表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/161

第15話(蛍の逃亡)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/15.html

(『七神創話』第15話 PC版へ)





「救世主を甘く見たな。慌てて逃げ帰って来たわけか」


と、レイはピシャリと言った。


 その視線の冷たさは、怒りか、悲しみか。

 それとも絶望か嘲笑か。


 どん底の蛍に、レイは詰め寄った。

 しかし蛍も持ち前の強さで言い返した。


「甘く見ているのはレイ様の方です! 救世主の力、とくと見て来ました。初めて見た時は何も出来ない ただの小娘だったくせに……」


と親指を噛む。


 パッと顔色を変えた。


「レイ様! チャンスを! 私に救世主の始末を!」


 もはや蛍に余裕の よの字も見えなかった。

 切羽 詰まった人の顔で あった。


「……いいだろう。だが もしまた失敗したなら……役立たずは去れ」


と、蛍の横を通りすぎた瞬間。


 鋭いモノでスパッと切られたような傷が蛍の頬に できた。

 血は、出ないが……。


 その傷を押さえ、目の前を睨んだ。


(救世主、殺す!)



 レイは、いつもの暗室へ来た。

 氷づけのハルカの居る部屋だ。


 いつものように。

 部屋の中央の椅子に もたれかけた。

 目の前の氷の作品を眺めて。


 そっと、誰かが現れる。


 四師衆の一人。

 レイの世話兼付き人である、さくらだった。


「さくら……」


と、レイが呼んだ。


「レイ様。だいぶ お疲れのようですわね」


 さくらがレイの横に立つと。

 レイは さくらの手をとり寄り添った。


 さくらは、それを愛おしそうに見た。

「救世主は……成長していますわ。レイ様、いかがいたしますの?」


「……放っておけ」


と、ただ一言 言うだけであった。


 さくらは、レイの考えを理解したかった。

 だが、どうしても わからなかった。


(もしやレイ様……救世主を倒しに行かない理由……救世主の そばに、セナ様が居るから……?)


とも考えた。


 しかし。

 普段のレイの態度から見ても それは何だか信じられない。

 氷の性格に そんな情があるのか。


 愚問である。




「メノウも一緒に行く!」


「だからダメなんだって! お願いだから、ちゃんと隣の家の おばちゃんの言う事 聞いて おとなしくしていてくれ。絶対そのうち帰ってくるから」


「嘘! メノウ、知ってるもん! お兄ちゃんセイリュウ倒しに行くって! すごく危険なんだって! 隣の おばちゃん言ってたもん!」


「メノウ! ワガママ言うな!」


「やだあ! お兄ちゃんと もう二度と会えなくなったらやだあ! メノウも連れてって! ちゃんと言う事 聞くもん……」


 終いにはビービー泣き出した。

 それを見てOH! NO! 状態のカイト。

 頭を抱えて「弱ったなあ」とか呟いている。


 明朝、私達は旅立つ事にした。

 七神捜しの旅の再開。

 残りの三神を見つけるために。


 で、そんなハードな旅に。

 メノウちゃんみたいな小さい子を連れて歩くわけにもいかない、というカイトの意見により。


 メノウちゃんは隣の親切な おばちゃんに預ける事にした。


 で、さっき その事を話した所。

 ……言い合いに なっちゃったってわけ。


 メノウちゃんは一応、状況は把握できているようだ。

 青龍は倒しに行くんでなくて。

 封印または復活を止めに行くんだけれど。


 危険に変わりはない。

 だから、こんなについて行きたがるのだろう。


 カイト達には身寄りは無いらしい。

 たった一人の肉親が危険とわかっている所に行こうとしていたら。

 普通は大人でも引き止めたりするわよね……。


「絶対行く! 青龍倒しに行く!」


と、泣きながら連呼した。


 カイトはヤレヤレと肩をガックリ落としている。


 2人の言い合いを黙って見ていた私達。

 すると ふいにセナが私の腕をつっついた。


「何か言ってやれ。ガツーン、とさ」


と、コソコソと言った。


 ……とは言っても。

 泣きじゃくる子に何言えってんの?

