ? えー、もっとカッコイイのやろーよ。何か ない? ヤケに大げさな名前がついている技とかってあるじゃない。しょうりゅうけん! たつまきせんぷうきけん!」


 何か間違えたような気がしたけれどまあいいや。

 どうせ わかんない。


 私は言いながら片手を上に突き出して。

 その場でクルクル回ってみせた。


 しかしセナのノリは悪く、デコピンで返ってきた。


「ばーか基本をスっ飛ばすな。基本も ろくに できない奴が何を言う」


 私はシュッ! と自分の前に右手ストレートをおみまいしてみた。


「ダメだな。全然ダメ。話に ならない。遅すぎだし。隙だらけだ」


 ハッキリ言ってくれるセナ。

 うう〜。


「ええ? 嘘ぉ、これ以上速くなんて無理だよ」


 するとセナは私の3倍……かは知らないけれど倍以上の速さで、


 シュビッ


と、パンチを繰り出した。


 そしてピタッ! と私の顔の前で止めた。


 私、固まる。


 ……お見事。


「……っくりしたぁ。全然見えなかった……」


と、おっかなびっくりな私に、そのままセナはデコピンを放った。


 パチンッ!


「だから。お前にでもできるように簡単なの教えてやる。技の名前は……そうだな。『大砲パンチ』だ」


 大砲パンチ。

 だ、ださい。


「速さは置いといて。普通のパンチだ。ただ殴れりゃいいってもんでない。いいか。受け身のパンチをするんだ」


「受け身?」


「相手が自分の範囲内に来るまでジッと待つ。んで、相手が飛び込んできた所をガツーン! とな。相手が速く来れば来るほどダメージはデカくなる。仕方は こうだ。できるだけ相手に対して真っ直ぐ」


と、お手本を見せた。


「この技は反応が大事」


と、延々とセナのコーチは続く。


 たかがパンチ。

 されどパンチ。


 どうやっても上手くいかずで。

 セナから何撃もデコピンをくらうハメに。


 痛い。

 楽しい。


 ……顔に出すと、怒られちゃうけれどね。


「うーん。まあ、そんなもんか。今日はココまで。あとは実践という事で……頑張れよ」


「お、おお〜」


と……ヒザをついてゼーゼーと、息をついた。


 ……厳しい。


 ちょっと、甘かったかもしれない。


「無理すんなよ。お前は黙って俺らに護られてりゃいいの」


 セナが言いながら仁王立ちで私を見下ろす。


 その顔を見上げると とても意地が悪そうな。

 しかも笑っていた。


 あはははは……と私は引きつった笑いを。


 何かこの人、楽しんでいるわね。

 完璧に。


 まあいいさぁ……私も汗かいて。

 しんどくても楽しいと感じたし。


 と、そんな風にイイ顔をしている時だった。



 向こうで。

 鳥が騒がしく鳴き出し飛んでいった。


 あっちはマフィア達が寝ている方向だ。

「な、何?」と胸騒ぎがする。


 急にセナが険しい顔になってグイと私の腕を引っ張った。


「戻るぞ。嫌な予感がする」




 セナの予感は当たっていた。


 戻ってきてみると。


 寝ていたはずのマフィア、カイト、メノウちゃん、蛍。


 皆、居なくなっていた。

 荷物は置きっぱなしだ。


「やられた……」


と、セナが それを見て呟いた。


「ど、どうして」


 まさか魔物の仕業なの!?


「やっぱりマフィアが言ってた魔力を持つ……」


と私がオロオロして周辺を捜すと、


「いや、違うな。あれ見ろよ」


 セナが前を指さした。


 セナが指さした方向。

 そこの先の木には。


 枝で一枚の紙を刺し、留めてあったのだった。


「『摩利支天の塔で待つ』……人間の言葉だぜ。魔物じゃねえよ」


 だと……したら。


 私は一つ。

 心の奥の方で押ししまっておいた可能性を掘り起こす。



 まさか蛍……が?




《第16話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 後悔先に立たず。身に染みます(うぎょー)。


 ご感想など評価なしでもアリでもお待ちしています。お気軽にどうぞ。


※本作はブログでも一部だけですが公開しております(挿絵入り)。パソコンじゃないと読みにくいかもしれませんが、よければそちらもチラリと……。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-51.html

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