第14話(幻遊の間)・3
私は涙を拭いた。
フツフツと体の中で何かが湧いてきた。……
「 幻 遊 師 ! 」
と私は大声で叫ぶ。
蛍は「ヒッ!」と驚いていた。
私を見て、さらに顔色を変えた。
「む……紫!」
なおも紫を呼び続ける。
だが紫は倒れたままでピクリとも動かなかった。
さっきの雷が相当効いたようだ。
「な……何よ! ……何なのよ! め、目の色が違うわよ!」
蛍は そう言って、負けじと私に立ち向かった。
「覚えておく事ね。私は、本物の救世主だっていう事!」
と、言った後。
内から膨らんでくる力と精神に身を任せ。
何と手から すさまじい光の塊を生み出した。
そして それを……。
「死ね!」
と、……ぶっ放した!
そこにあるものを、全て吹っ飛ばすくらいの勢い!
ゴオオオオオ……
「きゃあああああ!」
と、蛍の悲鳴も。
光のエネルギーの中に かき消された。
攻撃を放った瞬間、全身の力が一気に抜けた。
そして、気絶した。
気がついたのは、その日の夜だった。
けれど意識は はっきりとしているというのに体が動かないし。
まぶたも動かせられない。
まだ蛍の術に かかっているのか?
……いや、違う。
これは ただの疲労だ。
あの、訳の わかんない力のせいで手を動かす力さえ失ってしまったのだ。
意識がある中、そばに居る人の会話が聞こえる。
「蛍に捕まって……それで?」
と、マフィアの声がする。
「うんっとね。どかあん! って、雷が落ちたの。そしたら、お姉ちゃんは大丈夫なの。でも、お姉ちゃんをやっつけようとした男の人はね、真っ黒になって倒れちゃって……」
このしゃべり方はメノウちゃんね。
それから……?
「それで?」
今度はセナ。
「んとね……メノウの体、動けるようになったから、お兄ちゃんたちを呼びに行ってね……んと……」
「わかった。とにかく、メノウは その後の事は何にも知らないんだな?」
と、優しい言葉をかけているのはカイト。
何だ、皆ココに居るのね。
「うん」
とメノウちゃんは返事をした。
フウーッと、誰かの ため息が聞こえた。
「そっか……やっぱり、勇気本人に聞かなきゃわかんないわね。その後の事」
そう言うとマフィアは、私の寝ているベッドに座った。
「そうだけど……聞くのも怖い気が するんだよな。あんな跡見ちゃ」
「うん……確かにね。あの戦いの跡を見てゾッとしたわ。明らかに強大な力を持った誰かの仕業ね。あの丘一つ消せるくらいの」
え……?
何、マフィア、セナ。
丘一つ消せるくらいの力って?
つまり……あの丘。
私のヘンテコな力のせいで 消しちゃったわけ!?
うそぉ……。
「でも勇気の力じゃねえよ。やっぱし あの幻遊師とかいう子供んちょが やったんだろ」
「でも、セナ。それは一体何のため? 勇気を攻撃するためじゃないの? でも現に勇気は無傷よ。コレって一体どういう事だと思う?」
というマフィアの尋問にセナは黙ってしまった。
「お姉ちゃん、泣いてたよ。お人形見て」
メノウちゃんは、バタバタと足音を立て去ったと思ったら また戻って来た。
「ほら、コレ。真っ黒 焦げの お人形」
「コレは……俺が渡したやつだ」
「泣いてた?」
「この人形、どうして こんなに なったの? 雷のせい? あ、もしかして。人形が勇気の代わりに……? まさか、ね」
「でも、そのせいで泣いてたって事なら、あり得るぜ」
と、そこまで会話が続いた時。急に変な沈黙が……。
「勇気の……力なのか? あれが。救世主の……本当の」
セナが言った。
瞬間、私の胸がズキンと音を立てた。
(丘一つ消し去る強大な力……あれが私の力。救世主の力?)
徐々に胸の痛みは広がっていった。
(私が蛍に攻撃する瞬間……)
少しずつ思い出してきた。
蛍は私を見て、目の色が違うって言ってた。
私、確かその後……。
『覚えておく事ね。私は、本物の救世主だっていう事!』
そう。そんで次に『死ね』って言ったんだ。
ドキドキが大きくなってきた。
(『死ね』……? 私が? 何で そんな事 言ったんだろう?)
ダメね……自分の事なのに、訳が わからない。
わからないまま、再び眠りに陥った。
その頃。
救世主の攻撃をすんでで避け、逃げ帰った蛍。
そして その蛍に支えられ運び込まれる紫。
紫をベッドに寝かせる。
そして、その部屋から走り去った。
(悔しい……悔しいわ!)
と、ほんのり目に涙を浮かべ、冷たい廊下を走る。
(あんな奴に……あんな奴に!)
するとドンと誰かに ぶつかった。
びっくりして見上げると……レイだった。
「レ、レイ様……」
レイの顔は冷たかった。
ギラリとした目を向け言葉で圧力をかけた。
「役立たずは……去れ」
《第15話へ続く》
【あとがき(PC版より)】
2本の連載をしています(現在は終了)が、こっちがシリアスなのに対し、もう一本がコメディなんで このギャップがまた何とも。
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