 何か何を言っても。

 泣きが ますますひどくなるような気がするんですけど……。


 ま、仕方ない。

 救世主として。

 やってみよう。

 私はメノウちゃんの前へ来て しゃがみ込んだ。


「ちゃんと言う事 聞くって言ったよね? 今」


と言うと、メノウちゃんはコクリと頷いた。


「じゃ、お兄ちゃんの言う事を聞こうよ。お兄ちゃんだって、仕方ないんだよ?」


「……」


「大丈夫。本当に すぐ帰って来る。それまで いい子で待ってて。お土産も買ってくる。世界中の話も いっぱい聞かしたげる」


「……」


 メノウちゃんは何も言わず ただ黙って下を向いていた。


 説得できたんだろうか。


 すると、メノウちゃんはポツリと こぼした。


「……メノウは、邪魔なんだね」


と、自分自身に言い聞かせるように。


 下を向いたまま。



 私の胸が痛む。


 メノウちゃんの言葉が突き刺さる。


 本当に これで いいの?


 メノウちゃんを置いて旅して。

 ……メノウちゃんは、どんな女の子に成長するんだろう?


 何だかまるで私と同じ立場なんじゃないか……?


 お兄ちゃんに邪険にされ、懸命に生きてきた私。

 ……この子にも。

 私と同じツライ目にあわせても、いいっていうの?


「邪魔なんかじゃ、ないよ……ゼッタイ」


と、私が言うと。


「勇気、どうした?」とセナが私の様子を聞いた。


 私がセナに言う。


「メノウちゃんも連れてっちゃ、ダメ?」




 世界地図で。

 南に位置する大陸・コンサイド大陸。


 その西南に、シュル村という村がある。


 とりあえずココに行ってみる事にした。


 ノジタ国を出てすぐだし。


 なんせ七神捜しは容易ではない。


 こんな広い中。

 ちっぽけな人間をあと3人見つけろっていうんだから。


 ノジタ国を南口から出てシュル村へ行く。

 それから東のタミダナの街へ行く……という行程。


 シュル村で2手に分かれ。

 東南のアサバ村へ行く班を決めれば一応大陸中は行った事になり。

 見つかりゃ儲けもん、居なけりゃ残念……ってな感じ。


 あは〜、ノンキだなあ。

 ……と我ながら思っちゃう言い方だけれど。

 根は真剣で焦ってます、ハイ。


 え?

 そうはやっぱり見えないって?


 あ、そう……。


「……うなよ。わかったか? 勇気」


「え?」


と、ハッと我に返る。


 どうやら考え事をしていてセナの言う事を聞いてなかったみたい。


「だから、一応 地図はあるんだから、迷うなよって」


と、セナは私のオデコにデコピンした。


「ああ……はいはい。ごめんごめん。えーっと、ココは……」


とセナに言われ地図で確認。


 さっき買ったばかりの新品で。

 とっても色彩 豊かで見やすい。


 セナが持っていた地図は白黒で見えにくかったからねー。


「ねえ、何処行くの? 勇気お姉ちゃん」


と、私の横にメノウちゃんが寄って来た。


 昨夜、私はメノウちゃんに味方しちゃって。

 メノウちゃんも旅に参加する事に なったのだ。


「こういうのを、『ミイラとりがゾンビになる』って言うんだよな」


 ……それを言うなら『ミイラとりがミイラに』だが。


 わざとらしくセナがボケたのを、誰も何もツッコまなかった。


 どうやら、その一件で。

 メノウちゃんに なつかれちゃったみたい。


「んとね。シュル村。すぐそこだよ」


 そう。


 絶対 迷うはずがない。

 ……そう自信を持っていた。


 地図は前より見やすいし。

 シュル村へは ほとんど一本道だ。

 だから。

 迷うはずはない……。


 でも。


 ……あるはずのない森に、迷い込んじゃったのよね……。


 気がつけば、日は高くなっていた。


 お腹も すいてきた……。


「なあ。ココ、ルッダの森じゃないか?」


と、最初に切り出したのは、カイト。


 実は皆、薄々思っていたんだけれど。

 ……私を信じて声に出さずにいたようだ。


 でも、私の次の一言で皆「は?」という顔になった。


「あ、やっぱり?」


と、頭を掻いた。


 皆、コケた。


 セナは すぐ起き上がって私に詰め寄る。


「ルッダの森って……全然 行き先の方向と違うじゃねえか!? 地図貸してみろ、地図!」


と、私の手から地図をぶんどった。


 最初 冷静に見ていたけれど。次第に持つ手がワナワナと震え出した。



「ぜんっぜん違う……」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